目次

  1. 経費精算システムの導入メリット
    1. 申請者のメリット
    2. 承認者のメリット
    3. 経理担当者のメリット
  2. おすすめの経費精算システム4選
    1. ジョブカン経費精算
    2. マネーフォワード クラウド経費
    3. 楽楽精算
    4. Concur Expense
  3. 経費精算システムの選び方
    1. 必要な機能はそろっているか
    2. 最も多く発生している経費精算を楽にしてくれるか
    3. 電子帳簿保存法への対応はどうか
  4. 経費精算システムを導入したあとは
  5. 経費精算システム導入で飛躍につながる原動力を

 経費精算システムとは、経費精算業務に役立つ機能を搭載したツールです。

 経費精算とは、経営者や従業員(以下、申請者)が立て替えた企業の費用を、あとで企業がその人に対して支払う手続きを言います。

 申請者が申請書と領収書などの証憑を承認者に提出、承認者がチェックしたのちに経理担当者が確認、それを経て申請者へ支払い、というのが一連の流れです。

 経費精算システムは、そうした申請者、承認者、経理担当者それぞれの作業負担を軽減してくれるツールとなります。具体的には次のようなメリットがあります。

申請者のメリット 承認者のメリット 経理担当者のメリット
・申請に必要な情報入力が簡単にできる
・申請ミスを減らすことができ、差し戻しのときのストレス回避につながる
・申請確認、差し戻し後の申請再確認の漏れがなくなる
・代理の承認者を決めることで、経費精算が滞らないようにできる
・差し戻しの手間を減らせる
・進捗状況がわかるので申請者や承認者へ適切なアクションができる

 申請者にとって、経費精算業務の一番のネックは、業務の忙しさの合間に申請しなければならないことです。

 経費精算システムの多くは、オンライン上で申請から承認、精算まで完結できます。IDとパスワードさえあれば、自宅のパソコンや外出先のスマートフォンから利用が可能です。

 また、交通系ICカードを、Felicaが搭載されたタブレットやカードリーダーなどで読み込ませれば、日付、区間、金額が即座にシステムへ反映されます。

 経費精算システムのアプリ内で領収書を写真に撮ると、OCR機能(画像データから文字を認識してデータ化する機能)により必要項目が自動で読み込まれるため、打合せなどで発生した飲食代の申請も簡単です。

 システムによっては、AIが、同じ店での領収書は過去の記録に習って、科目と統一するように学習してくれるものもあります。

 経費精算システムの自動入力機能は、こうした手間の軽減だけでなく、申請のミスも減らせるのがメリットです。差し戻しによるストレスの回避も期待できるでしょう。

 オンラインで確認ができるので、時間や場所を選ばずに承認、もしくは差し戻しが可能です。

 また、経費精算システムでは、経費精算の申請がされてはいるが、まだ承認されていない状態のものが、画面上で簡単に気づけるように設計されています。

 抱えている従業員の数が多くても、紙ベースのように差し戻した申請の再確認が漏れることはなくなるでしょう。

 また代理の承認者を設定することもできるので、申請者が早めに申請したのにもかかわらず、承認者が忙しすぎて確認が滞っている……といったことも回避できます。

 経理担当者には、以下のようなメリットがあります。

差し戻しの手間を減らせる

 経費精算システムでは、設定を工夫して、申請ミスによる差し戻しの手間を減らすことができます。

 例えば、従業員の出勤定期区間を設定しておくことで、定期区間と取引先へ向かうときの区間の一部がかぶっていたときでも、自動で正しい交通費が算出されるようにすることが可能です。

 あらかじめ勘定科目を制限しておくことで、適した科目のみで申請するように誘導もできます。

進捗状況がわかるので該当者へのアクションがしやすい

 経費精算システムでは、申請や承認の進捗具合がひと目でわかるため、経理から申請者や承認者へ、連携したチャットツールからメッセージを送ったり、直接声を掛けたりなど、アクションも起こしやすく、申請漏れや承認漏れを防げます。

 地味ではあるものの、申請や承認待ちによる遅延はよくあるので、非常に助かる機能です。

証憑をデータで確認・保管

 経費精算システムには、証憑の写真データやPDFファイルをアップロード機能が備わっています。

 オンライン上で申請内容と証憑を突き合わせられるので、たとえばテレワークで出社の予定がない従業員からの申請でも、原本の送付を待つといったタイムロスがありません。

 しかし、2021年現在は、まだ証憑をデータ保管するには所轄税務署への申請が必要なのでご注意ください(電子帳簿保存法)。

会計システムへの入力、従業員への精算が容易にできる

 経費精算システムでは、各会計システムへインポートするためのCSVファイル作成の機能を備えています。

 消費税の区分や部門など、申請者に入力してもらうのが難しい項目は経理側で手入力をせざるを得ません。

 経費精算システムであれば、そのようなミスが生じやすかった項目も全て確認した後にCSVファイルを作成できるため、作業効率が大幅な改善が期待できます。

 また精算の際も振込データを簡単に作ることができますので、作業は容易です。

 では、おすすめの経費精算システム4つをご紹介します。

 ジョブカン経費精算は、DONUTSが提供している経費精算システムです。

 初期費用が無料で、最低利用期間の縛りがないのが特徴。システムを使いたいけれどコストが気になる……という企業でも導入しやすいのが魅力です。

 ジョブカン労務管理やジョブカン勤怠管理などの同シリーズの他システムと連携させることで、間接部門の多岐に渡る業務の効率化を進めることもできます。

 導入までは営業担当者が相談に乗ってくれますので、サポート面でも充実しているといえます。

製品名 ジョブカン経費精算
企業 DONUTS
機能 ・業界最安値。初期費用無料
・最低利用期間の縛りなし
・ジョブカンの給与管理と連携して明細発行が可能
・英語、韓国語、タイ語に変換可能
使用感 ・スッキリしたUIで見やすい
・承認経路の設定も使いやすい
・インポートやエクスポートが容易
利用上の注意 ・OCR機能なし
・モバイルSuicaからのデータ読み込み不可
おすすめの企業 初期費用やランニングコストを抑えたい企業
費用 ・初期費用なし
・1ユーザー400円/月額(他ジョブカンシステム併用は350円)
※最低月額利用料金5,000円

ジョブカンの公式サイトはこちら。

 マネーフォワード クラウド経費は、アクティブユーザー分のみの従量課金制が採用されています。

 経費精算を行う従業員数が少なければ、比較的コストをおさえることができるでしょう。

 多様なバックオフィス業務をまとめて利用できるパッケージプランもあるので、全体的な見直しを考えている場合はそちらを検討されるのもおすすめです。

製品名 マネーフォワード クラウド
企業 マネーフォワード
機能 ・OCR入力による時間削減
・オペレーターへの入力依頼が可能
・タイムスタンプ付与による電子帳簿保存法に対応
・部門の按分が可能
使用感 ・アプリのUIが秀逸で使用しやすい
・直感的に使いやすい
・不慣れでも理解しやすい
利用時の注意 ・入力に慣れるまで時間がかかる
・承認経路を細かく設定できる反面、設定に手間取る
・同じマネーフォワードの会計・給与と操作性に違いがある
おすすめの企業 経費精算を含むバックオフィス作業全体をDXしたい企業
費用 ・初期費用なし
・スモールビジネスプラン…月額2980円(年払・税抜)
・ビジネスプラン…月額4980円(年払・税抜)+月額500円/1ユーザー
※従量課金分はアクティブユーザーのみ
※各プランはいずれも他のマネーフォワードサービスを含んだセット料金
※2022年6月1日に料金改定あり

マネーフォワード クラウド経費の公式サイトはこちら。

 導入実績8,000社を超える経費精算システム、楽楽精算。

 経費精算システムの導入では、これまで使ってきたフォーマットが大幅に変わってしまう懸念点がありますが、楽楽精算の場合は現行のフォーマットに近い形で再現が可能なため、移行時の手間の少なさを期待できます。

 しかし、初期費用が発生することや、月額料金も先述の2社と比べると高いので、従業員数を多く抱える規模の企業であれば、慎重に検討したほうがいいでしょう。

製品名 楽楽精算
企業 ラクス
機能 ・仕様のカスタマイズが豊富なので現行のフォーマットの再現が可能
・規定違反の自動チェックやアラート機能
・入力を省略するための工夫が施されている
・電子帳簿保存法の要件を満たしている
使用感 ・交通費はルートを入力すれば自動計算される
・領収書をスマホで撮影するだけで自動で読み取り
・モバイルアプリ版の機能はやや難あり
利用時の注意 ・モバイルSuicaやPASMOなど連携不可
・電話でのサポートは有償(5,000円/月額)
・OCRでの読み込みはPDFファイルのみ
おすすめの企業 既存の社内制度に合わせたシステム導入をはかりたい企業
費用 ・初期費用:100,000円
・月額料金:30,000円〜(50ユーザーまで)

楽楽精算の公式サイトはこちら。

 Concur Expenseは、SAP Concurからローンチされている経費精算システムです。

 日本での導入社数は1125社(2020年10月時点)と他社と比べて少ないですが、導入企業はグローバル展開している大手企業が名を連ねます。

 航空企業やQR決済企業など、多様な企業のアプリと連携しているため、該当するアプリを利用しているなら積極的に検討したいシステムです。

製品名 Concur Expense
企業 コンカー
機能 ・21ヶ国の言語に対応
・多通貨に対応
・経費の不正支出の自動検知機能
・SAPで基幹システムを管理していると相性よし
使用感 ・グッドデザイン賞を受賞したこともあるUI
・Webブラウザ上では若干もたつきあり
・モバイルアプリでは見づらい点あり
利用時の注意 ・Webブラウザ上の動作が遅い
・費目の汎用性が低い
・料金プランによっては経費申請のレポート数のため、費用感がわかりづらい
おすすめの企業 海外の取引が多いグローバル企業
費用 ・初期費用:無料(導入にあたっての研修あり)
・月額料金:29800円〜(最低利用人数50ユーザー)

Concur Expenseの公式サイトはこちら。

 経費精算システムは、有名だからと安易に決めてしまうと企業の実態と合わなかったり、余計なコストをかけてしまい、損をしてしまうことがあります。

 実際に導入するときは、以下のポイントと照らし合わせることをおすすめします。

 経費精算システムを選ぶ際には、まず自社に適した機能が備わっているかどうか見てみましょう。

 企業例ごとに、あると便利な機能は何かをまとめましたのでご参考ください。

企業例 あると便利な機能
仮払金が多く発生する企業 仮払精算の機能
出張が多い企業 ・旅行企業とのAPI連携機能
・消費税区分の細かい設定機能
社外への移動が多い企業 交通系ICカードのデータ読み取り機能
備品購入が多い企業 ・証憑の読み取り機能
・過去の精算をベースにした自動仕訳機能
・証憑のデータ保管に関する法対応の有無
経理担当者が少ない企業 ・会計システムへの取り込み機能
・ウェブバンクとの連携機能
・振込データ作成機能
従業員数が少ない企業 ・経費を部門で按分できる機能
・1人の従業員に複数部門の紐付けができる機能
従業員数が多い企業 ・承認経路を複数設定できる機能
・部門毎の予実管理機能
海外に事業所がある企業 ・外国語への翻訳機能
・消費税区分の設定機能

 必要な機能が揃っていることがわかっても、安易に導入を決めず、その機能が自社の中で最も多く発生している経費精算を効率化してくれるかチェックしましょう。

 例えば、従業員の精算は交通費がほとんどであれば、交通系ICカードからのデータの取り込み機能があると便利です。

 しかし、関東圏でよく使われているSuicaであっても、カードのSuicaは対応しているけれど、アプリのモバイルSuicaは対応していない、などシステムによって細かな部分が違うことがあります。また、申請の容易さが異なる場合もあります。

 経費精算システム導入で重要なのは、機能があるかどうかもそうですが、実務を楽にしてくれるかどうかです。

 こうした視点でチェックできるようにするためにも、実際に発生している経費の種類を事前に把握しておきましょう。

 領収書などの証憑をデータで保管するには、電子帳簿保存法に基づく一定の要件(タイムスタンプの付与など)に従わなければいけません。

 しかし、自社で対応するには費用的にも時間的にもコストがかかるため、なるべくすでに対応しているシステムを選ぶのがおすすめです。

 当該のシステムが電子帳簿保存法に対応しているかどうかは、国税庁から依頼を受けた協会(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会:JIIMA)の認証の有無でチェックできます。

 JIIMAの電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証製品一覧を参考にしてください。

 今回ご紹介している4社のシステムは、電子帳簿保存に対応しています。しかし、ジョブカン経費精算は協会から認証を受けていませんので、懸念材料となるのなら問い合わせてみると良いでしょう。

 なお、2021年現在では、電子帳簿保存を希望する場合は所轄税務署へ届出が必要ですが、2022年の法改正により届出は不要となります。2022年度から検討をされるのであれば、ちょうどよいタイミングであるといえます。

 注意すべき点としては、電子帳簿保存が認められても原本については定期検査をしなければならないことがあげられます。引き続き経理への提出が必要になるので、勝手に廃棄してしまわないように注意喚起するといいでしょう。

 経費精算システムの運用を開始してみると、想定外の事例が発生するものです。

 例えば、従業員が他部署の経費を立て替えることが多かった、部門別に経費を按分する必要が出てきたなどです。

 こうした場合、経費精算システムの運用ルールを変更する必要がありますが、「そもそも導入した経費精算システムで引き続き対応できるのか」「ルールを変更したときに経理担当者の負担は増えないか」、事前確認がポイントになります。

 また、セキュリティ面の問題にも配慮が必要です。

 経費精算システムはオンライン上で利用できるため、従業員は自身のパソコンやスマートフォンからも当然申請ができるので、ついついひと目を気にせず利用してしまいます。

 個人情報保護法やISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の面から、利用できる端末を制限しておくといいでしょう。

 経費精算は、考えている以上に負担の大きい作業です。

 月初に経費精算に時間を取られるがために、思うようなパフォーマンスができない従業員もいれば、膨大な量の確認作業に追われ、ただ手作業を行うだけに留まってしまう経理担当者もいます。

 今は、新型コロナをきっかけとしたテレワークの導入をはじめ、業務の効率化が叫ばれている時代です。

 従業員のストレスになりやすい業務である経費精算を、システム導入によって改善すれば、企業の飛躍につながる新たな原動力を生み出すかもしれません。