目次

  1. 原価低減活動とは
  2. 原価低減活動の方法とそれぞれの具体的な進め方
    1. 材料費の削減
    2. 労務費の削減
    3. 間接費の削減
  3. 原価低減活動を行うときのコツ
    1. 全社員へ周知し、継続的に取り組む
    2. 原価管理システムを導入する
  4. 原価低減活動の参考事例
    1. 建設業の事例
    2. 飲食業の事例
    3. 原価低減活動は小さな一歩の繰り返しから

 原価低減活動とは、売上に占める原価(コスト・費用)を減らし、より多くの利益を確保するための活動です。

 原価とは、商品等の製造等に必要な「材料費」、人件費等の「労務費」、水道光熱費や機器のリース代等の「間接費」などがあります。

 事業を継続・発展させるにあたり、売上を上げることはもちろん重要ですが、それと同じか、それ以上に利益を確保することは重要です。

 単純な計算式で表すと利益の式は「利益=売上-原価」で、利益を増やすためには売上を上げるか、原価を下げるかの2つの手段が必要となります。

 ここでは、原価を下げることにより、より多くの利益を確保する「原価低減活動」について、その方法を説明します。

 「原価低減活動」とひとまとめに言っても、先に述べたように原価には「材料費」、「労務費」、「間接費」と大きく分けても3つに分けられ、それぞれによって取るべき方法は変わります。

 そのため、各原価に合った低減活動の方法を以下でご紹介します。

 原価と聞くと材料費を連想される方も多いのではないでしょうか。現に材料費は原価の40~60%を占めていることが多いため、材料費の削減は非常に重要です。以下のような削減方法があります。

方法①材料の量や費用を見直す

 まずは、使用している材料の量や費用の把握・分析をしましょう。

 生産にあたり、普段どれだけ材料が使われているのか・どれだけのコストをかけているのかチェックし、そこにムダが発生していたら発注量の調整を行います。

 「うちは適正だ」と思っていても、業務がルーティン化していくことで意外と見落とされていることも多いものです。

方法②発注頻度を見直す

 同じ材料を複数回、または頻繁に発注している場合は、1度の発注量を増やすことも検討の余地があります。1回当たりの発注量を増やすことで割引が得られる場合や、価格交渉が有利に働く場合もあるからです。

 また、定期購入の契約を結ぶことを条件として、値下げ交渉を行うことも選択肢に入るでしょう。

 ただし、仕入れ先への値下げ交渉を行う場合には、自社だけの利益追求にならないように注意が必要です。無理な値下げ要請は、取引先とトラブルになる恐れがあります。そのため、長期的にみて自社と仕入れ先の双方に利があるよう交渉をすることが大切です。

 また、割引があることを理由に必要以上に発注をし、過剰在庫にならないようにも注意しましょう。過剰在庫は材料の保管等の在庫管理のコスト増や、材料の劣化につながるためです。

方法③仕入先を見直す

 現在、材料の発注を行っている業者が適切かどうか、定期的に見直すことも重要です。同じ材料を安く販売している業者がいれば、そちらに切り替えるだけで材料費を低減できます。

 一方で、価格面での判断にならないよう注意も必要です。今取引している業者は材料の納期の融通が効く、安心して依頼できる、など価格という数字には見えない利点がある場合も多いため、そういった面も加味した総合的な判断が大切です。

材料費の削減を進めるときの注意点

 材料費の削減と聞くと、まず材料の購入額を下げることを思い浮かべる場合が多いかと思います。

 しかし、購入額を下げるよりも、先に自社の内部体制を見直すことが重要です。内部体制の見直しは、原価低減活動以外にも様々な利点を得られる活動のため、第1に実施すると良いでしょう。

 労務費の削減と聞くと、リストラのような人員整理が頭に浮かぶ方も多いかと思います。しかし、人員整理は原価低減活動のなかでも最後の最後の最終手段としてとらえておくことが望ましいでしょう。

 基本的には、材料費の削減同様に日常業務を見直すことが大切です。

方法①日常業務を見直す

 日常のルーティン化している業務や工程などに目を向け、ムダがないか見直しを行います。材料費の削減活動と合わせて業務のムダがないかを把握・分析していくと、効率的に原価低減活動が実施できるのでお勧めです。

方法②作業工程を見直す

 先に挙げた業務の見直しに加えて特に加えて、製造等の現場では作業工程にムダがないかなどの工程の見直しも有効です。

 作業工程の見直しを行うことで、作業の効率化が図ることができ、生産性が向上する例も多くあります。

 不要な時間外労働の削減は、労働者のワークライフバランスにも貢献できるといった副次的な効果も期待できます。

方法③給与削減・人員削減を行う

 給与削減・人員削減は、ある意味では最も工夫がいらずに労務費を削減できる方法かもしれません。ですが、これらは様々な取り組みを行ったうえでの最終手段としておきましょう。

 従業員あっての企業です。そのため、従業員にしわ寄せがいくような取り組みは好ましくありません。

労務費の削減を進めるときの注意点

 日常的に行われている何気ない業務には、想像以上にムダが潜んでいます。ただ、そういったムダは見落としてしまったり、これは必要だと決めつけたりしがちです。不要な時間外労働等のムダな労務費を削減していくためにも、客観的な視点を常に持つことが重要です。 

 最後に、水道光熱費やリース費用などの間接費です。以下、多くの企業に関係するであろう間接費の削減方法をご紹介します。

方法①水道光熱費を削減する

 水道で水を出しっぱなしにしない、電気をつけっぱなしにしないなど、家庭でも言われるようなムダ使いの削減から先ずは意識をしていくことが大切です。

 このような呼びかけをすることは、「全社的に原価低減活動に取り組む」ことの意識づけにもつながります。簡単なことだからと馬鹿にせず実施していくと、高い効果が得られるでしょう。

方法②老朽化した設備を見直す

 老朽化した設備は、ムダなエネルギーやムダな工程を発生させている場合も多いです。そのため、設備を更新するだけでも大きく削減できることがしばしばあります。

 特に近年はエコに意識を向けた製品も多いため、設備の更新でランニングコストの大幅な提言も期待できます。

 しかし、設備の更新には大きな初期投資が必要な場合も多いため、設備の更新費用と削減できるランニングコストを天秤にかけ、慎重な判断をすることも重要です。

方法③リース料金を見直す

 リース料金の見直しも原価低減活動には有効です。リース品などで同等の性能かつ安価なモノはないかアンテナを張っておくと良いでしょう。

 もちろん契約期間の問題やリースに付帯するサービス(保守、メンテナンス、その他サポートなど)から一概に価格面だけで評価することは難しい部分もありますが、何気なく同様のリースを続けるのではなく、定期的な確認をしておくと良いでしょう。

間接費の削減を進めるときの注意点

 上記で水道光熱費・設備費・リース費用を挙げましたが、間接費は企業ごとに異なります。そのため、間接費の削減活動を行う前に、製品等の原価にどのような間接費が発生しているのか明確にすることが重要です。

 ここまで各原価に合わせて原価低減の方法を紹介しました。ここからは、原価低減活動全体を行う際のコツを紹介します。

 原価低減活動は全社的に実施することが重要です。一部の限られた従業員が熱心に原価低減活動を行うよりも、全従業員が少しずつでも原価低減に意識を向けた方が高い効果が得られます。

 また、原価低減活動は、一時的なものではなく継続させることが重要です。全社的な取り組みとして全従業員に原価低減の意識を浸透させ、原価低減活動が特別な取り組みでなく、日常的な取り組みになっていくことが好ましいでしょう。

 原価低減活動の方法のなかで、「材料費の把握・分析」など現状の分析について触れました。原価を把握・分析するツールとして原価管理システムの採用もお勧めです。

 原価管理システムのようなツールの活用は、予算と機能によって得られる効果を比較しながら検討されると良いでしょう。

 様々な原価管理システムがありますが、その中から3点紹介します。

おすすめの原価管理システム①売上原価Pro

 売上原価Proは、アイ・ジェイ・エスが提供している原価管理システムです。さまざまな業種に対応しているため、悩んだらまずはこちらの検討をお勧めします。

サービス名 売上原価Pro
提供会社 アイ・ジェイ・エス
特徴 ・原価管理に関連している機能が多く様々な視点から売上や原価、利益の集計が可能
・製造業、工事業、IT業、サービス業、卸売業など様々な業種の原価管理に対応している
・会計ソフト(PCA会計、弥生会計、財務応援、大蔵大臣)へ連動可能
費用 250,800円/年~
おすすめの企業 建設業、設備保全業、販売・メンテナンス業
公式URL https://ijs-kyoto.co.jp/uriagegenkapro/

おすすめの原価管理システム②鉄人くん

 鉄人くんは、ビジネス・インフォメーション・テクノロジーが提供している生産管理システムです。

 生産管理システムとは、原価管理を含む、生産に関わる工程を一元管理できるシステムで、工程全体の作業効率を見ながら、適切な原価かどうか判断したいときに適しています。

サービス名 鉄人くん
提供会社 ビジネス・インフォメーション・テクノロジー
特徴 ・販売管理と生産管理の幅広い業務に対応している
・シンプルな画面で操作がしやすいので、システムに不慣れな従業員が多い企業でも導入が容易
費用 30,000円/月~
おすすめの企業 製造業
公式URL https://www.tetsujinkun.com/

おすすめの原価管理システム③SMILE V Project Director

 SMILE V Project Directorは、大塚商会が提供しているプロジェクト収支管理システムです。

 プロジェクト収支管理システムとは、プロジェクトごとの収支状況を管理できるシステムで、原価管理のほかに予算管理や売上管理といった機能を備えています。

サービス名 SMILE V Project Director
提供会社 大塚商会
特徴(箇条書きで3つ程度) ・プロジェクトごとの原価を管理できる
・同社の勤怠管理システム「勤次郎Enterprise」と連携すれば、勤怠情報から算出された労務費が原価に反映される
費用 要問合せ
おすすめの企業 IT、広告、コンテンツ制作等のサービス業
公式URL https://www.otsuka-shokai.co.jp/erpnavi/product/project-director/

 最後に、原価低減活動の事例を紹介します。

 小規模な建設業で、ウッドショックによる資材の高騰を機に原価低減活動を実施した例があります。

 この企業では、今まで過去の経験や感覚から見積もりを出していましたが、資材等の材料の見直しや資材の価格を算出したうえで見積もりを作成することに。それにより材料費を約20%削減できました。

 小規模な飲食業の原価低減活動を実施した例です。

 食材は高騰するものの価格への転嫁が難しいというジレンマの中で、メニューの見直しや一部のメニューで食材を変更。仕入れた食材を効果的に活用したことで利益率が改善に向かった例があります。

 この事例では真空調理機を導入して、食材の保存期間を延ばすなどの工夫も行い、仕入れた食材を最大限活用する取り組みを行っています。

 原価低減活動と聞くと難しく感じる方も多いかもしれません。もちろん、大規模な原価低減活動には手間もコストもかかります。

 しかし、一方で数円、数十円の削減も、立派な原価低減活動だとも感じます。例えば、少しだけ材料をムダにしない、少しだけ時間をムダにしないなどです。

 まずは「ムダを減らしましょう」といった簡単にできる呼びかけから始めてみるのも良いでしょう。