業務の属人化を解消するには?原因や事例をもとに5つの解決策を紹介
業務をしている中で、特定の人物が不在なことで苦労をしたという経験はありませんか? このような困り事を引き起こしている原因のひとつが、業務の属人化です。本記事で、属人化が起きる要因や解消のメリット、解消する5つの方法などを、業務改善支援をしている中小企業診断士が解説します。
業務をしている中で、特定の人物が不在なことで苦労をしたという経験はありませんか? このような困り事を引き起こしている原因のひとつが、業務の属人化です。本記事で、属人化が起きる要因や解消のメリット、解消する5つの方法などを、業務改善支援をしている中小企業診断士が解説します。
目次
属人化とは、特定の人物しか業務の進捗や進め方について把握できていない状況のことです。
例えば、「退職者との業務引き継ぎがうまく出来ずに案件対応に困った」といったものや「家族の問題で急遽不在になった担当者でなければ分からない業務があった」といったものは、属人化の具体例と言ってよいでしょう。
“業務の属人化”というとマイナスイメージを持たれるケースが少なくありません。
しかし、業務の属人化にはメリットもあります。例えば、自分一人での業務対応により、改善の工夫や効率化を見つけることができ、専門性が高まりやすい、などです。その専門性により顧客からの信頼を受け、自身のモチベーション向上にも繋がりやすいでしょう。
とはいえ、業務の属人化は、企業が大きな損失を受ける可能性があるため、可能な限り解消すべきです。
特定の人物が不在になることで対応が遅くなれば、取引先からの信用を失い兼ねません。また、担当者の負担が大きくなりやすいことで、ミスが生じやすくなることもあるでしょう。
そのミスが早く発覚すれば企業としてのリスクを最小限に押さえることができますが、万一ミスの隠匿があれば、取引先からの信用を失うことに繋がります。
企業が顧客と良好な関係を続け、利益を得ていくためにも、業務の属人化は解消しなければならない問題なのです。
なぜ業務の属人化が起きてしまうのでしょう? 筆者が業務改善支援をする中で属人化の原因を見ていくと、次の4つに集約できます。
以下から具体的に説明します。
業務において専門的な知識や技術が必要な場合、業務の属人化が起きやすくなります。なぜならば、それらの専門的な知識や技術は誰もが持っているわけではありませんし、短期間で身につくものではないからです。
たとえ未経験者だったり経験が浅い人だったりしても、それを読めば誰もが業務対応できるような業務マニュアルがあれば、業務の属人化は生じないでしょう。
しかし、“それを読めば誰もが業務対応できるような業務マニュアル”というものは、誰でも作成できるというわけではありません。
懇切丁寧に分かりやすく書かれた業務マニュアルが作れる人というのは総じて業務に忙殺されているというケースが散見されます。そもそも、業務マニュアルを作る時間をねん出することが困難なのです。
仮に、時間を確保して“それを読めば誰もが業務対応できるような業務マニュアル”というものを作ったとしましょう。しかし、マニュアル作成に対して、きちんと評価をしてくれる会社は多くありません。直接的な売上貢献・利益貢献に評価が集中するからです。
会社が評価してくれないとなると、忙しい時間を使ってまで属人化解消に向けた改善をする従業員がいるでしょうか? 評価に繋がらない業務は、後回しにされることが多いものです。
「この業務がなくなれば社内での立場がなくなる」と感じて、あえて業務を属人化していく担当者というのも、中にはいます。また、頼られると嬉しいと感じる人の中にも、頼ってほしい気持ちが強いばかりに、あえて業務を属人化することもあるのです。
日々忙しく働いている従業員が多いと言われる日本の企業。企業において業務の属人化を解消することは難しいのでしょうか? いいえ、決してそのようなことはありません。
次の5つのポイントを押さえることで、業務の属人化解消は実現が可能です。
以下から具体的に説明します。
業務工程が長かったり複雑だったりすると、それを理解して実行できる人物が限定されてしまうので、業務の属人化につながりやすくなります。できるかぎり仕組みはシンプルにしましょう。
具体的には、工程一つひとつを書き出し、見える化します。その上で、それらの工程を単純化できないか、複数の人材の目で確認していきます。
このような作業で刷新された業務工程であれば、担当者の専門性が多少乏しかったとしても、業務がしやすくなります。また、業務の仕組みがシンプルになっていれば、業務マニュアルも作りやすいです。
業務改善のアイデアを出す機会を用意するのもひとつです。
参加者はその業務に関わっている従業員同士でもよいですし、場合によっては、他業務の担当者に入ってもらうこともよいでしょう。自分ひとりの目線だけでは気付けなかった業務改善ができやすくなります。
また、このようなアイデア出しの機会は、一度ではなく定期的に開催しましょう。事前に時間を確保することで、忙しさを理由に業務改善の機会が失われることを防げます。
私の支援先企業では、2週に一度、水曜日の1時間を業務改善のアイデア出し時間として徹底しています。週の真ん中だと業務が落ち着いていている上、従業員の疲れがピークに達していないので、前向きなアイデア出しがしやすいそうです。
業務をする上で得た知識やノウハウは、企業の宝です。しっかり蓄積し、活用していくことで、専門性を持つ従業員増加に繋がります。
また、知識やノウハウの蓄積・活用を促進していきたいということであれば、評価項目の中にも“知識やノウハウの蓄積・活用”への貢献度を設けましょう。知識やノウハウの蓄積・活用が社内で評価されるということが体感できれば、従業員は積極的に動けるものです。
業務の責任範囲が広いと、業務のシンプル化や業務改善が進まないケースがあります。「自分がそこまで責任を取るのは厳しい」という想いから、元に戻ってしまうのです。
可能な限り、業務の仕組みがシンプル化できたタイミングで業務責任についても分散しておくとよいでしょう。
ここまで書いてきたことを自分の手で直接やろうとすると、手間暇のこともあり、大変です。今は、属人化解消として使いやすいITツールがありますから、ITツールに頼れるところは頼りましょう。
ここでは、業務の属人化を解消するために使いやすいITツールを3つ紹介します。
具体的におすすめしたサービスについては、いずれも無料トライアルが可能です。実際にツールを触ってみて、業務の属人化解消ツールとして使いやすいか試してみてください。
WordやPowerPointといったソフトで業務マニュアルを作成している企業が少なくありませんが、マニュアル自動作成ツールはぜひ使ってみてください。業務マニュアルを作成する上での手順が簡単になったり、マニュアル作りの素人でも高度なマニュアル編集ができます。
おすすめしたいマニュアル自動作成ツールは、「COCOMITE」と「Teachme Biz」です。
おすすめのマニュアル自動作成ツール | 特徴 |
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COCOMITE | 初心者でも使いやすいような作りです。 また、フォルダやファイルのリンクを共有できるので、関係者に「ここを見て」と素早く伝えられます。 |
Teachme Biz | 企業規模の大小にかかわらず幅広い業種で使われています。情報の表示・非表示が容易なので、その時の状況に合わせて分かりやすいマニュアルが提示しやすいです。 |
知識やノウハウを一か所に集約して社内に共有するためのツールです。
おすすめしたい社内wikiiツールとして、「Dropbox Paper」と「Qast(キャスト)」があります。
おすすめの社内wikiiツール | 特徴 |
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Dropbox Paper | ドキュメント作成・共有に特化しています。 Dropboxユーザーなら無料で使えるので、すでに社内でDropboxを使っているなら導入しやすいツールといってよいでしょう。 |
Qast | Q&Aとメモを使って知識やノウハウを蓄積します。 匿名での質問機能があるので、広く知識やノウハウを集めたいという企業にマッチしていると言えるでしょう。 |
知識やノウハウを蓄積するだけではなく、従業員の間でスムーズにやり取りするためのコミュニケーションをサポートするツールです。
「NotePM(ノートピーエム) 」と「kintone」の2ツールをおすすめします。
おすすめのナレッジマネジメントツール | 特徴 |
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NotePM | マニュアル作成ツールとしても有名です。 ページの新規作成や更新の際に特定従業員に知らせることができる機能が使えます。 |
kintone | テレビCMを通じて知っているという人も多いのではないでしょうか。サンプルが100種類以上あるので、ありとあらゆる情報の蓄積・共有はもちろん、事業活用へのヒントにも繋がりやすいツールです。 |
少子高齢化が進む今、業務の属人化解消は、限りある経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報・ノウハウ)を有効活用するためにも実現しなければならない課題となっています。
業務の一つひとつに潜んでいる不満・ストレスを解消することで、業務の属人化解消に繋がります。また、業務が進めやすくなれば、企業内で働く従業員の満足度は向上し、離職率を押さえることができるでしょう。
“思い立ったが吉日”です。まずは「この業務ってどうなっているの?」と声を掛けるところから始めてみてください。それこそ、業務の属人化解消に向けた第一歩です。
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