継ぐとは思っていなかった

 ススキ電機は、鈴木さんの祖父が1959年に創業。2代目の父が規模を拡大して、1986年に法人化しました。工場内の設備の電気工事や保守点検、高速道路やトンネルの照明設備、公立病院や学校などの電気工事といった、幅広い業務を手がけています。従業員数は25人で、うち4人が女性です。

 鈴木さんは短大卒業後に、ススキ電機に入社し、8年間、事務の仕事をしていました。「母が経理だったので、私も銀行とのやりとりや経営の数字を見てきましたが、当時、私が継ぐとは、つゆほども思っていなかったです。父も私に継がせるとは思っていなかったでしょう」

 先代の父はずっと元気で、朝早くから夜遅くまで仕事をするような、走り続けていた生活だったと振り返ります。

ススキ電機が手掛ける信号機の電気工事(同社提供)

娘に見せた父の親心

 しかし、鈴木さんは「ある日突然、父が大病を患っていると判明し、私たち家族に伝えられました」と言います。病院に行くと死に至る病と告げられ、「父は余命を宣告されてから、会社の将来についてずっと考えていたと思います」。

 父が妹と二人きりの時、「娘に同じような苦労は味わせたくない」と胸の内を話してきたとのこと。そこには厳格だった父の親心がありました。長女の鈴木さんに事業承継を頼むことは、ずっと言えなかったといいます。

 しかし、父から「会社も、社員も、社員の家族のことも、全てに責任がある。子どもの頃から俺の姿を見てきて、考え方もわかっていて、信頼がある未奈美に、社長をお願いできないか」と言われ、鈴木さんは継ぐことを決意しました。

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