目次

  1. 社内アンケートとは
    1. 社内アンケート実施目的①従業員満足度の向上
    2. 社内アンケート実施目的②従業員のエンゲージメントの向上
    3. 社内アンケート実施目的③組織の課題解決
  2. 社内アンケートを実施するときのポイント
    1. ポイント①目的にあわせて対象者を選定する
    2. ポイント②最初にスケジュールをおおまかに決める
    3. ポイント③対象者の環境に合わせて実施方法を選ぶ
    4. ポイント④目的に合わせて質問項目と内容をデザインする(例文付き)                      
    5. ポイント⑤実施結果の活用方法を事前に検討する
  3. 社内アンケートはWebツールを利用しよう
    1. ツールの選び方①自社に合ったテンプレートや機能で選ぶ
    2. ツールの選び方②操作のしやすさで選ぶ
    3. ツールの選び方③費用対効果を考慮して選ぶ
    4. ツールの選び方④サービスの安定性で選ぶ
  4. 社内アンケートにおすすめのツール
    1. おすすめツール①スマカン
    2. おすすめツール②EXIntelligence
    3. おすすめツール③パルスアイ
    4. おすすめツール④ラフールサーベイ
  5. 社内アンケートツールを使ってアンケートを取るときのコツ
    1. コツ①すべてをツールで行おうとしないこと
    2. コツ②定期的にコスト管理を行うこと
    3. コツ③ツールに関する最新情報の収集を定期的に行うこと
  6. ツールは社内アンケートの必需品

 社内アンケートとは、会社が従業員を対象に、定期的に実施するアンケート調査のことです。「従業員満足度調査」や「エンゲージメント調査」などと呼ばれることもあります。

 『労政時報』(第3971号/19. 4.26号)によれば、2018年の調査では対象の大手企業のうち、従業員満足度調査を実施した企業の割合が30%を超えました。

 会社が社内アンケートを実施する目的は各社様々ですが、一般的には「従業員満足度の向上」「従業員のエンゲージメントの向上」「組織の課題解決に活かすための状況把握」のために実施されています。

 当然のことですが、現在の従業員の満足度を知らずに向上させることはできません。そこで、従業員が現状の職場環境や仕事に対してどのように感じているか、どのような点で満足していて、どのような部分で満足していないのかという現状把握ができる社内アンケートが役立ちます。

 アンケートで従業員が現在の仕事や職場に対してどの程度満足しているかを把握できたら、どうすれば向上させることができるか、講じていくことが可能になります。 

 社内アンケートは、エンゲージメントの向上を目的として実施されることもあります。

 エンゲージメントは、「平成30年版 労働経済の分析」で紹介されている「ワーク・エンゲイジメント」と同義と推察され、「仕事に誇りや、やりがいを感じている」(熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)の3つが高まった状態を指しています。

 従業員が能動的に仕事に取り組み、いきいきとしていて仕事にやりがいを感じている状態を「エンゲージメントが高い」と表現します。その状態にする有効な策を講じるには、やはり現状の把握が必要です。そこで、社内アンケートが用いられるときがしばしばあります。

 どのような組織も通常はいろいろな課題を抱えているものですが、目に見えて分かりやすい課題ばかりではありません。周囲には見えづらいメンタル不調を抱える従業員や、職場や仕事への不満を持っていながらも上司や同僚には全くそんなそぶりも見せない従業員がいるかもしれません。

 そのような将来的に職場の不安要因になりえるサインにできるだけ早く気づき、リスクが大きくなる前に手を打つようにすることが、社内アンケートを実施する目的の一つです。

 社内アンケートを実施するには、以下のポイントを押さえるといいでしょう。

  1. 目的に合わせて対象者を選定する
  2. 最初にスケジュールをおおまかに決める
  3. 対象者の環境に合わせて実施方法を選ぶ
  4. 目的に合わせて質問項目と内容をデザインする
  5. 実施結果の活用方法を事前に検討する

 まず、目的に合わせてアンケートの対象者を決定します。正社員のみを対象とするか、契約社員や派遣社員なども対象とするかによって、アンケート結果の全体像が目的に沿った結果が得られるかどうかにも影響を及ぼします。

 例えば、全従業員の中で正社員の比率が低く、パートやアルバイト契約の従業員によって事業の中心的な活動を行っている場合、アンケートの対象を正社員に限定してしまうと本来意図した目的に合ったアンケート結果が得られない可能性がありますので注意しましょう。

 社内アンケートを実施する際のスケジュールを、対象者を選定した段階で全体スケジュールをおおまかに決めておくのもポイントです。

 実際には、実施内容の詳細に応じて具体的なスケジュールを確定させていくことになりますが、このタイミングである程度立てておくことで、その後の詳細を検討を進めやすくなります。

 スケジュールを決めるときは、実施に向けての準備、実施と回答の回収、結果についての分析から次の実施に向けての準備など、一つのサイクルをイメージし、それをどのような日程で行うか、といった視点で考えるといいでしょう。 

 一般的に、社内アンケートの実施方法には大きく2種類あります。

 一つは紙の質問票を対象者に配布して手書きで回答を記入してもらい、記入済みの紙を後日回収する方法です。もう一つは、社内または外部のネットワークに入力用フォームを用意して対象者に各自そのフォームにアクセスしてもらい、オンライン入力で回答してもらう方法です。

 どちらも一長一短がありますが、対象者が全員オンライン入力できる環境にある場合は、オンラインによる回答のほうが集計時間が短いメリットがあります。

 なお、実施方法は全体のスケジュールに大きな影響を及ぼすため、なるべく早めに決めることをおすすめします。

 対象者が決まったら、アンケート実施の目的に沿って、質問のカテゴリーを検討する必要があります。

 カテゴリー数について特に最適な数はありませんが、調査結果をどのように活用するのかによっても、適切なカテゴリーの分け方や細分化レベルが変わってきます。

活用の目的 カテゴリー例
担当業務や昇進・昇格への意欲、成長実感を測る ・業務内容に対して感じること
・仕事に対するモチベーションについて
・自分自身の働き方について
職場の人間関係や組織風土の受け入れ感を測る ・職場の人間関係に対する気持ち
・職場の慣習について思うこと
人事評価や給与面での満足度を測る ・人事評価に対して感じること
・給与に関して思うこと
・待遇に対する希望

 他社の事例を参考にするのもいいでしょう。『労政時報 第3971号/19. 4.26号』で紹介されたニチレイの例では、「職場について」「業務中に感じる気持ち」「あなた自身について」の3カテゴリーを設定し、その中で5択の設問と自由記入形式の設問を約130問が用意されています。

 また、質問を作成する上では、従業員が回答する際に一つひとつの質問に、それほど深く考えずに答えられる質問とするように配慮することが大切です。

 例えば、質問の意味が分かりづらい、またはどちらにもとれるような表現の質問はテスト段階で外したほうがいいでしょう。従業員がアンケートへの回答を避けようとしたり、正直に答えずいい加減な回答をしようとしたりするリスクを避けるためです。

NG質問例 OK質問例
・給与は多いとは言えないが、会社の状況から考えてやむを得ないと感じるか?
・上司の指導や指示は概ね適切だと思われるか?
・チーム内の人間関係に大きな問題はないか?
・真面目な社員は評価されていると感じるか?
・残業時間は対応できないほどではないと感じるか?
・給与は仕事の内容と量に対して妥当だと感じるか?
・上司の指導や指示は業務に対して適切であると感じるか?
・チーム内のコミュニケーションは良好な状態だと感じるか?
・納得できる基準で評価を受けていると感じるか?
・残業時間は負担に感じない程度で収まっているか?

 アンケートの実施結果をどのように活用するのかを事前に検討しておくことも重要です。

 活用の仕方を考えておかないと、質問の的が外れていたり、聞くべき質問ができていなかったりなどで、アンケートの再実施が必要になるケースが多々あります。

 ただ、短い期間で同じような社内アンケートを何度も実施するのは、従業員にとって好ましいことではありません。従業員満足度が下がる、人事・総務部門の負担を増やす原因にもなります。

 実際にアンケートを作成する場合、質問を一つひとつ考えて作成することも可能ではありますが、あまり効率的ではありません。

 アンケート実施の企画から実施、その後のフォローまでに必要なタスクとスケジュール管理も、想像以上に手間がかかります。その手間を省くのに便利なのが、社内アンケートに特化したWebツールです。

 ツールを選ぶときは、次の4点を意識するといいでしょう。

  1. 自社に合ったテンプレートや機能で選ぶ
  2. 操作のしやすさで選ぶ
  3. 費用対効果を考慮して選ぶ
  4. サービスの安定性で選ぶ

 アンケートを作成する際、あらかじめよく使われる質問のテンプレートを利用できるのがWebツールの魅力の一つです。調査したい分野に関する質問のテンプレートや機能が充実しているツールを利用すると、作業の効率化が見込めます。

 アンケート作成にかかわる担当者がアプリケーションやツール類の操作に不慣れな場合や、比較的シンプルなアンケートを想定している場合は、ツールの操作性で選ぶのも一つです。直感的に操作できる分かりやすいツールを選ぶことで、従業員からのツールの操作に関する質問を減らす効果が期待できます。

 ツールの選択でやはり無視できないのは費用対効果です。無料で利用できるツールもありますが、機能が限定的なものも少なくありません。社内アンケートは定期的に実施することが重要なため、継続的な費用対効果を考慮して採用することも必要でしょう。

 サービスの安定性も選ぶ基準の一つです。機能面で優れたツールであっても、エラーが定期的に発生するなど、ツールが安定して快適に利用できないと利用者も管理者もストレスが溜まります。

 ツール選びのポイントを踏まえて、おすすめのツールを4つご紹介します。

 大手企業の導入も多い業界大手のタレントマネジメントシステムで、アンケート機能が充実しているツールの一つです。

ツール名 スマカン
提供会社 スマカン株式会社
特長 ・アンケートのテンプレートが充実している
・シンプルで分かりやすい画面設計
利用時の注意点 ヘルプ機能やマニュアルには詳しい説明が足りないと感じることがある
費用 利用人数と利用する機能に応じて異なる
無料トライアルあり
おすすめの企業 目的が異なるアンケートを定期的に実施したい企業
公式URL https://smartcompany.jp/

 従業員体験(Employee experience)を可視化してタレントマネジメント機能と連携させるサーベイ機能(アンケート)を持つ、有名企業の導入も多い業界大手のツールです。

ツール名 EXIntelligence
提供会社 株式会社HR Brain
特長 ・シンプルな設計で使いやすいUIデザイン
・サポート体制も充実している
利用時の注意点 初期設定が若干複雑と感じる場合あり
費用 問い合わせが必要
無料トライアルあり
おすすめの企業 タレントマネジメント機能と連動させて社員アンケートを実施したい企業
公式URL https://www.hrbrain.jp/

 比較的安価で導入のハードルが低いのが強みで、組織の活性化につながる指標をスコア化でき、毎回のアンケートの負担が低い点でおすすめです。

ツール名 パルスアイ
提供会社 株式会社ジャンプスタートパートナーズ
特長 全従業員に毎月4つの質問をすることで離職防止につなげる仕組みと安定性がある
利用時の注意点 自社向けにカスタマイズしたい部分が多い場合は、運用の難易度が高くなる可能性がある
費用 220円/人/月
無料トライアルあり
おすすめの企業 毎月のアンケート結果を流れで把握して対策を検討したい企業
公式URL https://jsps.biz/

 ストレスチェックをアンケートで定期的にチェックでき、ストレスを抱えている従業員の早期発見をしたいときにおすすめのツールです。

ツール名 ラフールサーベイ
提供会社 株式会社ラフール
特長 個別のストレスチェックと同時に組織の状態を診断することが可能
利用時の注意点 導入時のデータ入力方法や操作がやや複雑
費用 初期費用10万円+400円/人/月
無料トライアルあり
おすすめの企業 メンタルヘルス状態とアンケートを連動させて従業員満足度の改善に取り組みたい企業
公式URL https://survey.lafool.jp/

 最後に、ツールを導入したにも関わらず、かえって作業が増えたといった状況にならないように注意すべきポイントをお伝えします。

 ツールは確かに便利で効率的ですが、社内アンケートの実施によって実現しようとすることすべてを一つのツールで行おうとすると、色々な面で無理が生じてくることがあります。ツールで対応すべき部分とそうでない部分を常に意識して運用するようにしましょう。

 社内アンケートツールを利用するとき、ツールを管理する人員の配置やツールをうまく使うための教育の実施などが必要になります。コストの予算とその管理は、ツールの費用以外の部分も見ながら定期的に行うようにしましょう。

 いずれのツールも随時バージョンアップしていきます。導入したツールにこだわらず、自社にとって価値の高い機能を搭載したり、新サービスを提供したりしているツールがほかにないか、定期的に情報収集することもコツの一つです。

 近年の職場環境では、働き方改革、ハラスメント対策、新型コロナウイルス感染症対策によるテレワークの推進など、従業員の会社に対する満足度や働く意欲に影響を与える要因が数多く存在しています。

 従業員満足度を把握できる社内アンケートは、今後も企業の重要な施策として注目されるでしょう。

 今回ご紹介したWebツールの特長をうまく利用すれば、社内アンケートの実施のハードルはかなり下がります。自社に合ったツールを見つけて効果的な社内アンケートを実施していただき、従業員の方々の「今」をしっかり捉えて業績アップと共に、従業員の満足度と共にエンゲージメントのアップも目指していただければと思います。