目次

  1. 高級車の内装加工を手がける
  2. トラック運転を死ぬ気で練習
  3. 大型案件を機に意識が変わる
  4. 不良率を激減させた組織改革
  5. 自社ブランドの必要性を痛感
  6. 未知だったマスク製造に挑む
  7. 蒸着加工をマスク製造に生かす
  8. 抗ウイルス作用の裏付けが奏功
  9. 後継ぎとして描く二つのビジョン

 やまと真空工業は1971年に創業し、現社長の岩本三生さんが一代で五十数人規模の工場に育てました。現在は自動車メーカーの3次下請けの仕事が主力で、自動車内装部品の「蒸着加工」が、年間売り上げの約65%を占めます。

 蒸着加工はミクロ単位の金属膜を作る技術です。わずかな不純物が不良の原因となる繊細なものですが、同社は真空状態を利用した高品質の蒸着技術が強みです。

 トヨタ自動車「レクサス」の内装部品加工など、高価格帯の商品に欠かせない美観を技術力で支えてきました。

 現社長の次男で、専務を務める策三さん(42)は「私が入社した2002年ごろまでは、蒸着加工による手鏡の下請け製造が主力でした。ガラスにアルミを蒸着させて鏡を作っていました」と話します。

 策三さんは大学卒業後、アパレル企業に勤め、店舗管理から接客販売まで幅広く担当しました。しかし、家業を継ぐ予定だった兄が体調を崩し、実家に呼び戻されたのです。

 「それまで、後を継げとは一切言われていません。キリの良いところでアパレル業界に戻るつもりでした」

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