生産管理とは?定義や目的、メリット、主要業務、課題を詳しく解説
生産管理とは、主に製造業おいて計画から出荷までの生産活動全体を統制するフレームワークです。その目的は、需要と生産の最適化を図り、QCD(Q:品質 C:コスト D:納期)を改善することにあります。この記事では、生産管理について、基本的な事項や導入メリット・課題を紹介しています。
生産管理とは、主に製造業おいて計画から出荷までの生産活動全体を統制するフレームワークです。その目的は、需要と生産の最適化を図り、QCD(Q:品質 C:コスト D:納期)を改善することにあります。この記事では、生産管理について、基本的な事項や導入メリット・課題を紹介しています。
目次
生産管理とは、主に製造業おいて、計画から出荷までの生産活動全体を統制するフレームワークです。
製造業でもグローバルでの競争は厳しくなっています。比較的品質面で優位であった日本企業も中国などの追い上げを受けており、一部の市場では優位性を失っています。
こうした状況の中で求められているのが、優れた生産管理の仕組みの構築です。
生産管理の目的は、自社の視点では、需要と生産の最適化を図り、QCD(Q:品質 C:コスト D:納期)の改善することです。
品質はお客様目線で考えることが重要です。
自社が提供する製品の品質がお客様から受け入れられるものでないと、お客様の支持を受けることができず、市場から撤退する羽目になる可能性があります。
そのため、QCDのなかでもQ(品質)は、もっとも優先する事項といえます。
お客様にとっての関心は取引価格であり、その製品のコストがいくらであるかについての興味はありません。
しかし、製造コストが高止まりしていると充分な利益が確保できず、商品開発や量産化に制約が生じることになります。
また、ライバル会社が価格の引き下げを行った場合にうまく対応でできず、市場を失う可能性があります。
そのため、継続的なコストダウンは製造業にとって重要な取り組みとなります。
納期とは、お客様と約束した数量を約束した日までに届けることをいいます。数量の過不足が有ったり、納期遅延があるとお客様の信頼を失ったりしかねません。
また、お客様の販売や製造活動に大きな支障が生じる可能性もあり、品質に次いで重要視する必要があります。
適切な生産管理を導入すると、顧客満足度の向上や生産性の向上が期待できます。
生産管理の目的であるQ(品質)とD(納期)を改善することで、お客様の満足度は向上します。
筆者も経験がありますが、実際の取引では不良品の返品や納期のリスケの依頼などは良くある話です。
約束した品質の製品を、約束した数量で、約束した納期までに提供できる管理体制を築き上げることができると、お客様の満足度が向上し、自社のポジションも良くなります。
適切な生産管理は効率化とコスト削減に確実につながります。
例えば、現場の担当者任せだった仕入れ基準をルール化することで、材料費などの削減が実現できます。
生産計画による残業や休日出勤などの労務費の削減、在庫管理による不良在庫の削減など様々な業務で効率化とコスト削減が期待できます。
生産管理は工場で働く人の協力がないと実現しません。
生産管理の導入に向け、現状の問題点のヒアリングを行ったり、改善提案を促したりすることは社員の貢献意欲をアップさせます。
また、生産目標や納期目標を設定することは、日々の製造活動の動機づけとなり、社員のモチベーションアップが実現します。
では、具体的に生産管理を行うためには、何をすればいいのでしょうか?
生産管理に関連する主な業務には、生産計画・購買管理・工程管理・在庫管理・原価管理があります。
これらの業務について、QCD改善の視点から、適切に取り組むのが生産管理といえるでしょう。
業務 | 内容 |
---|---|
生産計画 | 生産計画とは需要に基づき「どの製品を、いつ、どれだけ、いつまでに生産するのか」を計画すること |
購買管理 | 購買管理とは購買管理の5原則に基づいて購買・調達業務を適切に管理すること |
工程管理 | 工程管理とは、製造する作業を分類化・体系化した工程を、効率的な方法で計画・運営すること |
在庫管理 | 在庫管理とは、材料や製品などを、必要な量、必要な場所、必要な時に供給できるように適切に管理すること |
原価管理 | 原価管理とは、製造するために必要なコストを分類・評価して目標の設定や実績との比較、分析・対策立案などを行い、利益を改善すること |
なお、組み立て系、プロセス系など業種や企業規模によって、取り組むべき業務は異なります。
それぞれの業務について、順に詳しくご説明します。
生産計画とは需要に基づき「どの製品を、いつ、どれだけ、いつまでに生産するのか」を計画することです。
具体的には、需要や受注状況の把握、製品の種類・数量・時期、製造に必要な原材料や部品の調達、製造での機械や人員の投入計画などを行います。
計画は、業種や規模により、年間、四半期、月、週、日の単位で作成されます。
生産計画の立て方には、PUSH型とPULL型の二通りの方法があります。
PUSH型は、上流の作業工程から後続の作業工程に資材の調達や開始時期などの情報を通知・指示する方法です。主に見込み生産の場合に採用されます。
一方受注生産の場合は、PULL型の生産計画が採用されます。PULL型では、下流側が上流側に、資材の調達や開始時期などを通知指示する方法です。
購買管理とは購買管理の5原則に基づいて購買・超隊業務を適切に管理することです。
購買管理の5原則は、
①適切な取引先の選定
②適正な品質の確保
③適正な数量の設定、確保
④適正な納期の設定、確保
⑤適正な価格の決定、履行
を指します。
自社で製造に必要な資源を確保することは実質的に不可能で、材料や部品などは他社に委託して提供してもらうことが一般的です。
会社の基準とするQCDを実現できる取引先を選定し、関係性を強化することが重要です。自動車メーカーの‘ケイレツ’(素材メーカーや部品メーカーなどと自動車メーカーが特定的に長期的に連携すること)が代表的な事例です。
工程管理とは、製造する作業を分類化・体系化した工程を、効率的な方法で計画・運営することです。
製品を生産するためには、設備、労働力、及び原材料(仕掛品を含む)などの資源が必要です。そして生産する順序や要する時間などが重要です。
工程管理とは、設備・労働力・原料(仕掛品含む)などの資源や生産の順序、時間などを管理することで効率的な生産ができるようにすることを目的としています。
在庫管理とは、材料や製品などを、必要な量、必要な場所、必要な時に供給できるように適切に管理することです。
在庫が多ければ売れ残りのリスクが高く不健全資産になり、収益性を圧迫します。また、在庫が少ないと売れ筋商品の販売機会を失うことになり、売上の減少につながります。
在庫の保有高、入荷・出荷予定高など情報の整備の他、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の徹底など運用面での改善も必要となります。
原価管理とは、製造するために必要なコストを分類・評価して目標の設定や実績との比較、分析・対策立案などを行い、利益を改善することです。
一般に製造業の製造原価の構成要素は、原材料、外注費、労務費、減価償却費、その他の経費に区分されます。
このうち、原材料と外注費が生産量で変動する変動費、それ以外が生産量に関係なく発生する固定費になります。
原価管理の手法は色々ありますが、標準原価を設定し、実績原価と比較して差異の要因を分析し、改善策の立案・実行する手法が多くの企業で採用されています。
きちんとした導入ができれば、QCDの改善などメリットの多い生産管理ですが、実施に向けては色々な課題が生じます。主な課題と対応策は次の通りです。
生産管理システムは生産に関連する業務を取り扱いますので、その情報量は広範囲・莫大になります。
小規模な事業者であるなら別ですが、エクセルなどマニュアル管理はリアルタイム性や活用可能性に問題があります。
そのため、生産管理実施には生産管理システムが不可欠なツールとなります。
(システム導入を成功するためのポイント)
・対象となる業務や業務課題をはっきりさせる
・投資予算ありきではなく費用対効果の検証が必要
・自社のIT部門や社員のITリテラシーを考慮する
・QC活動など現場を巻き込んだ業務改善活動と連携する
良くあるケースとして、生産管理システム会社のコンサルタント主導で導入が進むと、上手くいかないことがあります。
システムは業種によって標準的なモデルがありますが、自社の現状とのギャップ分析をしないと導入後に現場が回らない可能性が高くなります。
実務者レベルでないと知り得ない重要な業務課題や、その会社の絶対的な強みが潜んでいることは良くあることです。
解決策としては、生産に関連する業務プロセスや課題、社員の意識やスキルなどを、できるだけ詳細かつ具体的に見える化することがあげられます。
筆者は、製造現場の業務改善支援などを行った経験もあります。生産管理の導入は、社員一人一人の仕事の仕方を大きく変えます。
そのため、一番ネックとなるのは、職種を問わずベテラン社員になります。
自分の仕事にプライドはあるのは良いのですが、業務の変更に素直に納得してもらえるケースは多くありません。
解決策としては、組織やチームで導入に取り組むことです。
導入効果や目的を関連する業務チーム単位で共有することで、自分の立場だけでなく全体の視点で考えてもらえるようになります。
本記事でご紹介した生産管理のポイントは、以下のとおりです。
生産管理実施による影響は一部門にとどまらず工場全体に及びます。
重要課題がある業務を優先するのは当然ですが、個別最適・全体最適の両ポイントを押さえた実施が必要となります。
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