35年前の1988年2月21日、8センチサイズのシングルCDの販売が日本国内で発売されました。

 

CDが初めて販売されたのは1982年10月のこと。

当時は直径12センチでした。

12センチCDの発売について報じる1982年7月20日付朝日新聞朝刊の記事

それまで主流だったLP(ロングプレイング・レコード)に代わる新しいメディアとして、登場しました。

1982年7月20日付朝日新聞朝刊では、CDの魅力を「デジタル再生の最大の強みは原音を忠実に、全く雑音のない状態できかせられるという点」と紹介。

レコードより音質が良いCDは「夢のオーディオ」として注目を集めました。

 

その後、20万円前後だったCDプレイヤーが5〜10万円と手の届く範囲まで値下がりし、CD人気が急上昇。

同時に、それまで音楽シーンを支えてきたレコードの売上は激減しました。

1987年12月10日付朝日新聞朝刊によると、LPレコードの生産額はCDの4分の1にまで減少したそうです。

 

そして1988年2月21日、シングルレコードに代わるものとして、ソニーとフィリップスが8センチのシングルCDを発売します。

シングルCDは若者を中心に支持を集め、売上100万枚を超えるミリオンセラーを連発しました。

CD文化は1990年代、最高潮に達します。

 

しかし、21世紀に入ると状況は一変しました。

中古店が生活に定着したことと、違法コピーが急増したことにより、CDは販売不振に陥ります。

2002年上半期には、12年ぶりにシングルCDのミリオンセラーが途切れました。

CDの販売不振を伝える2002年9月5日付朝日新聞朝刊の記事

2002年9月5日付朝日新聞朝刊では「1997〜98年に年間4億5000万枚を超えていたCDの生産数量はここ数年落ち込みが続き、2001年には3億6900万枚にまで減った。特にシングルの不振は深刻で、1997年の1億6800万枚から2001年には1億900万枚に落ち込んだ」とCDの低迷ぶりを報じています。

 

不況が続いたシングルCDですが、意外な形で持ち直します。

2003年に、お菓子メーカーなどが8センチのシングルCDをおまけとして販売する流れが生まれたのです。

江崎グリコは6月、18曲のうち1つのCDがおまけで付いた「タイムスリップグリコ(青春のメロディーチョコレート)」を発売し、600万個以上の売り上げを記録。

その後もバンダイ、サントリー、ブルボンと各メーカーが相次いでおまけCDを販売したのです。

おまけCDによる8センチシングルCDの売上復活について報じる2003年12月27日付朝日新聞朝刊の記事

2003年12月27日付朝日新聞朝刊によると、8センチシングルCDの生産枚数は1998〜2002年まで5年連続で減りました。

ところが2003年にはおまけCDの急増により、1月〜11月で累計1709万5000枚と、前年の2倍以上に回復しました。

 

とはいえ、時代の流れを止めるまでには至りません。

「好きな曲のCDを買う」という行為は、もはや当たり前ではなくなりました。

 

近年、音楽市場において存在感を高めているのがストリーミングです。

インターネット接続による配信サービスで、アップルミュージックやスポティファイなどのサブスクリプション(定額制)では、数千万曲が聴き放題となっています。

ストリーミングサービスの広がりについて書いた2019年6月23日付朝日新聞朝刊の記事

大物ミュージシャンも続々とストリーミングを解禁。

ストリーミングで再生数が爆発的に伸び、ヒットにつながるケースも増えました。

 

レコードからCD、ストリーミングと主役が入れ替わってきた音楽市場。

今後、どのように変化していくのでしょうか。

 

(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2022年2月21日に公開した記事を転載しました)