目次

  1. 約束手形とは
  2. 下請法の義務
    1. 書面の交付義務
    2. 支払期日を定める義務
    3. 書類の作成・保存義務
    4. 遅延利息の支払義務
  3. 下請法の運用の見直しいつから?
  4. 5000社が支払いサイト60日以上

 約束手形とは、代金を支払う振出人が、受取人などに対して、期日に手形に書かれた金額の支払いを約束する有価証券のことです。

 手形を使うと、支払期日までの期間が現金振り込みよりも2~3倍長い傾向があります。さらに、その間の利息が支払われないばかりか、発注先に資金繰りのコストを負担させています。

 こうした状況が、下請け業者の資金繰りを悪化させる原因になっているとして、経済産業省は、2026年をめどに約束手形を廃止するよう産業界や金融界に働きかけています。

 公正取引委員会の公式サイトによると、発注元には、下請法(下請代金支払遅延等防止法)は次の4つの義務を課しています。

 口頭で発注することによるトラブルを避けるため、発注元は発注内容を明記した書面を交付しなければいけません。

 発注元は検査するかどうかを問わず、発注した物品を受け取ってから60日以内のできるだけ短い期間内に下請代金の支払期日を定めなくてはいけません。

 発注元は下請取引の内容を記載した書類を作成し,2年間保存しなければなりません。

 発注元の支払が遅れた場合は遅延利息を支払わなければなりません。

 これまで支払いサイトは繊維産業で90日、その他業種は120日とされてきました。しかし、公取委は2024年をめどに一律60日以内にするよう下請法の運用を見直す方針です。サイトが60日を超える手形を、下請法の「割引困難な手形等」に該当するおそれがあるとして指導の対象にする見込みです。

 具体的には、約束手形の指導基準(通知)を新設し「今般、改めて業界の商慣行、金融情勢等を総合的に勘案して、指導基準について、業種を問わず60日とする」と明記する予定です。

 さらに一括決済方式及び電子記録債権に関する通知の「120日以内(繊維業の場合は90日以内)」との部分を「60日以内」に変更する予定です。

 指導基準を2024年4月中につくり、半年程度の周知期間を置き、2024年11月1日から運用を開始する予定です。

手形が下請代金の支払手段として用いられる場合の指導基準の資料
手形が下請代金の支払手段として用いられる場合の指導基準の資料(公正取引委員会の公式サイトから https://www.jftc.go.jp/houdou/teirei/2024/jan_mar/files/240228_teirei_1.pdf)
手形が下請代金の支払手段として用いられる場合の指導基準の資料
手形が下請代金の支払手段として用いられる場合の指導基準の資料(公正取引委員会の資料から https://www.jftc.go.jp/houdou/teirei/2024/jan_mar/files/240228_teirei_1.pdf)

 しかし、中小企業庁と公正取引委員会が下請取引の実態を把握するために調査したところ、約5000社の発注元は、サイトが60日を超える手形で下請代金を支払っていました。

 そこで、今後の見直しも見据え、手形サイトを60日以内にする要請をしました。今回の要請は、手形だけでなく、一括決済方式や電子記録債権についても含まれます。