目次

  1. 電子契約サービスとは
  2. 電子契約サービスを選ぶ3つのポイント
    1. 利用している取引先企業が多いか
    2. 使いたい機能があるか
    3. どれくらいの費用対効果が見込めるか
  3. おすすめの電子契約サービス4選
    1. クラウドサイン
    2. 電子印鑑GMOサイン
    3. Adobe Sign
    4. DocuSign
  4. 電子契約サービスに切り替えるときの注意点
    1. 電子契約が認められないケースがある
    2. 取引先が電子契約に対応可能か事前に確認する
    3. 他社が電子契約サービスを導入した場合を想定する
  5. 電子契約サービスは簡単 ぜひ一度お試しを

 電子契約サービスとは、電子契約を行うための専用サービスです。

 そもそも電子契約とは、紙の契約書に捺印する代わりに、PDF等の電子ファイルへ双方がパソコン上で電子署名を行うことにより、契約を結ぶ方法を言います。

 オンラインで完結するため、オフィスへ出社することなく、短時間で締結できるのが特徴です。

 「今すぐ契約書を持ってこい!と言われ、車で100km先の取引先へ届けた」というエピソードを聞いたことがありますが、電子契約であればこのような事態を避けることができます。

 紙の契約書のときに必要だった印刷や製本、捺印、郵送にかかる時間と費用を削減することも可能です。

 慣れていると気になりませんが、これらは事業を営む上で必要なものでしょうか。

 一方、電子契約では、いつ誰が電子署名したのか、その契約書は改ざんされていないのか、がポイントとなります。それを証明し、トラブルを未然に防いでくれるのが、電子契約サービスです。

 「電子契約サービス」と聞くと、「PDFの契約書に、印鑑や署名の画像を貼り付けるサービス」と思う方がいらっしゃいますが、そうではないのです。

 電子契約サービスには、これ以外にも次のメリットがあります。

  • 日本の法律に遵守した形で、電子署名が可能なため、「この方法で合っているか」と悩まずに済む
  • クラウド上に契約書原本が保存されるので、火災等で消失するリスクを回避できる
  • 過去に締結した契約書データの検索が容易になるため、契約内容の確認や似たような契約書の作成にかかる時間が省ける

 自社の中でのみ利用するサービスと違い、電子契約サービスは、他社と共に利用して、大きなメリットを享受できます。

 そのため、自社都合だけを考えて選ぶと、利用できる機会が少ないといったことがあります。

 では、数ある電子契約サービスの中で、どれを選べば良いのでしょうか。ポイントを3つ紹介します。

 電子契約サービスを利用するうえで、意外と大事なのが、取引先と同じ電子契約サービスを導入することです。

 たとえば、取引先の多くがA社のサービスを利用している中、自社がB社のサービスを利用する場合、2つのサービスのアカウントを持つ必要があります。

 また、使い勝手もサービスによって異なるので、覚えることが多くなります。

 私の経験ですが、「当社で契約している電子契約サービス以外では、電子契約できない」と言われたことがあります。

 稀なケースかもしれませんが、このような状況では、せっかく電子契約サービスを導入したのに、書面で契約しなければなりません。

 既に電子契約サービスを導入している取引先がある場合は、どこのサービスを利用しているか確認しましょう。

 自社都合で選ばないようにするのが大切とはいえ、自社で使いたい機能がなければ「このサービスを利用してよかった」とはなりにくいものです。

 電子契約サービスは、基本的な機能はどのサービスにも備わっています。ただ、細かな部分で機能の差異があります。

 特に、紙の契約書の取り込み機能があるかどうかは、確認するのがおすすめです。創業したばかりの企業でない限り、それなりに紙の契約書が存在すると思います。

 その紙の契約書を、電子契約サービス上で一元管理すると、検索が容易になり便利です。

 また、他社が利用している電子契約サービスでも、費用対効果が芳しくない場合は慎重になったほうがいいでしょう。

 電子契約サービスによって、利用人数に応じた課金なのか、送信件数(契約書の署名依頼件数)に応じた課金なのか、料金体系が異なります。

 想定利用頻度から、利用料金を試算して、費用対効果の高いサービスを選ぶのがおすすめです。

 多数ある電子契約サービスの中から、おすすめ4つを厳選して紹介します。まずは比較しやすいように一覧表を作成しましたので、こちらをご覧ください。

サービス名 クラウドサイン 電子印鑑GMOサイン Adobe Sign DocuSign
特徴 ・国内の有料導入企業数No.1
・国内の電子契約市場シェアNo.1
・無料プランでもテンプレートが利用可能
・国内の導入企業数No.1
・当事者型署名(サービス名: 身元確認済み 高度電子署名)が利用可能
・単体でのサービス提供だけでなく、Adobe Acrobat Pro DC(PDF編集サービス)等のAdobeサービスの一部としても提供 ・世界180カ国以上、100万社以上、数億人のユーザーが利用
費用 ・月額費用 11,000円〜
・送信費用 220円/件
・月額費用 9,680円〜
・送信費用(契約印タイプ) 110円/件
・送信費用(実印タイプ) 330円/件
・月額費用 1,218円〜(1名利用の場合)
・月額費用 4,270円〜(2人以上で利用の場合)
・月額費用 10ドル/人〜
おすすめの企業 ・国内の企業との契約が多い企業
・外部サービスも積極的に利用して、業務を効率化したい企業
「当事者型署名」を利用したい企業 Adobeサービスを頻繁に利用していて、慣れている企業 海外の企業との契約が多い企業

 国内の電子契約市場シェアNo.1の電子契約サービスです。

 紙の書類を取り込む機能を利用すれば、過去に締結した契約書もクラウドサイン上で一元管理できて便利です。

 100以上の外部サービスと連携できるので、すでに導入しているサービスと連携させれば、業務の効率化も図れます。

サービス名 クラウドサイン
提供会社 弁護士ドットコム
特徴 ・国内の有料導入企業数No.1
・国内の電子契約市場シェアNo.1
・無料プランでもテンプレートが利用可能
機能 ・テンプレート機能
・紙の書類インポート機能
・AIによる書類の自動入力
・リマインド機能
・APIによるシステム連携
・100以上の外部サービスとの連携
など。
費用

・月額基本料 11,000円〜
・送信費用 220円/件

※無料プラン有り
・1名のみ利用可
・1カ月あたり5件まで送信可

おすすめの企業 ・国内の企業との契約が多い企業
・外部サービスも積極的に利用して、業務を効率化したい企業
公式URL https://www.cloudsign.jp/

 当事者型署名(認証局で発行される電子証明書による署名)に対応していることが特徴の電子契約サービスです。電子証明書とは、印鑑で言う印鑑証明書にあたります。

 ただし、どのような場合に当事者型署名が必要なのかは、総務省、法務省、経済産業省の連名での以下コメントの通り、明確には決まっておりません。

 法務部門や顧問弁護士など、法律の専門家への相談をおすすめします。

各サービスの利用に当たっては、当該各サービスを利用して締結する契約等の重要性の程度や金額といった性質や、利用者間で必要とする身元確認レベルに応じて、適切なサービスを慎重に選択することが適当と考えられる。

利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法3条に関するQ&A)
サービス名 電子印鑑GMOサイン
提供会社 GMOグローバルサイン・ホールディングス
特徴 ・国内の導入企業数No.1
・当事者型署名(サービス名: 身元確認済み 高度電子署名)が利用可能
機能 ・テンプレート機能
・紙の書類のPDF化代行サービス
・リマインド機能
・APIによるシステム連携
・8個の外部サービスとの連携
など。
費用

9,680円〜
・送信費用(契約印タイプ) 110円/件
・送信費用(実印タイプ) 330円/件

※無料プラン有り
・1名のみ利用可
・5件まで送信可

おすすめの企業 「当事者型署名」を利用したい企業
公式URL https://www.gmosign.com/

 AdobeのPDF編集サービスの一部としてもサービス提供されており、すでに利用できる方もいるかもしれません。Adobeサービスの利用に慣れている場合におすすめです。

サービス名 Adobe Sign(アドビ サイン)
提供会社 アドビ
特徴 ・単体でのサービス提供だけでなく、Adobe Acrobat Pro DC(PDF編集サービス)等のAdobeサービスの一部としても提供
機能 ・テンプレート機能
・リマインド機能
・APIによるシステム連携
・12個の外部サービスとの連携
など。
費用

費用
・月額費用 1,218円〜(1名利用の場合)
・月額費用 4,270円〜(2人以上で利用の場合)

※無料プラン無し

おすすめの企業 Adobeサービスを頻繁に利用していて、慣れている企業
公式URL https://www.adobe.com/jp/sign/business.html

 世界で数億人のユーザーが利用しているサービスです。今現在は、電子帳簿保存法に準拠しておりませんが、2022年1月施行予定の改正により、準拠される見込みです。

サービス名 DocuSign(ドキュサイン)
提供会社 DocuSign Inc.
特徴 ・世界180カ国以上、100万社以上、数億人のユーザーが利用
機能 ・テンプレート機能
・リマインド機能
・APIによるシステム連携
・350以上の外部サービスとの連携
など。
費用

・月額費用 10ドル/人〜

※無料プラン有り
・1名のみ利用可
・3件まで送信可

おすすめの企業 海外の企業との契約が多い企業
公式URL https://www.docusign.jp/

 非常に便利な電子契約サービスですが、注意点もあります。主な注意点を3つ挙げます。

 「そもそも電子署名が法律的に有効なのか」という疑問をお持ちの方もいるかと思いますが、電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)にて認められています。

 ただし、すべての契約が電子契約にできるわけではありません。例えば、​​定期借地契約は、借地借家法にて、書面での契約が定められています。

 業法等で確認の上、電子契約への切り替えを行うようにしましょう。

 従業員との契約であれば、自社の都合で電子契約に切り替えられますが、取引先との契約を電子契約に切り替えるには、取引先の承諾が必要になります。

 企業によっては、社内規程の都合により、電子契約が認められていない場合もあります。

 せっかく電子契約サービスを導入しても、取引先が軒並み電子契約不可となると、メリットを享受できません。あらかじめ、電子契約に対応可能か、取引先へ確認しておくのが良いでしょう。

 多数ある電子契約サービスの導入を検討する際、つい自社の都合ばかり考えがちです。取引先が、それぞれ異なる電子契約サービスを導入した場合のことを想定しておきましょう。

 たとえば、異なる電子契約サービスを導入した企業と契約する際は、どうするのか。先方の電子契約サービス上で電子署名したデータは、そのまま先方のサービス上に保管しておくのか。それとも、ダウンロードして自社の電子契約サービスへアップロードのか。

 このあたりを決めておくと、スムーズに運用できます。

 コロナ禍での在宅勤務推奨のため、電子契約サービスに注目している方も多いのではないでしょうか。

 電子契約サービス市場の、2020年度の売上金額は前年度比72.7%増、2021年度も同75.0%増の予測がされています。(ITR Market View:ECサイト構築/CMS/SMS送信サービス/CLM/電子契約サービス市場2021

 このことからも、注目度が高いことが分かります。

 一方で、どうすれば導入できるのか、分からない方も多いと思います。

 最初の一歩のおすすめは、本記事で紹介した「クラウドサイン」の無料アカウントを作成することです。

 クラウドサインは、無料アカウントでも、秘密保持契約書や業務委託基本契約書などのテンプレートを利用することができます。

 試しに1つ選んで、電子署名の手続きを進めてみてください。簡単にできることが実感できると思います。

 それから、他のサービスの無料トライアルに申し込んで、比較するのがおすすめです。

 先日、養命酒製造が電子契約サービスを導入する旨をPR TIMESへ掲載しました。

 まだ電子契約サービスをあまり導入していない業界の場合、導入するだけで他社よりもデジタル化を推進しているアピールができ、差別化につながります。

 私自身、契約締結とは、面倒で時間がかかるのが当たり前と思っていました。それが、電子契約を体験して、今までどれだけ無駄な時間と費用がかかっていたのかと気付かされました。

 ぜひチャレンジしてみてください。