さまざまな外見を持つ架空の人間が、パソコンの画面上に次々にあらわれる。同社のAIが作る高解像度画像「デジタルヒューマン」だ。無限のパターンの人を描くことができる。

データグリッドのAIがつくる高解像度画像「デジタルヒューマン」(同社提供)

 これまでのコンピューターグラフィックス(CG)と比べて手間もお金もかからないため、企業広告のモデルなどとして活用が広がっている。服装を変えるのもお手のもので、スマートフォンで利用者を撮影すれば、店に行かなくても試着イメージを確認できる新サービスも始めた。

 同社の中核技術は、AIが自ら学習するディープラーニングの一種で「敵対的生成ネットワーク(GAN)」と呼ばれるもの。「本物っぽい画像を作ろうとするAI」と「本物か偽物かを判定するAI」の二つを競わせることで、より自然な画像を作製できる仕組みだ。

 「従来のAIは大量の問題集を1人で解いて勉強する自習型。GANは2人で切磋琢磨(せっさたくま)する競争型です」と岡田侑貴社長(28)は説明する。

 最初に学習させるデータが少なくても、高品質な画像を作れるのが強みだ。画家ゴッホの作品を一つだけ学習させてAI同士を競わせれば、ただの風景写真をゴッホ風に描き変えることができる。

AIにゴッホの作品を学習させれば、風景写真をゴッホ風に描き直せるようになる(データグリッド提供)

 同社のAIが生み出す大量のデータを新たな学習材料として活用すれば、従来型AIの質を高めることもできる。

 例えば、工場で不良品を検知する従来型AIの場合、不良品画像が少なければ十分な学習ができず、検知精度が低くなる。手に入りにくい不良品画像を大量に集めるには時間と費用がかかるが、同社のAIでさまざまな不良パターンの画像を作り、学習材料にすれば、精度が高まるというわけだ。

 デジタル活用を急ぐ製造現場での実用化に向け、2021年12月には素材大手の住友電工と共同で技術開発を始めた。

 岡田社長は「今後、デジタル化を支える基盤として、データの重要性は増してくる。我々のAIでデータの量と質を高め、社会に貢献したい」と話す。(2022年1月29日朝日新聞地域面掲載)

データグリッド

 2017年、京都大工学部に在籍していた岡田社長が資本金150万円で設立。2021年11月にはファンドなど12社からの出資と融資で計3億円を調達した。本社は京大吉田キャンパス(京都市左京区)の地下にある。従業員は約50人。