目次

  1. 「Go To」は飛行機代の補助を
  2. インバウンド回復は欧米・豪州から
  3. マイクロツーリズムの行方は

 国の旅行支援策「Go To トラベル」は2020年末から中断したままになっています。星野代表は「2年前とは状況が異なります。過去の改善ではなく現状にあった支援が望ましい」と話しました。

 星野代表によると、同社の施設において、地方都市は近距離の旅行需要を掘り起こせた一方、イベント中止や飲食店の休業が続いた都市部に加え、飛行機での遠距離移動が自粛傾向にあった北海道、沖縄は苦戦しました。

 県民割やブロック割が先行する地域もありますが、「マイクロツーリズムの効果が薄い地域には、県民割やブロック割も効きにくい」と言います。

 このため、「Go To トラベル」再開に向けて「都市部や飛行機で行く観光地を優先して手を打つべきではないか。宿泊施設よりも飛行機代に対する補助が大切になるかもしれません」と提言しました。

星野リゾートの星野佳路代表(同社提供)

 アフターコロナを見据えたインバウンド需要の回復も、観光業界の大きな課題です。

 星野代表は「22年のゴールデンウィークから、海外との行き来が動き出す兆しが見えます。25年の大阪万博を成功させるべく、観光産業は動かないといけないし、目標にするべきです」と話しました。

 コロナ禍以前はインバウンド客のうち、中国や韓国など東アジアからが7割を占めましたが、星野代表は経済活動が再開されつつある欧米など残り3割の地域に着目しています。

 「ウクライナ情勢などの政治的な動きが、消費者マインドに影響してくる可能性があります。まずは、(経済活動の再開で)インバウンド需要が戻りやすい欧米や豪州から日本に来てもらえるように考えるべきでしょう」

 星野リゾートは、近隣に住む観光客を呼び込む「マイクロツーリズム」を提唱してきました。インバウンド需要が回復基調に乗っても「マイクロツーリズムは大きなマーケットになる」とみています。

 「星野リゾートはコロナ禍の前から、オフシーズン対策としてマイクロツーリズムに取り組んでいました。オンラインでの予約や旅の魅力づくりなど、マイクロツーリズムの仕組みは、今後も観光業のオフシーズン対策に生かせるのではないでしょうか。そうすれば、観光需要の平準化につながり、従業員雇用を非正規から正規に変える流れも生まれてきます」

星野リゾートが2022年5月、金沢市に開業を予定している「OMO5金沢片町」(同社提供)

 星野代表は観光需要の復活に向けて、補助の制度以上にムードを変えることの大切さを強調しました。

 「旅行に行ってもいいよという(国の)メッセージや情報が足りないように感じます。ここを発信するキャンペーンが一番ではないでしょうか」と訴えました。