銀行マンから酒蔵の婿養子に

 千代むすび酒造は1865年に創業し、代表銘柄「千代むすび」をはじめ、焼酎やリキュール、スイーツの製造にも力を入れています。

 そんな老舗で、6代目として活躍しているのが、岡空聡さん(38)です。現在は社長室長と製造部の蔵人を兼務しています。

 聡さんは鳥取県大山町出身。前職は地元の山陰合同銀行で働いていました。2011年、職場の同僚だった縁で、千代むすび酒造社長の岡空晴夫さんの長女・陽子さんと結婚し、創業家である岡空家へ婿養子に入ります。ただ、すぐに蔵に入ることを決意したわけではありませんでした。

 「日本酒は好きですし、地元の有名な酒蔵の後を継ぐことは興味のある選択肢でした。しかし、畑違いの業界に不安があり、銀行の仕事で地域貢献の手応えをつかんでいたため、決意を固めるまでに時間がかかりました」

千代むすび酒造は鳥取県を代表する酒蔵の一つです

融資業務で実感した老舗の重み

 聡さんの背中を押したのが、結婚後に地銀マンとして大阪府の支店で担当した、中小企業向け融資の仕事でした。

 「慣れない土地で新規融資を決めるとき、大いに参考にしたのが創業年です。地域に根ざした商売をしてきた老舗企業は周囲の信頼が厚く、財務諸表で見えにくい部分も含めて経営の土台がしっかりしています。新規融資の取引先として心強いというわけです。そうした老舗の経営者とお付き合いをするうち、世の中から必要とされ続けてきた会社の重みを実感し、日本文化の一部である老舗企業を残したいと思うようになりました」

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