目次

  1. 経費精算とは
    1. そもそも経費とは 経費と費用の関係性
    2. 経費・費用と損金の関係性
  2. 経費精算の基本的な流れ
    1. 従業員が立て替え払いをする
    2. 従業員が必要書類を作成する
    3. 承認者が従業員から受け取った必要書類をチェック
    4. 経理が承認者から受け取った必要書類をチェック
    5. 経理から従業員に経費分を支払って精算
    6. 経理が必要書類を保管
  3. 経費精算の課題と解決策
    1. 経費精算の課題点
    2. 経費精算の改善策
    3. ベンダーへのアウトソーシング
    4. ルールを明確化する
  4. 会社の更なる飛躍に欠かせない経理の存在

 経費精算とは、経営者や従業員が業務を行ううえで会社の代わりに支払った金銭を、立て替えた人に払い戻す作業です。

 たとえば、従業員が出張の宿泊費として3万円を立て替えたら、支払いを証明する領収書を受け取り、同額をその従業員に支払います。

 経費精算を行うときは、「そもそも何が経費で、何が経費ではないのか」を知ることが重要です。

 経費とは、事業活動をするうえで実際に支払う金銭を言います。

 したがって、たとえば出張にかかった交通費や宿泊代(旅費交通費)、取引先との飲食費(接待交際費)、会社用の携帯代(通信費)、文房具やプリンターのインクに支払ったお金(消耗品費 ※ただし10万円未満・詳細後述)などは経費に当てはまります。

 一方、事業活動のために支払った金銭であっても、減価償却費(使用可能期間が1年以上のものや、金額が10万円を超えるようなもの)などの実際の支払いがないものや、交通違反の罰金などは経費にはあたりません。

 たとえばパソコンやデスクなど、価格の高い備品の購入費については減価償却資産にあたるケースがあるため、注意が必要です。

 ところで、経費と聞くと税金対策を思い浮かべることが多いかもしれません。しかし、経費であっても、内容によっては法人税対策とならないものがあります。

 これは経費および費用は財務会計、法人税計算の元となる所得は税務会計と、会計処理の違いから来ています。

 経費を一部とする費用は財務会計、すなわち簿記を用いて経営状態をステークホルダーに説明するために行われる会計の用語です。費用と対になるのが収益で、収益から費用を引くと利益が求められます(収益-費用=利益)。

 一方で、法人税計算の元となる所得は税務会計、すなわち税金を求めるために行われる会計の用語です。所得は益金から損金を引くことで求められます(益金-損金=所得)。そのため、損金が大きければ支払う法人税が安く済みます。

 所得を決める益金や損金を求めるとき、財務会計の収益や費用を元に行うのが一般的ですが、収益を益金に、費用を損金にするには一定の条件があります。

 収益の中でも益金にできるもの(益金算入)とできないもの(益金不算入)、費用の中でも損金にできるもの(損金算入)と損金にできないもの(損金不算入)があるのです。

 具体的には、次のとおりです。

益金にできるもの(益金算入)

 商品の売上やサービス提供に対する報酬のような、売上高や営業外収益などで計上したものがそれにあたります。

  1. 資産の販売による収益の額(例:売上高)
  2. 有償または無償による資産の譲渡による収益の額(例:有価証券売却益、固定資産売却益等)
  3. 有償または無償による役務の提供の収益(例:売上高や貸付金利息など)
  4. 無償による資産の譲受けの収益(例:債権者の債務免除など)
  5. その他の取引で資本等取引以外のものによる収益(例:自己株式の取得、処分や剰余金そのものなどの利益の配分など)

益金にできないもの(益金不算入)

 不算入の対象となるものは上記で挙げた益金の条件に合わないものや、二重課税になったり不合理な益金になったりするものです。

 代表的なものは以下です。

  1. 株式の配当金などの受取配当金
  2. 所得税・法人税など税金の還付金
  3. 保有資産の評価額

 受取配当金は限度額が決まっているので注意が必要ですが、こちらは税理士に相談した方が良いでしょう。参考:国税庁│Ⅱ 受取配当等の益金不算入制度の見直し(PDF方式)

損金にできるもの(損金算入)

 損金算入は、財務会計で計上している原価・販管費・損失の3項目が当てはまります。

 言い換えれば、計上した3項目から損金不算入となる分を除外したものが全て、損金算入の科目となります。

 しかし、以下の2点に注意してください。

  • 原価・販管費・損失は発生主義に基づいて算入されているか
  • 繰延資産や減価償却費は複数年に分けて算入されているか

 経理は上記2点を日頃から意識して計上しますが、経営者の方は知っておくと、想定とズレるリスクを減らせるでしょう。

損金にできないもの(損金不算入)

 損金不算入とは費用計上したもののうち、税務会計上は認められないものです。そのため、最終的な所得が増えて、法人税等が膨らんでしまいます。

 具体的には以下となります。

  1. 減価償却資産および繰延資産の償却超過額
  2. 資産の評価損(一定の場合を除く)
  3. 寄附金および交際費等の損金算入限度額超過額
  4. 法人税、住民税、罰金など
  5. 各種引当金の繰入限度超過額
  6. 役員給与、役員退職金の過大支払分

 経費精算の際、意識すべきは3.の寄附金および交際費等の損金不算入限度額超過額です。

 定められる限度額は会社規模によりますが、寄附金や交際費で一定金額以上を超えた分については損金として認められなくなります。

 なお、限度額については、寄付金も交際費も法人税法によって定められています。

寄付金の限度額(寄附金自体の目的や性質によって異なる)
①国等に対する寄附金および財務大臣の指定した寄附金 全額損金算入可能
②特定公益増進法人(独立行政法人や公益財団法人など) 資本又は出資を有する法人の場合
{所得金額×(6.25/100)+期末の資本金等の額×(当期の月数/12)×(3.75/1000)}×(1/2)× 1/2
資本又は出資のない法人
所得金額×(6.25/100)
③一般の寄附金 資本又は出資を有する法人の場合
{所得金額×(2.5/100)+期末の資本金等の額×(当期の月数/12)×(2.5/1000)}×(1/4)
資本又は出資のない法人(公益法人等(非営利法人を除く。)を除く。)の場合
所得金額×(1.25/100)
交際費(資本金の額によって限度額が異なる)
資本金1億円以上の大企業 交際費の50%
資本金1億円以下の中小企業 800万円(50%とどちらかを選択できますが、まず800万円が選ばれます)

 そのため、経費に当てはまるものでも、内容によっては法人税対策ができないというわけです。経費精算時の注意点として、おさえておくことをおすすめします。

 次に、従業員が代わりに支払ったときの、経費精算の大まかな流れについてご紹介します。

 従業員が、事業活動において金銭が必要になり、立て替え払いを行います。発行された領収書を受け取り、保管します。

 従業員が、規定の経費精算書に、立て替え払いした金額を記入します。交通費であれば経路、物品の購入費であれば購入物の名前などのように詳細も記載します。また、領収書などの証憑も指定の台紙に貼ります。

 上司や管理者など、経費精算の承認者が従業員からの必要書類を受け取り、チェックします。問題がなければ承認、不明な点や記載間違いがあるときは従業員に差し戻します。

 承認後は、経費精算書と証憑を経理に提出します。

 経理が、承認者から回ってきた必要書類をチェックします。不備がなければ未払金として計上、不備があれば従業員と承認者に説明したうえで差し戻します。

 経理から従業員に、給与支払いのタイミングで、従業員が立て替えた分を支払いして精算します。

 経理が経費精算書と証憑をまとめてファイル保管します。なお、法人税法では7年、会社法では10年保存と定められています。

 経費精算では、アナログなやり方で従業員、承認者、経理と、それにかかわるすべての人の負担になっているケースが少なくありません。

 ここで、経費精算のありがちな課題を整理し、改善策を解説します。

 経費精算を表計算ソフトなどのアナログな方法で運用している場合の主な課題は、次の3つです。

領収書など紙書類・データの保管

 書類の保管期限は、法人税法によって7年保存、会社法では10年保存を求められています。そのため、大量の書類を物理的にどう保管するかに悩むケースがしばしば見られます。

 PDFを使ったデータ保管もありますが、2021年現在では所轄税務署への届出が必要なうえに、様々な要件をクリアしないといけないため、現実性に乏しいのが実情です。

手作業によるミス

 エクセルなどの表計算ソフトによる手作業ですと、金額や科目のミスが起こりやすいです。

 たとえば、接待の際の移動費を「旅費交通費」とされる方も多いのですが、実態によっては「交際費」や他の費用の扱いになります。

 また、経理担当者であっても、すべて手入力となるとミスが生じやすくなります。

ミスの修正に時間がかかり過ぎる

 経理が申請書や証憑をチェックしたときに不備があった場合、承認者や従業員に差し戻すことになります。

 しかしアナログで管理をしていると、部署間の連携がうまくいかなかったことでに本人への修正依頼が遅くなり、結果として再提出までに数日かかった……というケースが多くあります。

 アナログな運用方法の解決策は、以下の3点が挙げられます。 

  1. 経費精算システムの導入
  2. ベンダーへのアウトソーシングする
  3. ルールの明確化

 1つずつ解説します。

経費精算システムの導入

 経費精算システムとは、オンライン上で申請から精算まで行えるITツールです。

 テレワーク中や外出先の隙間時間などでも書類の確認や差し戻しができ、従来のアナログなやり方よりスピーディーに行えるのがメリット。

 申請時に、よく使われる科目のみを選択できるようにするなど、ミスを未然に防ぐ設定もできます。

 以下、筆者のおすすめの経費精算システムを2つご紹介します。

ジョブカン経費精算

 導入実績1万社を超える実績がある経費精算システムです。

 科目設定や承認経路など柔軟に設定できるのが特徴。利用料も1ユーザー400円と、リーズナブルです。

サービス名 ジョブカン経費精算
特徴 ・初期費用0円で月額料金もリーズナブル
・サポートも豊富
・外国語への切り替えが容易
おすすめの企業 初めて導入を考えている中小企業
費用 月額400円(税抜)/1ユーザー
※最低月額利用料5000円
※ジョブカンの他サービスと併用の場合は月額350円/1ユーザー

ジョブカン経費精算の公式サイトはこちら。

マネーフォワード クラウド経費

 家計簿アプリでも有名なマネーフォワード社の経費精算システムです。

 他社と比較してスマホアプリのUIも非常に優れており、営業など経費精算の申請が多い従業員を多く抱える会社は、検討の価値があるでしょう。

サービス名 マネーフォワード クラウド経費
特徴 ・豊富な金融機関、クレジットカード会社との連携が可
・OCR機能による領収書の写真から読み取り可
・入力代行もあり
おすすめの企業 経費精算の申請が多い企業
費用 ・スモールビジネスプラン…月額2980円(年払・税抜)
・ビジネスプラン…月額4980円(年払・税抜)+月額500円/1ユーザー
※従量課金分はアクティブユーザーのみ
※各プランはいずれも他のマネーフォワードサービスを含んだセット料金

マネーフォワードの公式サイトはこちら。

 経費精算システムは現在、今紹介したサービス以外にもさまざまなものがあります。

 下記では、これ以外の経費精算システムの比較や、システムの選び方などをご紹介しています。よければあわせてご覧ください。

 経理担当者への負担が大きいためにミスが目立つ場合は、経理業務を代行しているベンダーにアウトソーシングするのもひとつです。

 ベンダーの選定ポイントは、3つあります。

①事業規模

 ベンダーには、10人以上などと従業員数の最低ラインを決めているところが多くあります。従業員が少ない場合は、全ての規模に対応しているかどうかチェックしましょう。

②専門性

 独自の方法で経理処理を行っている場合、それを遂行してもらうのに支障がないかどうか確認する必要があります。場合によっては、選別の場に経理担当者へ同席してもらうことも検討してください。

③エリア

 全国を対象としているベンダーがほとんどですが、中には首都圏のみとエリアを限定しているケースもあるので注意が必要です。

 経費精算のルールあらかじめ明確にするおくことで、従業員側のミスや経理担当者の負担だけでなく、従業員間の不公平感を減らすことができます。

 以下、ルールの具体例をご紹介します。

領収書のルール

 領収書には、「日付、宛名、金額、但書、発行者の住所・氏名」を書くように規定しておきましょう。

 宛名について、空欄や「上様」と記載されたものを税務署が容認するケースは少なくありませんが、本当に会社の必要経費なのかはっきりさせておいたほうが無難です。 

 また、慶弔金のように領収書の発行が難しいものは、案内状を添付するように指示するなど、代替案を出しておくと親切です。

交通費のルール

 交通費の場合、定期区間分を差し引かずに申請してしまうケースがよくあるため、ルール内に計算方法をはっきり明記しておきましょう。具体例を入れておくのもおすすめです。

 また、接待などで利用したタクシー代などは交際費となりますので、区別できるようあわせて盛り込んでおくといいでしょう。

交際費のルール

 交際費の経費申請には、飲食の年月日、参加者、飲食した店名や所在地、1人あたりの金額が必要なので、それらをきちんと申請書に記載するように決めておきましょう。

 なお、取引先との飲食については1人あたりの金額で課税・非課税が変わります。

 5000円未満の飲食を会議費、5000円以上であれば交際費と科目を分けている会社も多いですが、もし自社がそうであるならルールに入れておいたほうがミスが起こりにくくなります。

 経営者としては、経理担当者に比較分析をはじめとする経営について相談し、どうしたら効率的に会社にお金を残せるかなど、スキルの高い仕事を希望したいことと思います。

 しかし、本来、高いスキルを持つ経理担当者が、経費精算といった日頃の実務に追われていて、その実力を存分に発揮できていない話は少なくありません。

 経理は、会社の更なる飛躍にとって欠かせない存在です。これを機に一度、どんなストレスを抱えているのか、話してみる機会を設けてみるのはいかがでしょうか。