目次

  1. Power Platformとは
    1. Power BI
    2. Power Apps
    3. Power Automate
    4. Power Virtual Agents
  2. Power Platformでできること
    1. 初めての人にもアプリが開発できる
    2. 1つのアプリを様々なデバイスで利用できる
    3. 社内に蓄積されたデータを有効に活用できる
    4. 社外で提供されている情報を簡単に活用できる
    5. AIモデルを利用して高度なアプリを開発・活用できる
  3. Power Platformの使い方の事例
    1. 複数のチャネルからの注文を効率的に管理
    2. フロアー内の移動を無くし必要な業務に専念
    3. 場所の制限をなくし業務を推進
    4. 業務進捗の最新情報を見える化
  4. Power Platform管理センター(PPAC)とは
  5. Power Platformの価格 ライセンス別に紹介
  6. Power Platformで業務を変えるために必要な推進役

 Power Platformとは、Power BI・Power Apps・Power Automate・Power Virtual Agentsという4つのMicrosoft製品の総称です。

 まずは、それぞれの概要を表で簡単にご紹介します。

製品名 Power BI Power Apps Power Automate Power Virtual Agents
用途 データ分析 アプリ開発 自動化・ワークフロー開発 チャットボット開発
連携(※1) ----- Power Automate Power Apps Power Automate
埋め込み(※2) Power Apps Power BI ----- -----
特徴 Power BI Desktop、Power BI サービス、Power BI Mobile でデータ分析可能 キャンバス、モデル駆動型、ポータルの3種類のアプリ開発可能 ・スケジュール、トリガー、手動起動の柔軟な処理実行可能
・Power Automate Desktop(RPA)で、パソコン操作の自動化可能
社内・社外のサポートを自動処理可能

(※1)連携は、製品から他の製品を呼び出し(起動し)、各製品の機能を利用できることを表しています。
(※2)埋め込みは、製品の画面に他の製品の画面などを表示でき、機能を利用できることを表しています。

 それでは、以下で各製品の特長・機能について詳しく説明していきます。

 Power BIは、社内・社外に点在するデータを取得し、グラフツール(視覚化)を活用してレポートを作成できるツールです。

 このレポートを利用することで、データから様々な気づきを得ると共に、アクションに繋げるための分析を行うことができます。

 Power BIは、以下の要素で構成されています。

  • Power BI Desktop
    無償で提供されているWindowsデスクトップアプリで、データを取得・加工・整理などを行い、グラフ(視覚化)を利用し、分析のためのレポートを作成します。
    作成したレポートは、Power BIサービスに公開し、第三者と共有することが可能です。

  • Power BIサービス
    公開されたレポートを、社内・社外の第三者と共有できます。また、レポートの視覚化の中からビジネス上の意思決定に重要なものを抽出し、ダッシュボードにまとめることで、意思決定に必要な様々な情報を1つの画面から確認できるようになります。

  • Power BI Mobile
    Power BIサービスに公開されたレポート・ダッシュボードをスマホで利用するためのアプリです。

 Power Appsは、アプリを開発するための製品で、以下3種類のアプリを開発できます。

  • キャンバスアプリ
    Power Pointのような操作で画面を作成し、Excel関数のような関数を記述することでアプリを開発できます。画面を柔軟にデザインできることから、多くの方が最初に取り組まれるアプリである反面、関数の知識が必要になることから、多少のスキルが必要になります。

  • モデル駆動型アプリ
    提供されているコントロールを画面に配置する事でアプリを開発できます。関数などの知識の必要がなく、マウスの操作のみで、短時間でアプリを開発することができます。反面、画面デザインなど柔軟に対応できないという点があります。

  • ポータルアプリ
    社内に蓄積したデータを社内・社外にWebアプリとして公開することができるポータルサイトを開発できます。他のアプリ同様に必要なコントロールを配置しながら、サイトを構築することができます。

 Power Automateは、業務で行われている反復的な処理を自動化するために利用されます。自動処理は、利用場面毎に、以下の3種類の柔軟な起動・利用方法があります。

  • スケジュール起動
    月曜日の8:00に自動的に処理を実行したいという場合など、定期的な処理をスケジュールして行うことができます。

  • トリガー起動
    新しいメールを受信した際、OneDriveに新しいファイルが作成された際など、特定の条件により、処理を実行したい場合に処理を行うことができます。

  • 必要時起動
    お客様へ商品配送の連絡、上司への各種申請など随時発生する業務処理を実行したい場合に処理を行うことができます。

 上記で説明した自動処理は、Azureサーバー上で実行されるものになります。ですが、Power Automate Desktop(RPAツール)であれば、パソコンの操作を伴う業務の自動化を行うことも可能です。

 (※)Power Automate Desktopは、パソコンで操作する内容を記録し、自動処理を行うためのデスクトップアプリ。無償で利用が可能。

 Power Virtual Agentsは、お客様の各種問合せ、社員の各種申請書手続きの質問などに対応できる AI チャットボットを開発できます。

 Power Automateと組み合わせれば、社内にある情報を活用した様々なニーズに対応したチャットボットの開発も可能です。

 各製品について、特長・機能を見てきましたので、次に、各製品を利用することで、どのようなシーンで活用できるかということをご紹介します。

 ノーコード・ローコードでアプリが開発できると言われても、どこから始めて良いか悩まれる方が、ほとんどだと思います。そのような場合に利用できるアプリテンプレートが準備されています。

 アプリテンプレートで作成したアプリは、そのまま、業務アプリとして利用することも、カスタマイズして独自の機能を組み込むこともできます。

Power Apps で直ぐに利用できるアプリテンプレート一覧
画像①Power Apps で直ぐに利用できるアプリテンプレート一覧

 Power Platform製品は、パソコン・タブレット・スマホで利用できるような機能が備わっています。それぞれの対応したアプリを開発する必要がなく、1つのアプリを様々なデバイスで利用できますので、社内・出張先でも便利です。

Power Apps で作成したアプリは、パソコン・タブレット・スマホ全て利用可能
画像②Power Apps で作成したアプリは、パソコン・タブレット・スマホ全て利用可能です

 Microsoft 365(Microsoft が、Office 製品などをクラウドで提供しているサービス)を利用されている企業では、既に様々なデジタルデータが蓄積されているでしょう。

 Power Platformでは、これらのデータを無駄にすることなく有効に活用でき、データを利用しながらアプリを開発できます。 

Microsoft 365 などで蓄積されたデータは、コネクタ―で簡単に利用可能
画像③Microsoft 365 などで蓄積されたデータは、コネクタ―で簡単に利用可能になります

 Power Platformでは、社内の情報だけでなく、社外で提供されている様々なデータを利用・活用するためのコネクタ―と呼ばれる機能が提供されています。

 利用できるサービスにはTwitter, Gmail, Dropboxなどがあり、現在400以上が提供され、日々追加されています。

400を超えるコネクタ―で社外の情報を簡単に利用可能
画像④400を超えるコネクタ―で社外の情報を簡単に利用可能になります

 別途費用が必要になる機能ですが、専門的な知識がなくても、提供されているAIモデルを利用することで、簡単にアプリを開発できるようになります。

 現在は、請求書処理・名刺リーダー・文体検出など16モデルがすぐに利用可能です。

アプリに AI 機能を組み込むためのモデルも利用可能
画像⑤アプリに AI 機能を組み込むためのモデルも利用可能になります(別途費用発生)

 Power Platform製品は、各製品単独でもアプリを開発し活用することができますが、連携することで、さらに効果を発揮します。

 ここでは、架空の卸売り企業が、Power Platform製品を適用し、業務をシステム化した場合について、見ていきたいと思います。

 この企業では得意先が200社ほどあり、日々100件程の注文があり、複数のチャネル(電子メール・FAX・電話)から注文が行われています。

 電話注文については、人手による入力が必要になりますが、電子メール・FAXについては、以下の図のように自動化による効率化が可能です。

複数のチャネルからの注文を効率的に管理
画像⑥複数のチャネルからの注文を効率的に管理できます

 在庫切れ連絡、発送連絡などフロアー移動を伴う業務が多く、担当者不在時には、頻繁にフロアーを移動することが行われていました。

 これらの業務を以下図のように通知を自動化することで、各担当者が、重要な業務に専念できるようになります。

フロアー内の移動を無くし必要な業務に専念
画像⑦フロアー内の移動を無くし必要な業務に専念できます

 業務上での緊急対応は、社内・社外に関わらず発生します。特に、在庫切れ・トラブルは、作業場所に関わらず発生します。在庫切れは、販売機会損失に関わることになりますので、早急な対応が必要です。

 Power Appsでアプリを開発すれば、パソコン・スマホで同じように動作するため、そうしたトラブルへの対応も容易です。

場所の制限をなくし業務を推進
画像⑧場所の制限をなくし業務を推進することが可能です

 リアルタイム・実績把握は、経営者・部門責任者にとってビジネス上の課題解決に役立つ情報になります。

 そのため、ツールにおいては、日々変化する状況に合わせて課題・指標を柔軟に変更できることがポイントとなるでしょう。

 表示データ・グラフを容易に変更できる Power BIを利用することで、売上現象の課題をダイレクトに確認でき、素早い対応を行うことが可能になります。

業務進捗の最新情報を見える化
画像⑨業務進捗の最新情報を見える化できます

 Power Platformを利用する際、Power Platform管理センターの利用方法についても知っておくとよいでしょう。

 Power Platform管理センターとは、管理者または環境管理者の権限を持つユーザーのみが、Power Apps、Power Automateなどの管理を行うために利用するポータルサイトです。

Power Platform 管理センターで Power Apps, Power Automate の管理
画像⑩Power Platform 管理センターで Power Apps, Power Automate の管理を行います

※Power Platform管理センターで Power Apps, Power Automateの管理を行います。

 Power Platform管理センターには次のような機能があり、Power Platformをより便利に使いたいときに役立ちます。

  • 新しい環境の構築・削除及び復旧
  • 開発者、利用者などのユーザー管理
  • Microsoft Dataverseのプロビジョニング・管理
  • Power Apps, Power Automateで利用可能な機能の追加
  • パフォーマンスのチェック、エラーの確認

 また、Microsoft Teamsで Power Appsの開発ができる機能が追加されましたが、Teamsで開発環境を構築した場合にも、Power Platform管理センターに環境が構築されるようになります(※上記画面で、種類に Microsoft Teamsと表示されているのが、Temasで開発された環境です)

 最後に、Power Platformを構成する各製品の価格についてご紹介します。

製品 ライセンス名 価格(月額) 備考
Power BI Pro 1250円/1ユーザー Power BI Desktop は、無償利用可能
Premium 2500円/1ユーザー
 Power Apps Premium 2500円/1ユーザー 500 AI Builderクレジット付き
Power Automate プレミアム 1875円/1ユーザー 5,000のAI Builder クレジット
プロセス 1万8750円/1ボット 非アテンド型デスクトップ オートメーション (RPA) に使用できる単一の "自動化" ボットなどのライセンス付与
Power Virtual Agents 2万5000円 2000セッション/月

 ※上記価格は、2023年8月時点の価格を表示しています。
 ※Microsoft 365ライセンスにより無償での利用もできますが、ライセンスにより変わることもありますので、詳細は担当営業に確認してください。
 ※開発者ライセンスでは、無償で Power Apps, Power Automateを評価できます。

 Power Platformは、市民開発者向けの開発ツールとしてノーコード・ローコードでアプリが開発できるという言葉で広まってきたキーワードのように思います。

 実際にアプリ開発を手掛けている現場の担当者に話を聞くと、

  • 専門的な用語が多く開発が進まない
  • 実業務が忙しくアプリ開発に手が回らない
  • 100%のアプリができないと利用してもらえない

 といった意見が聞かれます。

 開発者でない業務担当者がアプリ開発を始めるときは、たしかに時間・トレーニングが必要でしょう。

 しかし、それよりも重要なのは、粘り強く・強力なサポートができる推進役の存在です。

 Power Platformを利用して業務を変えていくためには、ぜひ、事業経営の方の手厚いサポートを強力に進めていただければと思います。