4年前の2018年6月28日、週刊少年チャンピオン(秋田書店)に掲載されてきた野球漫画「ドカベン」シリーズが完結し、1972年の連載開始から46年の歴史に幕を閉じました。 

ドカベンシリーズの完結を報じる2018年6月28日付朝日新聞夕刊(東京本社版)

ドカベンは神奈川県の架空の学校「明訓高校」の活躍を描いた野球漫画です。

それまでの野球漫画では魔球や必殺技が一つの見どころでしたが、ドカベンでは配球の妙やルールの盲点を紹介する本格派の内容が人気を集めました。

 

明訓高校のモデルは甲子園常連校の新潟明訓高校です。

作者の水島新司さんは隣の中学出身ですが、家庭の事情で新潟明訓への進学を諦めたそうです。

ドカベンは後に「プロ野球編」「スーパースターズ編」などと続きました。 

 

息の長い作品になった魅力はどこにあるのでしょう。

1979年9月29日付朝日新聞朝刊(東京本社版)には「異質の個性を認め合いながらのチームワーク。これと、試合展開の意外性こそ、この漫画の面白さ」とあります。

この記事によると「ドカベン」の名の由来は、主人公・山田太郎が学校に抱えてくる「どでかい弁当箱」のようです。 

 

1978年5月2日付朝日新聞(東京本社版)朝刊の記事で、全国長者番付の53位に入った水島さんは納めた税金を「社会福祉に使ってほしい」と述べています。

原画展の売り上げを福祉団体に寄付する活動もしていたといいます。 

長者番付で上位に入り、インタビューに応じる水島新司さん=1978年5月2日付朝日新聞朝刊(東京本社版)

現実の野球界でドカベンの愛称で親しまれたのが、大阪・浪商高(現大体大浪商高)から南海ホークス(当時)に入団した香川伸行さんです。

身長170センチ、体重100キロ超の捕手で、主人公の山田太郎に似ているのが愛称の由来だそうです。

引退後は野球解説者などを務めましたが、2014年に心筋梗塞のため52歳の若さで亡くなりました。 

「ドカベンスタジアム」の愛称がある大和スタジアムでは、山田太郎の像が観客を迎える=2019年、神奈川県大和市、朝日新聞社

2018年に連載を終え、ドカベンはシリーズ合計で計205巻の大作となりました。

作者の水島さんも2020年、81歳で漫画家引退を表明し、63年間の漫画家生活に終わりを告げました。 

2022年1月、水島さんは肺炎のため82歳で亡くなりました。

 

(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年6月28日に公開した記事を一部修正して転載しました)