28年前の1994年5月6日、イギリスとフランスを結ぶ英仏海峡トンネル(ユーロトンネル)が正式に開通しました。

英仏海峡トンネルを走るユーロスター=1994年5月6日、イギリス・フランス間の英仏海峡トンネル内、朝日新聞社

当時の朝日新聞では、「英・仏『直結』時代幕開け ユーロトンネル開通」との見出しとともに、こう伝えています。

英国とフランスを結ぶ英仏海峡トンネル(ユーロトンネル、全長五十キロ、海底部分三十八キロ)が六日、正式に開通した。一番列車には、英国のエリザベス女王が乗り、ドーバー海峡の下をフランスまで通り抜けた。帰りの列車には、フランスのミッテラン大統領が同乗する。ロンドンとパリ、ブリュッセルをそれぞれ約三時間でつなぐ直行特急「ユーロスター」の運行は夏以降になるが、この開通で、英国は少なくとも交通、物流の面で「島国」の歴史に終止符を打つことになった。

1994年5月7日付朝日新聞朝刊(東京本社版)

1994年5月7日付朝日新聞朝刊(東京本社版)

イギリスとフランスの間をトンネルでつなぐ構想は、ナポレオンも1802年、強い関心を示していたとされます。

それからおよそ200年後、ついにドーバー海峡をくぐるトンネルが完成しました。

プロジェクトには、川崎重工業や三菱重工業の大型掘削機が活躍するなど、日本のトンネル技術も貢献しました。

英仏海峡トンネル工事に使われる三菱重工業製シールド掘削機=1988年2月25日、朝日新聞社

トンネルでつながったイギリスとフランス。

では、現在は――?

 

イギリスは2020年1月31日、欧州連合(EU)から離脱。

1973年にEUの前身の欧州共同体(EC)に加盟し、フランスやドイツとともに主要国の立場にありましたが、2016年の国民投票で離脱の方針を決めました。

背景のひとつにあったのが、EUからの移民の増加です。

この英仏海峡トンネルを通ってイギリスへ渡ろうとする移民・難民も相次いでいました。

 

トンネルによって「島国」に終止符を打ったイギリスですが、EU離脱後のEUとの自由貿易協定の交渉は難航。

2020年末の期限ぎりぎりで合意に達しました。

「合意なし離脱」は避けられましたが、今後イギリスとEUとの関係はどうなっていくのか――。

関心が集まっています。

 

(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年5月6日に公開した記事を転載しました)