SNS担当が知るべき八つのリスク 運用ガイドラインの作成法も解説
中小企業のSNS炎上対策を考えるシリーズでは、これまで炎上を防ぐための「防災訓練」や従業員教育の方法などを解説しました。5回目は企業の公式アカウントを積極活用するために、あらかじめ知っておきたい八つのリスクや、リスクを避けるためのガイドライン作成について解説します。
中小企業のSNS炎上対策を考えるシリーズでは、これまで炎上を防ぐための「防災訓練」や従業員教育の方法などを解説しました。5回目は企業の公式アカウントを積極活用するために、あらかじめ知っておきたい八つのリスクや、リスクを避けるためのガイドライン作成について解説します。
目次
皆様の会社はSNSを使って、情報を積極的に発信しているでしょうか。最近は、ツイッターやインスタグラムなどのSNSに公式アカウントを作成して発信する企業が増えています。商品の認知拡大やイメージアップ、採用活動など、活用には様々な目的が考えられます。
最近では、横浜のタクシー会社がTikTokに年配の幹部男性のダンス動画を投稿して人気を博しました。本業とダンスは全く関係が無くても、会社のイメージアップにつながり、実際に求職者も乗客も増えたようです。
良い商品を持ちながら知名度に難があった企業が、SNS発信をきっかけに人気に火がつくなど、会社の規模や業種、業態、知名度に関わらず、SNS運用には計り知れない効果が期待できます。しかも無料で使えるため、中小企業がSNSを活用しない手はないでしょう。
しかしSNSの公式アカウントさえ開設すれば、どの企業でも自然に人気となり、広告宣伝効果があるかというと、そんな甘いものでもありません。
「フォロワーが増えない」、「人気アカウントのようにユーモアたっぷりの投稿ができない」。企業のSNS運用は思い通りに進まないことも多いのではないでしょうか。だからと言って、より多くの人の目を引こうと行き過ぎた内容を投稿すると、炎上につながってしまいます。
今回は企業のSNS活用の「影」の部分に目を向け、運用にあたって気をつけるべき八つのリスクについて順を追って紹介し、リスクを軽減するためのノウハウについても詳しく解説していきます。
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「注目を浴びるためにはインパクトが必要」という考えもあるでしょう。それ自体は悪いことではありませんが、インパクトを狙うあまり「行き過ぎている」と、消費者に受け止められる場合もあります。
「炎上商法」という言葉もありますが、炎上を故意に利用していると思われれば、批判を浴びかねません。
炎上を狙ったかどうかは別として、次のような例があります。
ある企業の経営者が、ターミナル駅に出した自社のデジタル広告の写真を自身のSNSで発信しました。
しかし、駅に無数に並ぶディスプレーのすべてに、刺激的なキャッチフレーズがそろうことになり、「不愉快」というコメントが寄せられて炎上したのです。
デジタル広告は動画なので同じキャッチフレーズがずっと表示されたわけではありません。しかし、写真で一瞬を切り取ると、不愉快と感じ取るユーザーも多く、本来の広告意図とは異なったメッセージ性を持たせてしまいました。
炎上のコントロールは難しいので、投稿する際には見る側がどのように受け止めるか様々な視点で考える必要があるでしょう。
いわゆる「誤爆」は、公式アカウント運営で発生しやすいリスクになります。運用担当者が個人のSNSで発信するつもりが、切り替えを誤って企業の公式アカウントに投稿するミスです。
当たり障りのない内容ならまだ良いのですが、他者を中傷したり、会社内の愚痴や機密情報を投稿してしまったりした場合は、炎上に発展することもあります。
社内の承認プロセスがなく、担当者一人だけでアカウントを切り盛りしている場合に誤爆が起こりやすいと思われます。
投稿に承認プロセスを設けて、投稿者以外の承認を得ないと発信ができないというルールや、投稿管理ツールの使用などで予防するのが良いでしょう。
ちなみに投稿管理ツールとは、SNSの投稿やコメント返信などを一元管理できるアプリケーションです。承認機能もあるツールなら承認者が認めないと公開されないようにすることもできます。
他者を傷つける意図が無くても、見ている人に不快に受け止められてしまう投稿もあります。
特に差別的に聞こえる表現は、その意図に関わらず批判の対象となります。これも投稿前に複数人で表現を確認する必要があるでしょう。
コメントへの返信についても注意しましょう。上から目線と受け止められかねない表現や、コメントしたフォロワーへの感情的な表現にも炎上リスクがあります。
常に多くの人に見られている文章だと意識することが肝要です。
真偽が不明な情報、臆測による投稿も避けるべきでしょう。他者の投稿をリツイートで拡散する行為も注意が必要です。
会社の公式アカウントがフェイクニュースの拡散を招いたとなれば、道義的責任を問われます。公式アカウントとして、確証のない情報は投稿しないようにしましょう。
自社以外の施設や店舗、野外で撮影した場合は、画像や動画に映り込んでいる物や人物にも注意を払うことが必要です。
所有者や人物に許可を得ずに発信すると、権利やプライバシー侵害につながる恐れがあります。
例えば、キャラクターや芸能人が使われている屋外看板、ナンバープレートなどには注意しましょう。使用したい場合には、きちんと当該権利者の承諾を得るようにしましょう。
文化庁が、偶然の小さい映り込みに関しては権利侵害に当たらないという見解は出しておりますが、映り込んだものや人への配慮、無用なリスクの回避という見地から、細心の注意を払うのが良いでしょう。
自社内であっても、機密書類や内部向けの掲示物などにも気を付けましょう。
災害の発生時やその直後などに配慮のない投稿をしてしまうと、批判の対象になります。
ある地方自治体が、災害発生中にのんきな投稿を発信してしまい、炎上してしまった事例もあります。
過去に大事故が発生した日の投稿内容にも注意しなければなりません。その日は過去に何があったか、事前に調べた上で投稿内容を吟味する必要もあります。
投稿管理ツールでは、あらかじめ予約した時間に自動投稿できる予約投稿機能が使えますが、地震など急な災害が起きている最中の発信を避けるためにも、いつでも停止できるようにしておきましょう。
レアケースかもしれませんが、運用担当者が様々な理由で会社に不満を持った場合、公式アカウントに発信してしまうリスクもあります。
「ハラスメント企業」などと汚名を着せられる可能性もありますので、運用担当者との意識のすり合わせは、頻繁に行ったほうが良いでしょう。
発信にあたっては、パスワードの管理者と発信担当者を分けたり、記事の承認プロセス設定や罰則を含めた管理規定を制定したりするなど、仕組みの整備も役立ちます。
乗っ取りやなりすましは、顧客に迷惑がかかったり、信用を失ってしまったりするリスクがあります。
被害を防ぐために、パスワードの厳格な管理、単純なものを避けるなどの予防対策や、二段階認証(IDやパスワードの入力だけではなく、メールなどでもう1段階確認プロセスを経ないとログインできないような設定)も効果的です。
なりすましについては、普段から自社をかたるアカウントが無いかを確認するため、自社名で検索したり、顧客が本物を認識できるように公式SNSアカウントの一覧をウェブサイトに載せたりするなどの対策をしておきましょう。
公式アカウントの運営時には、運営ガイドラインの作成をおすすめします。ガイドラインには、以下の内容を定めましょう。
アカウントを運用する上での方針を定めましょう。例えば、積極的に発信するのか、何かトピックがあった時だけ発信するのかといった頻度や、誰にどのような語り口で何を発信するのか、コメントが付いた場合に返信するのかなどを記載します。
SNS運用を成功させるには、目的の設定が重要です。採用活動、イメージアップ、キャンペーン告知、商品の認知拡大などの目的を明確にしておきます。
発信に関わるメンバーは誰で、どのような役割を持つかを決めましょう。投稿作成、コメントへの返信、発信後のモニタリングなど、担当者がひとりであったとしても、行うべき役割を定義します。承認者と承認プロセスについても決めておきましょう。
前回の記事でも触れましたが、リスクを判断する基準と、それに対して誰が何をするかの対応フローを決めることで、緊急時にもあわてずに対処できます。
この他にも決めるべきことはありますが、運用リスクの軽減だけでなく、SNSの活用を成功に導くためにも、今回触れた対応策は最低限定めていただきたいと思います。
ここまでお読みいただくと、「リスクがあるならSNSを活用しないほうが良いのでは?」と思われたかもしれません。
しかし顧客との距離を縮め、企業の活動をダイレクトに伝えられるのも、またSNSの良いところです。ルールを守りながら誠実に発信を続けるのが一番です。決して当たり障りのないことばかりを投稿する必要はありません。
冒頭で紹介したタクシー会社の例のように、まず自分たちが楽しむこと(悪ふざけではなく)が大切なのではないかと思います。
中小企業こそSNSを活用しない手はありません。ぜひ積極的に取り組んでみてください。
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