これって取材商法?怪しいと中小企業を悩ませる手口 後から掲載料請求も
中小企業に対し、Webメディア掲載のためのインタビューを持ちかけて取材後に掲載料などを請求するといった「取材商法」が後を絶ちません。どんな手法なのか、中小企業で広報担当を務める後継ぎが「これは取材商法ではないか」と感じた事例をもとに紹介します。
中小企業に対し、Webメディア掲載のためのインタビューを持ちかけて取材後に掲載料などを請求するといった「取材商法」が後を絶ちません。どんな手法なのか、中小企業で広報担当を務める後継ぎが「これは取材商法ではないか」と感じた事例をもとに紹介します。
ある中小企業の問い合わせフォームに、取材依頼のメールが寄せられたのは2021年の夏ごろのことでした。広報担当を務める後継ぎへの取材によると、次のような趣旨のメールだったそうです。
突然のご連絡を失礼します。 株式会社○○の△△と申します。
弊社は「■■■」(https://■■■.com/magazine)という経営者向けのWebメディアを運営しており、貴社のウェブサイトを拝見し、是非とも取材させて頂けないかと考え、ご連絡を差し上げました。
取材に際して何らかの料金を頂戴するようなものではございません。
当メディアは、著名経営者から新進気鋭の経営者まで、様々な業界のトップリーダーたちを取材し、事業そのものや事業に込めた思い、今後のビジョンなど、ビジネスパーソンに役立つ情報を日々発信しています。 まずは下記連絡先までご一報頂けますと幸いです。
広報担当者は記載されていたWebメディアを調べたところ、ほかのメディアにもよく登場する経営者たちが掲載されているのを確認。「ちゃんとしたメディアだ」という印象を持ったといいます。
SaaS系サービスを主体としながらも、経営者向けメディアを運営し、とくに不信感を抱く点はなかったため、取材を依頼することにしました。取材はオンラインでスムーズに進みましたが、1カ月半が過ぎても一切連絡がありません。違和感を抱いた後継ぎが電話で問い合わせると次のような回答がありました。
「お伝えしていませんでしたでしょうか?『掲載』は有料です」
広報担当者は、詳細を尋ねることなく、そこで断ったといいます。この広報担当者は「実際に有名な経営者も掲載されており、メディア自体もきちんとしたつくりで、当初の依頼には『取材費用は発生しない』とありました。怪しいとはなかなか気づけませんでした」と振り返ります。
この広報担当者、実はもう1件同時期に取材依頼を受けていました。同じように問い合わせフォームから届いた「取材依頼」でした。取材は無料であると明記され、質問事項を読むと、自社の事業内容についてきちんと事前に調べていると感じていました。
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こちらのWebメディアも著名な経営者が登場しており、Webメディアを運営しているPR会社はマザーズに上場しています。文面からも会社の体制からも大丈夫だろうと感じたそうです。
そこで、しばらく経ってから電話で取材を受ける旨を伝えましたが、電話に対応したPR会社の担当から返ってきた答えは「どちらの会社でしたでしょうか?」。広報担当者は「今、振り返れば、このとき、おかしいなと感じたのですが……」と話します。
ただし、このときはそのまま進めることにしました。すると、インタビュー後に30分営業することを条件に取材したいと伝えられ、受け入れました。
インタビューは社長に対し、なぜこの仕事をしているのか、事業へのこだわり、若者へのメッセージなどについて質問があり、インタビュー後に営業が始まりました。
その説明によれば、メディアへの企画会議でこの中小企業を提案し、提案が通ればその報酬として100万円以上いただきたいとのことでした。
広報担当者は取材を受けたこともあり、その場は「前向きに検討させていただきます」とだけ答えました。
その後、いくら待っても原稿の確認連絡が届かず、問い合わせても「まだ執筆中」との返事。広報担当者は「SaaS系サービスの会社による前回のインタビューが掲載されず、取締役から怒られているので、今回は何とか掲載してほしいのですが……」と話しています。
複数の中小企業に尋ねたところ、ほかの企業でも「取材」と称して連絡しておきながら、後から費用請求するという取材商法と疑われる手口を持ちかけられた経験のあることがわかりました。たとえば、次のような事例がありました。
これまでにWebメディアに掲載された事例をみると、取材商法と疑われる営業手法に対し「一般社会通念上、相手方を錯誤に陥らせて財物ないし財産上の利益の処分させるような行為をすること」(刑法246条)という詐欺罪に当てはまると認められるのは難しいのが現状です。
また、中小企業は消費者を守るための法律の対象にはなりませんので、契約後に支払い義務から免れることも難しそうです。
冒頭で紹介した事例のように、Webメディアも見た目良く作り込んでおり、運営会社も自社サイトを持っているため、取材商法かどうかを見抜くことは難しくなっています。
取材後に意図しない費用を請求されることのないよう、広報担当者は疑問点があれば、取材前にきちんと確認しておくことをおすすめします。
ツギノジダイでも取材でつくる編集記事と広告記事があります。編集記事の取材や掲載で費用を請求することはありません。
一方で、PR表記などのついた広告記事をつくるときは、普段取材をしている編集部とは別のチームに委託し、編集と広告には垣根を設けています。記事の中身については、クライアント企業と打ち合わせながら方針を決めていきます。また、広告記事は、日本インタラクティブ広告協会(JIAA)のガイドラインにもとづいて、記事中に「PR」「AD」などと明記します。
ただ、いまはどんな会社もWebメディアを立ち上げられる時代ですので、すべてのメディアがこうしたルール通りに運用しているわけではないのが実情です。
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