目次

  1. 生産管理システムとは
  2. 生産管理システムを選ぶときのポイント
    1. 導入形態を選ぶ
    2. 自社の業種や生産方法で選ぶ
    3. 導入対象業務を明確にする
  3. おすすめの生産管理システム3選
    1. クラウド型生産管理システム「生産革新 Wun-jin」(雲神)
    2. 個別受注生産形態向け生産管理システム EXPLANNER/J
    3. SAPグローバルサプライチェーン管理(SCM)
  4. 生産管理システム導入でありがちな失敗と対策
    1. システム導入費用が計画より膨れ上がる
    2. 現状の業務プロセスや管理手法を変えられない
    3. 現場からの抵抗がある
  5. 生産管理システムをエクセルで自作するときの注意点
    1. 手作業のため正確性が担保されない
    2. リアルタイムの管理ができない
    3. 属人化のリスクが高い
  6. 生産管理システム導入のポイント

 生産管理とは、主に製造業においてQCDを改善することを目的としています。

 その対象とする業務は、需要や受注の把握、生産計画、材料の調達、人・設備の管理、在庫管理、原価計算など多岐にわたります。

 また、情報の種類、流通量も膨大なものとなり、システムでなければ正確性や即時性は担保されません。

 生産管理システムは、生産管理に必要な材料・仕掛品など「モノの流れ」と数量・日時・金額など情報の流れを業務プロセスに沿って工場全体で管理するシステムです。

 生産管理の目的であるQCDの改善を実現する手段として、モノ・情報の流れを管理し、生産に係る業務フローを最適化します。

 具体的には次のようなメリットがあります。

  • 人手を介するよりも業務の正確性や情報のリアル性が担保される
  • 紙による情報の受け渡しでなくデータのやり取りなので抜け漏れが無くなる
  • 関連する業務のデータが相互に活用できるため業務効率化につながる
  • 蓄積されたデータを活用することによるシミュレーションなどが簡単にできる
  • アラート機能を活用することで適正購買や適正在庫を維持できる

 製造業にも業種や企業規模が色々あります。今は業種や企業規模に特化するなど、様々な製造業のニーズに合うような機能がある生産管理システムが提供されています。

 QCDの改善という目的を達成するためには、自社に最適なシステムを選択することが重要です。選択のポイントには次のようなものがあります。

 システムを導入する場合には二つの方法があります。

 一つはIT会社から提供されるシステムを導入する方法、もう一つはその事業者固有の要件や機能をIT会社に開発委託する方法です。

 IT会社から提供されるシステムを導入する方法は、標準的なビジネスモデルを導入したい企業や、短期間・低コストでシステム導入を行いたいという企業に適しています。なお、提供されるシステムは、クラウド型、業務パッケージ、ERPなどがあります。

 事業者固有の要件や機能をIT会社に開発委託する方法は、生産活動に関連する業務に他社には見られない強みや業務プロセスを持つ企業や、既にシステムを保有し全面的に刷新することが運用面で大きなリスクがある企業に適しています。

 導入形態は、導入費用や期間や自社システム部門の有無などを考慮して、選ぶ必要があります。

 製造業には、組み立て型やプロセス型、受注生産や見込み生産、少品種大量生産や多品種少量生産など色々な形態があります。

 生産管理の仕方もそれぞれポイントとするところが違います。

 最近では、生産管理システムも業種や生産方法に対応したものが増えています。業種や生産形態によって最適な機能は異なるため、システムを選ぶときには前提事項のずれが無いようにすることが大切です。

 それなりの規模の会社であれば、生産管理システムは導入されていることでしょう。

 特に、原価計算システムや購買管理システムなどは数値に関連する業務のためシステム化が早かったと思います。

 そういった会社は、システム導入の目的が、工場全体のシステム再構築なのか、業務や部門単位のシステム化なのかをはっきりさせる必要があります。

 それにより、導入費用や時間は大きく変わってきます。

 導入コストの削減や短期化を目指して、最近では開発委託よりも、IT企業が提供するITサービスを利用する選択が多くなっています。

 IT会社が提供するシステムには、クラウド型、業務パッケージ型、ERP型があります。

 大塚商会が提供する「生産革新 Wun-jin」(雲神)は、クラウド型システムです。

 クラウド型システムとはIT会社が提供するITサービスを課金方式で使用する方法で、初期投資が不要ですぐに導入できるメリットがあります。

システム名 クラウド型生産管理システム「生産革新 Wun-jin」(雲神)
提供会社 大塚商会
特徴 多品種小ロット生産に必要な機能だけを凝縮
初期費用を抑え、すぐに始められるクラウド月額利用
簡単に使える製販一体型のオールインワンパッケージ
注意点 少品種大量生産や見込み生産には不向き
「所要量計算・MRP」など複雑な機能は非搭載
おすすめの企業 年商500億未満企業
費用 月額3.5万円から
公式URL https://www.otsuka-shokai.co.jp/erpnavi/product/wun-jin/

 個別受注生産形態向け生産管理システム EXPLANNER/Jは、NEC 産業ソリューション事業部が提供する業務パッケージです。

 業務パッケージとは、生産管理や販売管理など業務に必要な機能を1つにまとめてパッケージングしたシステムです。

 実装されているビジネスモデルを利用することが基本ですが、自社仕様に合わせたカスタマイズも可能です。

システム名 個別受注生産形態向け生産管理システム EXPLANNER/J
提供会社 NEC 産業ソリューション事業部
特徴 ジネスモデルに適合したシステムを短期間で構築できる
複数の事業形態に対応できるハイブリッド方式
注意点 一定の初期投資が必要
カスタマイズが多いとコストの増加や導入期間の長期化を招く
おすすめの企業 中小、中堅、大企業まで幅広い製造業
費用 問い合わせ
公式URL https://premium.ipros.jp/nec_explanner/product/detail/287507001/

 SAP生産管理(SCM)は、SAP ERPの機能です。ERPとは、販売管理、生産管理、人事・経理など会社全体の業務を支援するシステムです。

 一般的には、SAPの各パートナー企業が提供するテンプレート(特定の業種や業務プロセス向けに事前に用意したもの)により導入されます。

システム名 SAPグローバルサプライチェーン管理(SCM)
提供会社 SAP社(SAP社パートナー企業)
特徴 導入実績NO1のグローバルスタンダードERP
会社の全業務をシームレスにシステム化できる
注意点 一般に高額の初期投資や運用コストが必要
既存業務を見直す業務改革と併せて導入する必要がある
おすすめの企業 比較的規模が大きい製造業
海外展開を進める企業
費用 問い合わせ
公式URL https://www.sap.com/products/supply-chain-management.html

 生産管理システムに限らず、システム導入は必ずしも成功するとは限りません。システム導入を途中でギブアップし、IT会社とトラブルになるケースも見受けられます。

 システム導入でありがちな失敗とその対策は、次の通りです。

 私の経験からすると、システム導入費用が予算を超過することが多いです。

 しかも途中で膨れ上がった予想コストを、機能や対象業務を狭めて予算に近づけるケースが多いです。

 原因は、見積もり時の仕様や要件が甘いこと。また、システムの機能などが具体的にわかるようになるとユーザー側からの追加要望が増えることが一因です。

 したがって、次のような対策が有効となります。

(解決策)
 ・システム仕様書に、対象とする業務や開発する機能一覧を明記し、システム完成の定義を明確化しておくこと
 ・途中で費用の実績と予想総コストを計測し、早めに対策を講じること

 システム導入は、事業者の設計・仕様による個別開発(スクラッチ)と標準パッケージの二つに分けられます。

 最近では、標準パッケージ(ノンカスタマイズ)での導入、運用が多くみられるようになっています。

 ところが、導入途中にカスタマイズが増加し、限りなく個別開発システムとなってしまうことも少なくありません。結果として導入コストの増加や長期化を招くことになります。

 解決策としては、次のような手立てがあげられるでしょう。

(解決策)
 ・責任者やリーダーは導入目的や効果を繰り返しメンバーに問いかける
 ・今の業務を止めたり変えたりすることは何が困るのかをはっきりさせ、カスタマイズは最小限にする

 社長や工場長などトップ肝いりの導入プロジェクト。しかし、現場の抵抗を受けてシステム導入が遅々として進まないことも良くある失敗例です。

 特に、職人などの長年の知恵や工夫がなされてきた工場は抵抗も大きくなります。

 慣れ親しんだ業務の進め方を変えることを嫌がるのは日本人の性分。

 ジョブホッピングの多い海外では、現場の意見はほとんど聞かずシステム導入を進めるのですが、日本においては大きな壁となっています。

 次のような解決策を参考にしてみてください。

(解決策)
 ・導入目的や効果を上司、リーダーから社員に説明し腹落ちしてもらう
 ・組織やチーム単位の体制とし、現場のキーパーソンに一定のポジションを任せる

 会社の規模が小さかったり、システム間のデータを編集したりするために、エクセルやアクセスを使用して運用している会社は少なくありません。

 しかし、エクセルなどでの運用では思わぬ落とし穴があります。

 例えば、商品注文の情報を電話やFAX、メールなどで受け取ったとき、エクセルの場合は手作業で入力しなければならないので入力漏れ、金額入力のミスが発生しやすくなります。

 生産管理のデータは複数の業務で使われるため、入力後の読み合わせなど正確性を担保する業務が必要となります。

 システムを使うと入庫・出庫業務を行ったときに入出庫データを作成することができ、リアルタイムでデータの更新・処理ができます。

 エクセルでは業務と同期をとったデータの更新、処理が難しくなります。リアルタイムで経営情報を取得できないと正しい経営判断ができなくなります。

 エクセルでシステムを作るとなると、マクロや関数が得意な社員が作ることが多いです。

 作り方にも個性があるため、プログラムの変更などを行うためには、作成した人の協力が必要です。

 しかし、会社員には異動や退社はつきもの。そのような事態になった場合、エクセル自体がブラックボックス化して誰も手を出せない状況になる可能性があります。

 本記事でのポイントをまとめます。

  • QCDの改善という目的を実現するためには生産管理システムの導入は不可欠
  • 生産管理システムは自社の業種、生産形態や規模に対応したものを選ぶ
  • 生産管理システム導入は失敗のリスクもあるため解決策を検討しておく
  • エクセルでのシステムは正確性や即時性が担保されないリスクがある

 生産管理システム導入はQCD改善の肝。自社の業種や生産形態に対応したシステムを選択し、失敗のリスクの無いよう充分注意しましょう。