目次

  1. M&A支援機関とは
  2. M&A支援機関の登録制度を設けた理由
  3. 登録制度の内容
  4. M&A支援機関の登録制度いつから?
  5. 中小企業からの通報窓口も設置
  6. 中小企業がM&A仲介を依頼するときの注意点
    1. 仲介契約・FA契約の締結
    2. 業務形態
    3. 業務範囲・内容
    4. 手数料の体系
    5. 秘密保持
    6. 専任条項
    7. テール条項

 経産省によると、M&A支援機関とは、M&A専門業者、金融機関、商工団体、士業等専門家、M&Aプラットフォーマー、事業承継・引継ぎ支援センターなどを指します。

 このM&A支援機関のうち、今回の登録制度は業種を問わず、ファイナンシャルアドバイザー(FA)業務または仲介業務を行う者が対象です。

 経産省は、中小企業のM&Aが増加傾向で、年間3千~4千件ほど実施されていると推計しています。一方で、潜在的な譲渡側は約60万社に上るとみられており、このままのペースでは、経営者の高齢化や新型コロナによる廃業で経営資源が散逸しかねません。

 そこで、経産省は中小企業のM&Aを推進するための「中小M&A推進計画」をつくりました。そのなかで、中小企業側にM&Aの知見がないことや、手数料の目安が見極めにくいこと、支援機関の質を確保する仕組みがないことがM&Aが広がらない一因と考えて、登録制度をつくることにしたことを明らかにしています。

 支援機関が登録するには「中小M&Aガイドライン」の遵守を宣言することが求められます。登録されると、事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)で、M&A支援機関の仲介手数料やフィナンシャルアドバイザー費用などが補助対象となります。

中小M&Aガイドラインの記載概要。「◎」は具体的な行動が規定されている。 「○」は抽象的な行動が規定され「△」は訓示的な内容となっている(経産省の公式サイトから引用)

 M&A支援機関の登録制度の申請受付、公表、事業承継・引継ぎ補助金のスケジュールは次の通りです。

  • 8月中旬:登録制度の申請受付開始、情報提供受付窓口の開設
  • 9月中旬:登録制度の申請受付締め切り
  • 9月中旬~下旬:登録支援機関の公表
  • 9月下旬:事業承継・引継ぎ補助金(令和3年度当初予算)の公募開始

 市場が拡大しているM&A仲介業では、様々な事業会社が参入しており、仲介スタッフの専門知識が乏しいケースや顧客の利益に反する契約を促す事例も起きています。

 そこで、問題のある支援機関について、経産省は中小企業側からの情報提供窓口を設ける予定です。

 中小企業がM&A仲介を依頼するときの注意点については、経産省の「中小M&Aハンドブック」(PDF方式)が、次のようなチェック項目を挙げています。

 M&Aに関する希望条件を、明確に伝えたか。

 売り手・買い手の双方から受任する仲介者と、売り手・買い手いずれかのみから受任するFA(フィナンシャルアドバイザー)の違いを理解しているか。その上で、本件では仲介者とFAのいずれに該当するかを確認したか。※仲介者の場合は、売り手・買い手の双方に対し手数料を請求することが通常である。

 業務範囲はどの工程か。具体的な業務の内容は何か。例:売り手・買い手のマッチングまで支援する。具体的には○○のような方法で支援する。

 手数料はどのような基準で算定し、どのタイミングで支払う必要があるのか。また、最低手数料は設けられているのか。例:本件では、着手金・月額報酬・中間金は請求せず、成功報酬のみ請求する。成功報酬額は純資産額を基準に算定し、○○円未満の場合には最低手数料○○円を請求する。

 秘密保持条項は設けられているか。その場合、どのような情報の秘密を守る必要があるのか。また、特定の者への情報の共有は許されているか。例:本件取引の内容や交渉の経緯は秘密である。ただし、弁護士等の士業等専門家に必要な情報を共有することは許される。

 マッチング支援等において並行して他の仲介者・FAへの依頼を行うことを禁止する条項(専任条項)は設けられているか。士業等専門家等にセカンド・オピニオンを求めることは可能か。

 契約期間はいつまでか。中途解約に関する条項はあるか。(専任条項が設けられている場合)いつまで専任条項が有効か。

 M&A未成立で仲介契約・FA契約が終了した後、一定期間内に売り手がM&Aを行った場合に、その仲介者・FAが手数料を請求できることとする条項(テール条項)は設けられているか。その期間は2年~3年以内か。対象となるM&Aは、その仲介者・FA が実際に紹介してきた買い手とのM&Aに限定されるか。