目次

  1. ビジネスを学ぼうとリクルートへ
  2. 「継がなくていい」と言われても
  3. たんす一本足からの脱却
  4. 伝統技能を生かした家具
  5. 仙台簞笥を海外へ
  6. 海外の売り上げが8割に
  7. 5年をかけた事業承継
  8. コロナ禍で進めた選択と集中
  9. 伝統工芸品の海外進出を支援
  10. 産地の枠を超えた技能継承

 仙台簞笥は、伊達政宗公が仙台藩を治めていた時代に、城で建具の一部として使われていたとされています。漆の塗りや磨きを重ねる「木地呂塗」の技法は、30ほどの工程があり、顔が映るほど磨き上げるのが特徴です。

 前板には仙台の市木でもあるケヤキが使われ、縁起物や家紋がモチーフの金具がついた、美しいたんすです。

 門間簞笥店は1872年の創業で、仙台簞笥の伝統を代々受け継いできました。7代目の門間さんも、幼い頃から家業を継ぐのが当たり前と思っていました。「工房にも出入りして、職人が常に身近なところにいました」

大正時代の門間簞笥店(同社提供)

 それでも、家業を継ぐ前にビジネススキルを高めたいと、早稲田大学卒業後の2001年、リクルートに入社。人材関係の部署で、中小企業と新卒学生とのマッチングを行う新規事業などを担当した後、ブライダル系の部署でインテリア家具関連の広告を扱いました。

 キャリアを積み、退職準備を始めた矢先の11年、東日本大震災が発生しました。

 登録有形文化財にも指定されている工房と店舗の入る本社の古民家が、大規模半壊の被害を受け、どちらも復旧に数カ月を要しました。「その間売り上げも全てストップしたので、影響はかなり大きかったです」

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