41年前の1981年8月6日、香川県仁尾町の電源開発会社仁尾太陽熱試験発電所で、太陽熱による発電に成功しました。

1000キロワット級の本格的な太陽熱発電は世界初でした。

香川県仁尾町の発電所で、世界で初めて1000キロワット級の本格的な太陽熱発電に成功したことを報じる1981年8月7日付朝日新聞朝刊(東京本社版)

試験発電所の建設計画を報じた1978年5月24日付朝日新聞朝刊(東京本社版)によると、仁尾町は雨量が全国平均の約半分。

日照時間も1日平均6時間で平均より上です。

塩田跡地を造成した平らな土地があり、応募した全国の8地域から建設地に選ばれました。

 

そもそも太陽熱発電と太陽光発電の違いは何でしょうか。

2010年12月19日付朝日新聞朝刊(東京本社版)に説明があります。

それによると、太陽光発電はパネルを使って太陽の光を直接電力に変換します。

家の屋根などに置ける便利さはありますが、電気はためにくいため、夜の電力をまかなうのが困難です。

一方の太陽熱発電は鏡で反射した光で油を熱し、その油を1カ所に集めて水を沸騰させ、火力発電などと同様にタービンを回して電気を起こします。

熱は電力よりためやすいので、夜でも発電できるそうです。

通商産業省(当時)のサンシャイン計画に基づいて、電源開発会社(当時)が香川県仁尾町の塩田跡地に建てた仁尾太陽熱試験発電所。手前が「曲面集光方式」の2号機、後方が「タワー集光方式」の1号機=1981年、朝日新聞社

世界初の本格発電に成功した翌日の朝日新聞紙面では、「日本は世界のソーラー熱発電レースのトップを切った」という電源開発会社の担当者の声が紹介され、興奮が伝わります。

 

しかし、そのわずか数年後、日本は実用化を断念します。

1989年9月12日付朝日新聞朝刊(東京本社版)によると、「太陽熱発電は大規模な施設が必要で、広い乾燥地域をもつ国にしか向かない」「日本は(中略)五年前実用化をあきらめた」とあり、費用対効果の問題で技術開発は中断されました。

また「家の屋根など細切れの場所でも可能な太陽光発電に期待をかけている」とあり、太陽光へのシフトの予兆が垣間見えます。

 

その後、太陽熱への注目が低調な時代が続きます。

そんな中、2010年12月19日付朝日新聞朝刊(東京本社版)に、ドイツを中心としたヨーロッパ勢が北アフリカでの太陽熱発電に注力しているという記事が載りました。

この時点で世界の発電量のうち、太陽光は太陽熱の7倍だったそうですが、「土地はただ同然で日差しが強い砂漠での大規模開発に適していることから、業界では『熱』が『光』との差を急速に縮めていくとみている」と紹介されています。

記事中には「あのまま続けていれば、間違いなく世界一になっていた」という日本の業界関係者の声もあります。

環境省の委託を受け、三菱日立パワーシステムズが横浜市中区に建設した太陽熱発電施設について報じる2016年8月5日付朝日新聞朝刊(東京本社版)

国内でも近年、動きがありました。

実用化を断念した30年以上前に比べ、地球温暖化が深刻化したことや、太陽追尾に使うコンピューターの技術などが進歩したことから、環境省が太陽熱発電の新たな実証試験を横浜市内で進めています。

 

私たちが日ごろ当たり前に使っている電気。

新たな発電の手段として、太陽熱の行方に注目したいですね。

 

(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年8月6日に公開した記事を転載しました)