目次

  1. 年末調整は何のため?
  2. 年末調整で所得税が戻ってくる?
  3. 大学生の時の国民年金保険料を追納すると税金が安くなる!

11月に入り、勤務先から「年末調整」の書類の記入を求められた、という会社員の方が多いと思います。最近は、オンラインでできる企業も増えているようですね。

会社員にとって11月の社内行事とも言える「年末調整」ですが、「何のための書類だろう」とよくわからないまま提出している人もいるはず。

そもそも「年末調整」とは何なのでしょうか。

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ひと言でいうなら、12月に行う「所得税の過不足調整」です。毎月の給料やボーナスから天引きされている所得税は、実は「仮の額」なのです。

税金は1月1日から12月31日までの所得で決まります。このため、12月末までに「個人の事情」を考慮して、正しい所得税を計算しなくてはいけない。これが年末調整です。

給料とボーナスからは、少しずつ多めに天引きしているので、年末調整で支払いすぎた所得税が戻ってくるケースがほとんどです。12月の給与振込額が、いつもより多いのは、年末調整がされているからなんです。

 

では「個人の事情」とは、どのような事情が考えられるでしょうか。

まず、税金を計算する上で知っておきたいのは「所得控除」という言葉です。

控除とは、ある金額から一定の金額を引くという意味。所得税や住民税という税金は、収入のみで税率が決まるわけではありません。

収入から、さまざまな金額差し引いた残りの金額、つまり収入から所得控除した金額に、定められた所得税率や住民税率が掛けられて、税金の金額が決まります。

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したがって、控除される金額(所得控除)が多いほど税金が安くなるのですが、基礎控除のように全員が使えるものもあれば、人によって使える控除、使えない控除もあります。

ですから、年末調整で「個人の事情」を考慮して、所得税額を確定するのです。

年末調整のときに考慮する所得控除は、おもに表のようなものがあります。

年末調整で受けられる「個人の事情」によるおもな所得控除(※控除を受けるには他にもある各種要件を満たす必要がある)=深田晶恵、bizble編集部作成

表に当てはまると、年末調整の所得税計算に反映されますので、税金の戻りが増えます(つまり、節税効果あり)。

読者のみなさんの中には「独身で、住宅ローンもなく、保険にも入っていない、iDeCo(個人型確定拠出年金)もやっていない場合は、年末調整で税金が戻ってくることはないのでしょうか」と感じる方が多いかもしれません。

 

つまり、上記の「個人の事情の所得控除」が何もない、というケースですね。

でも、ご安心ください。前述のように、所得税は毎月の収入やボーナスから少しずつ多めに天引きされているので、「個人の事情の所得控除」がなくても、年末調整で税金が戻ってきます。

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たとえば、額面月給が25万円で、ボーナス2か月分が年2回支給されるケースだと、「個人の事情の所得控除」がなかったとしても、年末調整で5万円弱が戻ります。うれしいですね!

12月または1月の給与に年末調整による戻り分が上乗せされて振り込まれます。

 

多くの場合、年末調整で所得税が戻ってきますが、年収に占めるボーナスの割合が高いなど、会社の給与の仕組みによっては、12月(または1月)の給与から「追加で納税」の年末調整のケースもあります。

これに該当すると、12月(または1月)の給与から追加で所得税が引かれることになります。これはちょっと悲しいですね。

「年末調整での所得税の戻りを増やすために保険に加入したほうがいいのでしょうか」と質問を受けることがたびたびあります。私の答えは「ノー」です。

節税になるとはいっても、支払う保険料以上に税金が戻ってくるわけではありません。生命保険や医療保険は、保障が必要になったときに入るものと覚えておきましょう。

保障が必要になるときとは、死亡保障型の生命保険であれば扶養する家族ができたとき。医療保険であれば、加入している健康保険の保障内容を確認し、貯蓄と照らし合わせて、保障が足りていないと思ったときに入るべきです。

 

また、iDeCo(個人型確定拠出年金)は、60歳以降に使えるお金を増やすための制度です。貯蓄をしながら節税ができるので、こちらはお勧めです。自分の掛け金の限度額を調べて、その金額の範囲内で掛け金を出し続けることができそうなら、iDeCoをはじめることを検討するといいでしょう。

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大学時代に国民年金保険料の「学生納付特例制度」を利用した人は多いでしょう。社会人になって保険料を追納したなら、その保険料は社会保険料控除の対象になります。

保険料を追納すると、11月初旬に日本年金機構から「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」が郵送されますので、年末調整の際、勤務先に提出して控除を受けましょう。

追納すると、将来の年金額が増えるだけでなく、所得税の戻りを受けることができますし、さらに翌年の住民税も安くなります。学生時代の保険料を納めると、節税につながるって、意外ですね。

 

(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年11月25日に公開した記事を転載しました)