目次

  1. 購入型クラウドファンディングとは
    1. 他のクラウドファンディング形式との違い
    2. 購入型クラウドファンディングの2種類の仕組み
    3. 購入型クラウドファンディングに関わる法律
    4. 購入型クラウドファンディングと税金
  2. 購入型クラウドファンディングのメリット
  3. 購入型クラウドファンディングのデメリット
  4. 購入型クラウドファンディングによる資金調達の流れ
  5. 購入型クラウドファンディング おすすめプラットフォーム
    1. CAMPFIRE(キャンプファイアー)
    2. Readyfor(レディーフォー)
    3. Makuake(マクアケ)
    4. Kibidango(きびだんご)
  6. 購入型クラウドファンディングを活用して資金調達をした事例
    1. リターン品の工夫で多額の資金調達に成功
    2. 支援者の声を大切にして目標金額の5倍の資金を調達
  7. 購入型クラウドファンディングは宣伝効果も高い

 購入型クラウドファンディングとは、お金を出してくれた人(支援者)に、その対価としてなんらかの見返り(リターン)として物品やサービスを渡す形式のクラウドファンディングです。

 現在、一般的に「クラウドファンディング」と呼ばれているものの多くは、この「購入型クラウドファンディング」になります。

 購入型クラウドファンディングは、2008年のリーマンショックによる不況の中、アメリカで花開き、新しい産業を創り、雇用を生み出す資金調達形式として広まりました。

 日本でも、購入型クラウドファンディングは認知されてきており、金融商品取引法等の改正(2014年)を契機として、その市場規模も増加しつつあります。

 株式会社SheepDogが、2021年6月に、全国の20~59歳の男女600人を対象に実施した「クラウドファウンディングの認知・支援経験に関するアンケート」によれば、クラウドファンディングの認知度は83%とのこと。

 また、日本クラウドファンディング協会が2021年7月9日に公表した「クラウドファンディング市場調査報告書」によれば、購入型クラウドファンディングの2019年の市場規模は169億円、2020年はその約3倍の501億円でした。

 今後も資金調達の手法として、購入型クラウドファンディングが人気なのは間違いありません。

 クラウドファンディングには、購入型以外に寄付型と投資型があります。

 それぞれの違いは、次のとおりです。

購入型 寄付型 投資型
商品を購入するのに近い感覚で利用できるタイプ。
支援者に、支援の対価としてなんらかの見返り(リターン品)として物品やサービスを提供する。
支援した人に対して経済的な見返りがなく、社会貢献性が強いタイプ。
海外ではドネーション型と呼ばれる。
株式購入や融資の形で支援が行われるタイプ。
クラウドファンディングのプラットフォーム(サイト)側が支援金を集めて、起案者に融資を行い、その返済元利益の一部を支援者に分配する。

 クラウドファンディングは、収益度外視でも実行したい社会的意義の側面が強いプロジェクトなのか、もしくはビジネスとして事業の拡大を見込んだプロジェクトなのかで、適したタイプが異なります。

 購入型クラウドファンディングを最大限に活用するためには、プロジェクトの特徴を確かめたうえで選択するとよいでしょう。

 購入型クラウドファンディングには、「All or Nothing型」「All In型」という2種類の仕組みがあります。

 「All or Nothing型」は、設定した最終目標金額を達成できなかった場合、プロジェクト自体が消滅し、支援者に全額金額を返金する(リターン品の取得はない)仕組みです。目標金額を達成しない限り実行できないプロジェクトに向いています。

 支援者への返金はプラットフォーム側で行うなど、プラットフォーム側にとってもリスクがあるので、企画が通らないことがしばしばあります。

 「All In型」は、目標金額達成のいかんに関わらず、クラウドファンディング開催期間中の支援金を獲得できる仕組みです。

 プロジェクトの実行に足りない資金を獲得したい場合や、最初の購入型クラウドファンディングで成功したプロジェクトで完成した「商品」「商材」をリターン品にして、2度目のクラウドファンディングにする場合などに適しています。

 購入型クラウドファンディングは、リターンとして商品を提供するため、実質的には商品販売と同じになります。そのため、広告規制に関わる法律を守らなくてはいけません。

 広告規制に関わる法律は、3つあります。どんな法律なのか、違反しないように特に何に留意したらいいのか、下記にまとめました。

法律 留意点
【特定商取引法】
事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律
購入型クラウドファンディングは通信販売にあたるため、「特定商取引法に基づく表記」のページを作成する
【景品表示法】
誇大・虚偽広告を規制する法律
リターン品に関して、嘘をついたり、実際の商品よりも「とても良い」と思わせたり、お買い得に見せかけたりしないようにする
【消費者契約法】
消費者被害の未然防止・救済策の確立を目的する法律
「瑕疵担保責任は一切負わない」という免責条項を設けないようにし、誠実な対応を心がける

 購入型クラウドファンディングでは、受け取った資金や支援者にも税金が発生します。

 資金調達者の場合、資金調達者(起案者)が個人事業主なら所得税が、起案者が法人の場合は法人税・消費税がかかります。

 一方、支援者の場合、商品を購入しただけなので基本的に税金は発生しませんが、リターン内容に比べて支援額が高額だった場合は、その支援金に対して贈与税がかかります。

 購入型クラウドファンディングは、資金調達の新たな手法として、よく用いられるようになってきています。次のようなメリットがあるからです。

  1. 個人や小さい企業でも資金調達ができる
  2. 資金調達時に元手がいらないのでリスクが少ない
  3. 支援者がファンになる
  4. 多くの人に向けて宣伝ができる
  5. 新規商品だけでなく、活動様式にも支援を集える
  6. 新規商品やアイデアが、世の中に受け入れてもらえるかのテストマーケティングに活用できる

 購入型クラウドファンディングは、支援金を受け取る形式なので金融機関からの融資とは違い、基本的に返済の義務がありません。そのため、融資を断られた案件でも資金調達できる可能性があります。

 ウェブ上で広報するため拡散性が高く、新規事業では、費用を余りかけずにテストマーケティングとして利用できることも魅力です。

 購入型クラウドファンディングには多くのメリットがありますが、一方で次のようなデメリットもあります。

  1. 目標金額を達成できない可能性がある
  2. 起案が通らない場合がある
  3. 途中でプロジェクトの変更・非公開・削除ができない

 購入型クラウドファンディングの一番のデメリットリスクは、目標金額を達成できない可能性があることです。

 「All or Nothing型」では、プロジェクトの実行は免れるものの、いろいろ苦労したこと(事前の下調べやページの構成等)が全て水の泡になりますし、「All In型」では目標金額を達成しなくてもプロジェクトは実施して、リターンを返さなくてはなりません。

 また、購入型クラウドファンディングは、トラブル防止の観点からクラウドファンディング取扱業者によって起案が厳しくチェックされます。審査がなかなか通らないケースは珍しくありません。  

 さらに、一度開始されたプロジェクトは変更・削除ができないことにも注意が必要です。仮にプロジェクトが失敗してもネット上に残り続けるため、顧客への印象が悪くなる可能性が考えられます。

 購入型クラウドファンディングを使った、資金調達の主な流れは次の通りです

  1. 各プラットフォームを回遊し、自社でやろうとしているクラウドファンディングに近いものの「成功した事例」「失敗している事例」の2つを探し出す
    成功、失敗の比較ができれば、新たな購入型クラウドファンディングの成功率が高まります。
    内容だけでなく、書き方、どんな画像を使っているか、画像を挟む場所、リターンの設定などを事例から学びましょう。

  2. 「1.」で調査したクラウドファンディングを基に、社内アンケート(アイデア)を募る
    クラウドファンディングは、社員の意識向上に利用できるツールでもあるため、資金調達ばかりに軸を置かないことがポイントです。

  3. 複数人で「基本起案」を策定する
    支援者の立場、性格はまちまちです。ちょっとしたアイデアが成功、失敗の分かれ道となるため、複数人で策定するようにしましょう。

  4. 支援者に送付するリターン品を決める
    支援者はどのようなものを送付したらうれしいか、という観点からリターン品を決めます。なお、株式や金融商品など対象にできないものもあるので注意してください。

  5. プラットフォームを選定する
    現在、さまざまなプラットフォームが存在しています。下記におすすめを紹介しているので、よければ参考にしてください。

  6. 「起案」をプラットフォーム側に提出する
    プラットフォームサイトに記載された注意事項を熟読しながら起案を作成し、提出します。リターン品の内容や数量に現実性を付加してください。資金不足でリターンがおこなえないと判断されると審査に落ちます。
    なお、プラットフォーム側の審査に合格するまでで数週間かかる場合もあるため、計画は余裕を持って進めましょう。

  7. プロジェクトページを制作して、クラウドファンディングを始める
    本文を最後までしっかり読んでくれる方は意外と少ないので、見栄えの良い画像を随所に挟み、最後まで見てもらう工夫を施すのがポイントです。
    また、前述したようにクラウドファンディングが始まりましたら、ページ内の一言一句、リターン品の数量などが変更できません。スタート前によくチェックすることが大切です。

  8. 支援者からの問い合わせ応対を行う
    クラウドファンディング中は、支援者からの問い合わせに対して丁寧に応対します。

  9. 支援金を受け取る
    クラウドファンディングが終わったら、支援金の受け取り手続きを行います。受け取り期間は、各プラットフォームにより違いますが、約1ヵ月後ぐらいが一般的です。

  10. 起案を実行する
    受け取った支援金を元手に起案を実行します。支援者へリターン品を発送し、終了の報告を行います。

 2021年11月22日時点で、クラウドファンディング プラットフォーム数は24社です。ここでは筆者おすすめの4つをご紹介します。

 購入型国内クラウドファンディング年間支援プロジェクト成立件数 No.1 の日本最大級のプラットフォームです。

 地域活性化を目指す「CAMPFIRE ふるさと納税」、継続的な支援を行なう「CAMPFIREコミュニティ」、クリエイターの思い描くアイデアの商品化を目指す、製造小売型クラウドファンディング「CAMPFIRE Creation」など、9つのプラットフォームを提供しています。

プラットフォーム名 CAMPFIRE
特徴 ・大手のクラファンサイト
・取り扱いジャンルが豊富
・独自の支援サービス(CAMPFIRE あんしん支援保証)有
手数料 達成金額(税抜)12%+5%決済手数料(税別)
成功率 約36%
ユーザー(支援者)数 約540万人
得意なジャンルや型 自社のプロジェクトにあったジャンルを見つけることが可能
おすすめの企業 新規事業を展開したい企業
公式サイトURL https://camp-fire.jp/

 医療や福祉、地域活性化など社会貢献型を中心としたプロジェクトが多いのが特徴のプラットフォームです。

 多くのクラウドファンディングサイトが、実際に審査に通過してからサポートを行うのに対して、Readyforでは、企画段階から指導を受けることができるため、初めてクラウドファンディングに挑戦するという企業でも安心して利用できるでしょう。

プラットフォーム名 Readyfor
特徴 ・手数料が業界トップレベルで安い
・フルサポートプラン有
・起案者の年齢が幅広い(12~92歳)
手数料 ・シンプルプラン:達成金額(税抜)7%+5%決済手数料(税別)
・フルサポートプラン:達成金額(税抜)12%+5%決済手数料(税別)
成功率 約75%
ユーザー(支援者)数 約90万人
得意なジャンルや型 チャリティー(社会課題解決のために資金を集めたい人たちが多く活用しているのが特徴)
おすすめの企業 社会貢献事業者
公式サイトURL https://readyfor.jp/

 株式会社サイバーエージェントのグループ企業である、株式会社マクアケが運営するクラウドファンディングサイトです。

 サイバーエージェントが保有する告知力やノウハウを活用できることが強みで、スマホでの決済対応などにも力を入れており、1億円以上集めるプロジェクトも複数でてきています。

 また、近年では全国100社以上の金融機関との連携により日本各地の事業者が活用しているほか、国内外の流通パートナーとも連携し、プロジェクト終了後も事業が広がるよう支援しています。

プラットフォーム名 Makuake
特徴 ・メディア掲載数が5,000件以上と実績が豊富
・プロジェクト実施中に伊勢丹新宿店の6店舗の常設スペースに商品を展示可能(審査あり)
・独自の市場分析ツール(Makuakeアナリティクス)を提供
手数料 達成金額(税抜)20%+5%決済手数料(税別)
成功率 約66%
ユーザー(支援者)数 約130万人
得意なジャンルや型 ファッション、フード、レストラン・バー、テクノロジー、演劇・パフォーマンスなど
おすすめの企業 新規製品の販売や認知度拡大を目指す企業
公式サイトURL https://www.makuake.com/

 成功率80%以上を誇るKibidangoは、「アイデアと実現スキルを有するプロフェッショナル」を前提に運営を行なうプラットフォームです。

 手数料が10%(楽天ペイ利用時は14%)と良心的なことも特徴としてあげられます。

 また、世界最大級の購入型クラウドファンディングサイト「Kickstarter」からKickstarter Expertに認定されており、Kickstarterへの挑戦を成功させるアドバイスを受けることも可能です。

プラットフォーム名 Kibidango
特徴 ・利用者の満足度トップクラス
・手数料が安い
・圧倒的な成功率
手数料 達成金額(税抜)10%
成功率 約80%
ユーザー(支援者)数 不明
得意なジャンルや型 雑貨・日用品・ガジェットなど
おすすめの企業 利用コストをできるかぎりおさえたい企業
公式サイトURL https://kibidango.com/

 最後に、購入型クラウドファンディングを使い、資金調達を成功させた事例をご紹介します。

 購入型クラウドファンディングの成功例として、必ず語られるのは、2016年11月に公開された、映画「この世界の片隅に」です。

 支援者から3,900万円を集めて制作、公開までに至り、映画上映による興行収入は27億円まで到達しました。

 この事例の最も特筆すべきことは、リターン品が『映画制作や制作スタッフミーティングへの参加券』だったこと。

 「映画製作に関わってみたい」「映画現場を見てみたい」「この作品を広めたい」という映画が好きな人なら誰でも一度は抱くような思いに、直接応えるようなリターン品を用意したことで、多くの人が心揺さぶられたのです。

 Eさんは、その日のスタイリングに合わせて「時計本体」と「簡単に付け替え可能なベルト」を別々に販売することを思い立ち、クラウドファンディングで資金調達をすることにしました。

 そもそも、この販売方法が、「時計好きな方々に受け入れていただけるか」も分かりません。

 Eさんは、クラウドファンディングを開始してからの支援者の声がとても貴重だった、と回想します。

 そうした支援者の声を大切にする対応が功を奏して、目標金額の5倍の資金調達に成功。

 また、その様子を見ていた大手デパートから直営店舗展開を打診されたり、ベンチャーサポート企業から支援を受けることにもなりました。金融機関からの融資枠の拡大もあったとのことです。

 クラウドファンディングでの成功は、大きなプロモーション効果や信頼の獲得につながることがわかる事例といえるでしょう。

 購入型クラウドファンディングは、仕組みさえ解れば簡単に開催することが可能です。

 しかしながらお伝えしたように、メリットとデメリットがありますので、種類や決済方式などを理解して、上手に利用するようにしましょう。

 クラウドファンディングは、「ヒット商品はクラウドファンディングから生まれる」と言われているように、資金調達以外に宣伝効果という大きな役割もあります。

 自社の顧客名簿がしっかりしているのであれば、それを利用した「クラウドファンディング・マーケティング」が可能です。

 あなたの挑戦が実を結び「やって良かった」と思ってもらえることを、切に願っております。