廃棄されていた魚の皮に光 「幻の深海魚」もスマホケースに
400年の漁業文化が根ざす富山県の氷見市で、廃棄されていた魚の皮を活かした商品づくりに取り組むフィッシュレザー職人がいます。さらに注目を集めるために開発したのが、「幻の深海魚」などをつかったスマホケースの開発です。すべてが1点ものであり、SDGsを実現する新商品の開発をサポートした、氷見市ビジネスサポートセンター Himi-Biz(ヒミビズ)から紹介します。
400年の漁業文化が根ざす富山県の氷見市で、廃棄されていた魚の皮を活かした商品づくりに取り組むフィッシュレザー職人がいます。さらに注目を集めるために開発したのが、「幻の深海魚」などをつかったスマホケースの開発です。すべてが1点ものであり、SDGsを実現する新商品の開発をサポートした、氷見市ビジネスサポートセンター Himi-Biz(ヒミビズ)から紹介します。
目次
魚の街として、全国に知られる氷見漁港がある富山県氷見市で、地域おこし協力隊として2018年から活動をはじめた野口朋寿さんはこれまでで破棄されてきた、魚の皮を活かしたフィッシュレザーの事業化を目指し、活動を続けていました。
野口さんがフィッシュレザーに注目した理由は、主に3点ありました。
これらの現状を知った野口さんは、知らないうちに進む環境破壊を緩和させるため、これまで廃棄されていた魚の皮を加工した、フィッシュレザーの事業化にチャレンジしてきました。
2018年から活動を開始したフィッシュレザーづくりは、2019年にチャレンジしたクラウドファンディングの取り組みなどもあり、氷見市内でも注目を集める取り組みとなっていました。
一方で、野口さんは地域おこし協力隊としての任期を終えた後、本格的にフィッシュレザーを事業化していくためには、どのようにしていくのが良いのかと考えていました。そこで6月17日、氷見市でオープンをしたばかりのヒミビズへ相談に訪れました。
野口さんのフィッシュレザーには、次のような特徴がありました。
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ヒミビズからはフィッシュレザーへの理解や関心を高めてもらうための取り組みが必要であることを伝え、フィッシュレザーの認知を高めていくために、新商品の開発をアドバイスしました。
フィッシュレザーは魚の大きさによって取れる大きさが変わるため、小さめの商品が望ましいこと、新型コロナウイルスの影響や5G技術の展開によって、今後さらにスマートフォンの利用頻度が高まると考え、ヒミビズが提案したのがフィッシュレザーを使ったスマホケースでした。
また、フィッシュレザーを使ったスマホケースの開発には、野口さんのフィッシュレザーに対する思いを伝える機会を用意したほうが良いと伝え、クラウドファンディングを使って対外的に発信をしていくこともアドバイスし、フィッシュレザーを使ったスマホケースの試作品づくりがはじまりました。
スマホケースの試作品づくりの状況を聞くなか、野口さんから、「実は今、リュウグウノツカイの皮を使ったスマホケースも作ることができそうです」という話がありました。フィッシュレザーを啓蒙する活動の一環で、魚津水族館との共同プロジェクトを行われていたため、リュウグウノツカイの皮も使えそうだということでした。
リュウグウノツカイは、細長い銀色の体に鮮やかな赤色のひれを持つ深海魚です。体長は数メートル。まれに浅瀬で見つかることがありますが、詳しい生態がまだわかっていないため「幻の深海魚」とも呼ばれています。
リュウグウノツカイを素材で使えるとは考えもしなかった筆者は、「えっ?!あの深海魚のリュウグウノツカイですか?」と野口さんに何度も確認し、その場で「ぜひリュウグウノツカイのスマホケースも作り、合わせて展開をしてはどうですか?」と伝えました。
野口さんは、すぐにリュウグウノツカイノツカイの皮も使ったスマホケースを開発することになりました。
リュウグウノツカイをはじめとした、フィッシュレザーを使ったスマホケースの開発は無事に進み、2020年12月27日からクラウドファンディングでの支援を呼びかけていくことになりました。このプロジェクトは、地元の主要新聞で大きく取り上げられたほか、日本経済新聞や朝日新聞デジタルなどのさまざまなメディアでも取り上げられる、全国的に注目されるプロジェクトとなりました。
フィッシュレザーを使ったスマホケースのクラウドファンディングは、無事に目標額の寄付を集めることができました。さらに、この新商品開発を皮切りに、キー局の日本テレビの人気バラエティ番組でフィッシュレザーが取り上げられたほか、大手経済雑誌のダイヤモンドオンラインに記事が紹介されるなど、さらに野口さんが生み出すフィッシュレザーに注目が集まりました。
この結果、野口さんが開設をしてきた自社ECサイト経由での売上も、野口さんが目指している事業計画に沿った経営成績も残されている状況になっていきました。
2018年から氷見市で活動してきた野口さんは、2020年には富山県地域おこし協力隊表彰のグランプリを受賞し、野口さんのフィッシュレザーを通じた取り組みは、富山県内でもさらに注目されるようになってきました。
また、世界へ情報発信をしていくNHKの番組「NHKワールド」でも取材されたほか、世界的に有名な国内テーマパークのステージ衣装に、野口さんの作るフィッシュレザーを使いたいという相談が入るなど、フィッシュレザーへの関心は、さらに高まり続けています。
野口さんがこれまでに商品化したフィッシュレザーはおよそ400枚ほどになるといいます。ヒミビズでは、野口さんのフィッシュレザーを通じた活動を、より多くの方に知ってもらい、野口さんが描く「明日へと続く、より豊かな未来」の実現に向けて、引き続きサポートしていきます。
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