目次

  1. コスメ・ファッション一家だった加福家
  2. 父の代わりに支払い作業
  3. 父から事業承継 社員5人から告げられた退職
  4. M&A、会社を任された理由は「価値観」
  5. 「販売員の地位高めたい」
  6. 社員のキャリア広げるグループ化
  7. 「創業者を超えたい」気負い消えた

 加福真介さんが最初に事業を承継したのは30歳になった2008年5月。父である加福圭介さんが起業したアイ・ディ・アクセス(現iDA、東京都渋谷区)に入社して約5年がたった頃でした。

 父は元外資系化粧品会社の営業、母は元化粧品会社の販売員、姉とその夫は繊維メーカー勤務と、コスメ業界やファッション業界の経験者に囲まれて育った真介さん。

 大学3年の時に父・圭介さんが立ち上げたアイ・ディ・アクセスは当時日本に上陸して話題になっていたコスメショップ「SEPHORA(セフォラ)」の店舗運営を担っており、事業は順調に成長していました。といっても当時の真介さんは父の会社を継ごうという意思はなく、「家族とは違う道に進みたい」と、大学卒業後は大塚商会に入社しました。

父・圭介さん(左)と。会社員時代から父は人望が厚く、独立時にも多くの人に支えられていると知ったのはアイ・ディ・アクセスに入社した後だった

 しかし25歳の時に父・圭介さんが病気で倒れます。「社会人として仕事が面白くなってきた時期でしたが、ICUに駆けつけた私に、父が自分の代わりに会社の支払い作業をしてくれ、というので驚きました。すでに経理担当もいたのですが、聞けば資金や貸金庫は全て自分一人で管理しているとのこと。後で知ったのですが、知人の経営者が従業員に会社のお金を持ち逃げされたことがあり、創業間もない当時は社員にお金のことを任せられなかったようです」と、真介さんは苦笑いしながら打ち明けます。

 親子の距離は、子供の頃から決して近くはなかったそうです。仕事が多忙で出張が多く、「休みの日にキャッチボールをしてくれる友達のお父さんがうらやましかった」と真介さん。

 父の会社に入っても急に距離が縮まったわけではなく、いきなり東京へと飛ばされたり、他の社員の前で厳しく叱責されたり。「今なら息子をひいきしたくなかったのだとわかりますが、当時は結構こたえましたね」(真介さん)。

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