“いつでも・どこでも・簡単に”、お客さまの負担を劇的に軽減した大同生命の「つながる手続」
(最終更新:)
「紙を使わずデジタルで」「場所と時間を選ばずリモートで」 ―――新型コロナウイルス感染症が拡大した影響もあり、世の中の様々なサービスがこのような形に移行しつつあります。そうした中、中小企業向けの生命保険を提供する大同生命では、「企業を対象とした保険加入手続で、完全リモートを実現することがコロナ禍以前からの悲願だった」といいます。果たしてその理由とは……?
(撮影:岩元 崇)
森谷芳隆
もりや・よしたか
1994年大同生命入社。大同生命契約部長。長野TKC企業保険支社長、商品部長を経て、2020年より現職。スポーツと旅と食を愛し、「大同生命サッカー部」の中心メンバーとしても活躍。
中山鉄平
なかやま・てっぺい
1997年大同生命入社。大同生命契約企画課長。コールセンター長を経て2019年より現職。乗馬・登山・キャンプ・鉄道旅行が趣味のアウトドア派。森谷さんと同じサッカー部に所属。
松岡慶子
まつおか・けいこ
2007年大同生命入社。大同生命契約企画課スタッフ。兵庫TKC企業保険支社のスタッフとして代理店営業を担当し、2020年より現職。二児の母として育児と仕事を両立しつつ、社内の「新たな職務(営業担当から事務担当など)へのチャレンジや積極的なキャリア形成を支援する“チャレンジキャリア制度”」を活用し現在の部署へ異動。
コロナ前から進められていたリモート完結型の契約手続
大同生命の「つながる手続」は、お客さま自身のスマートフォンやパソコンなどから「保険加入から保険金・給付金支払」までのすべての保険手続をリモート(非対面)で行う仕組みです。
その第一弾がリリースされたのは、2020年9月。まさにコロナ禍の最中であり、その対策として開発されたようにも見えますが、大同生命では、それよりも以前から構想・開発が進められていたとのこと。同社の中期経営計画に盛り込まれた「『簡単』『便利』『感動』をお届けする業界最高水準の顧客体験」の実現に向けて、「つながる手続」が発案されたといいます。
保険手続がリモートですべて完結すれば、お客さまにとっては非常に便利ですが、大同生命が取扱っているのは中小企業向けの生命保険。企業のリスク対策として生命保険を活用するもので、個人を対象とした一般の生命保険よりも保障額が高額となるケースもあります。そのため、スマートフォンやパソコンなどで保険加入手続を完了させることに、不安を感じるお客さまも多いのではないでしょうか?
「おっしゃる通りです。これまで、当社の営業担当者や代理店が中小企業のお客さまを訪問し、経営者や従業員の方と対面で実施してきた保険加入手続が、本当にリモートで完結できるのか。これは、私たちにとって乗り越えなければならないハードルでした」
そう話すのは、大同生命・契約部長の森谷芳隆さんです。
「どうすればリモートでお客さまが迷うことなくスムーズに手続していただけるか、法的な問題はないのかなど、技術者や専門家も交えて何度も議論を重ねました」
一筋縄ではいかないシステム開発。さらに、「つながる手続」が実現すれば、営業担当者や代理店はこれまでの活動スタイルを大きく変えなくてはなりません。それでも、この「つながる手続」の実現にこだわったのは何故だったのでしょう?
プロジェクトを先導してきた大同生命・契約企画課長の中山鉄平さんにうかがいました。
海外のお客さまもリモートで完結!
「ご自身の生命保険をイメージすると分かりやすいかもしれませんが、個人で生命保険に加入する場合、通常は『契約者・被保険者=ご自身』とされているケースが多いと思います。一方、経営者が法人契約で生命保険に加入する場合、「契約者=企業、被保険者=経営者」となるので、手続きが2段階となります。また、経営者以外に役員や従業員の方を被保険者とするケースもあります。これまでの保険加入手続では、被保険者お一人おひとりに直接お会いして面前で加入手続を実施していましたので、従業員が10人いらっしゃる企業の場合は手続が10回必要となります。企業によっては50人分、100人分となることもあり、これがお客さまにとって非常に大きな負担となっていました」
また、保険加入手続のためだけに従業員が全員集合できる会社は多くありません。例えば、ドライバーが全国にいらっしゃる運送会社で、従業員を一ヵ所に集めることはなかなか難しいでしょう。また、海外駐在のある会社では、従業員が日本にいらっしゃらないケースもあります。従業員の保障を準備したくても、「全員の手続が完了するのに半年かかる」「当面帰国予定がない」となると、いつまでも保障を開始できない状態になってしまいます。もしその間に万が一のことが起こってしまったら……
「これは、何としてでも解決しなければならない課題でした。保障のご提供を通じて中小企業の持続的発展に貢献することが私たち大同生命の使命ですから」
「つながる手続」の第一弾として、2020年9月に「被保険者手続のリモート化」をいち早くリリースしたのは、そのような理由からでした。
そうした中、コロナ禍がさらに深刻化。「感染防止対策としてリモートワークしているので、保険加入のためだけに従業員を出社させたくない」「出社している従業員も外部の人間とできるだけ接触させたくない」といった声が相次ぐように。中には「従業員が日本に帰国できない」という企業もありました。
「保険加入に際して、病院で医師が健康状態を確認(診査)させていただくケースもあります。しかしながら、コロナ禍では、病院に行くことに不安を感じられるお客さまもいらっしゃいました。また、病院側からも保険の診査のためだけに来院してほしくないという声がありました。そこで様々なアイデアを持ち寄って検討した結果、2021年4月から、オンラインで診査が可能な『リモート診査』を導入しました。当社所属の医師が、TV電話(Zoom)越しにお客さまの健康状態を確認する仕組みです。また、専用の検査キットを使って、お客さまご自身で血液検査や尿検査などを行う仕組みも開発しました。これらにより、会社やご自宅にいながら安心かつスムーズに保険加入手続が完了するので、お客さまからも大変ご好評をいただいています」
と中山さんは話します。
「お客さま・営業担当者の声」を改善に活かす
企業向けの生命保険契約で「業界初の完全リモート化」を実現した大同生命。まさに、保険業界の先進的DXとも言えるのが「つながる手続」です。しかし、ここまですべてが順調だったわけではありません。開発に深く携わった大同生命契約企画課の松岡慶子さんにお話をうかがいました。
「試行錯誤を繰り返し、入念に作り込んでサービスを開始したつもりでしたが、当初は“想定外だらけ”でした。例えば、私たちが想定していない特殊な端末をお客さまが利用されていたり、海外の電波環境でスムーズな端末操作ができなかったり……。開発も大変でしたが、リリース後のトラブルを解決するのは、もっと大変でした」
「私たち開発担当者だけで改善点を見つけ出すのは、なかなか難しい。開発する側はどうしても作り手の発想に陥りがちで、お客さまがどういった状況で利用されるのかをイメージするには限界があります。ですから、営業担当者や代理店に対して『まずはつながる手続を使ってみてください』と繰り返しお願いしました。そして、『すぐに改善するので、どんな些細なことでも報告してほしい』とお伝えしました」
契約部に配属される前は、10年以上営業の現場を経験してきた松岡さんも、「私自身、営業を担当していた頃に、本社部門に伝えたい改善要望が色々とありました。でも、要望を伝えたとしても実際に採用されるかどうかわからない。それなら、伝えるだけムダになるので、目の前の仕事に専念しよう……となりがちでした」と打ち明けます。
「でも、なかなか口にしないだけで、営業担当者は普段から色々と感じているのです。みんな、お客さまのことを最優先に考えて活動しているので」
今回は、契約部の開発担当者が「どんどん使ってください」「改善点を教えてください」と積極的に伝えることで、様々な問題点が「見える化」「共有化」されました。大同生命には、誰でも自由に意見を投稿できる社内SNSがありますが、ここに投稿された「つながる手続」に関する意見や要望は、1年で700件にのぼりました。1つのテーマに関する投稿としては、これまで最大の件数です。
開発の中心メンバーだった松岡さんは、社内SNSの投稿に1件1件ていねいに返信してきたそうです。彼女は、現在二人のお子さんの育児をしながら、会社の時短勤務制度を活用されているとか。在宅でのリモートワークが中心で、出社は週1回ほど。通勤が無いことで生まれた時間を有効活用でき、相応の業務をこなしながらも、仕事や育児、プライベートのバランスはしっかり取れているそうです。
「つながる手続」だから大同生命を選んだ
営業担当者と開発担当者のコミュニケーションがスムーズになったことで、より良いサービスをお客さま目線で提供しつづける大同生命。「つながる手続」という名称も、社内の公募で決めたのだとか。
「『つながる手続があるから大同生命に決めました』とお客さまに言っていただいた時は、本当にうれしかったですね。また、代理店の方が“いつでも・どこでも・簡単に”という『つながる手続』のメリットを理解・共感され、積極的に活用されているケースも増えています」と松岡さん。
中山さんも、「およそ半数の方が平日の夜や休日、つまり当社の営業時間外に『つながる手続』を利用されています。従来は日中のお忙しい時間をやりくりしてくださっていたことをあらためて認識し、感謝の気持ちでいっぱいです。この仕組みを作って本当に良かったと思います」と続けます。
通常、システム開発のプロジェクトでは、よほど大きな問題が発生しない限り、一度スタートしたら途中でやり方を変更することは難しいといわれます。「今回の開発にあたっては、従来のやり方にとらわれず、デザイン思考でメンバーの考え方や仕事の進め方などを根本的に変えることからスタートしました」と話す森谷さん。
「今後は、保険加入手続だけでなく、保険金・給付金の請求など、会社としてすべての手続をデジタル化していく方針です」と語ります。
「お客さまが本当に求めている“簡単”とは、ネット通販で買い物をするようなシンプルさだと思います。『つながる手続』で保険加入手続が従来よりもスムーズになったとはいえ、まだまだわかりにくい点があるのも事実。ですので、これからもっともっと“簡単”にしていきたい。極端な話ですが、お客さまが『保険に加入したい!』と思われたら、その場で手続が完了して、すぐに保障が開始される。そんなサービスにするのが理想です」
“いつでも・どこでも・簡単に”というキャッチフレーズは、世の中にたくさん存在しますが、生命保険の世界においては、非常に重みのあるものだった。サービスの開発・提供に奮闘された御三方のお話からは、そのことがひしひしと伝わってきました。