目次

  1. 植村直己も愛用した「もちはだ」
  2. スーツ姿で台車を引っ張る
  3. 両親の口論を機に家業へ
  4. 数値の「見える化」に着手
  5. 不要なコストを洗い出す
  6. クラファンに活路を見いだす
  7. 想いを語る動画でアピール
  8. 現実をつかむ努力を大切に

 ワシオは1955年、鷲尾さんの祖父・邦夫さんが靴下問屋として創業。70年以降は主力ブランド「もちはだ」を中心に、肌着などを製造してきました。

「もちはだ」の強みは、独自の起毛生地です(ワシオ提供)

 「もちはだ」の強みは、独自の「ワシオ式起毛」で編む生地にあります。一般的な起毛のようにパイル編みのループ部を切るのではなく、上部をこすって起毛。起毛部分とループ部分に空気をためて外気を遮断し、暖かさを保ちます。冒険家の植村直己も「もちはだハイソックス」を愛用していたといいます。

独自の起毛方式で優れた断熱性と保温性を実現しました(ワシオ提供)

 ワシオの売り上げは2019年度が約5億2千万円、20年度はコロナ禍の影響で落ちたものの、21年度はコロナ前の水準に戻る見込みです。従業員数は約40人になります。

 鷲尾さんは元々家業を継ぐ気はなく、学生時代の夢は中国での起業でした。「性格上サラリーマンには向いていないと思っていたので、大学で専攻した中国語を生かして起業した方が、面白いキャリアを積めそうと考えたのです」

 卒業後は、中国で飲食店経営を手がける神戸市の会社に入りました。

 まず取り組んだ仕事は、「中国で焼酎を売る」という事業計画書の作成でした。何とか書き上げて入社3カ月後に中国・天津に渡りましたが、計画通りには進みません。自身が販売する焼酎より知名度が高い銘柄が、安い価格で流通していたのです。

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