【10月6日は何の日】4年前、築地市場が83年の歴史に幕
「10年前にこんなことが…」「あのサービスは20年前から?」。ビジネスシーンの会話の“タネ”になるような、過去に社会を賑わせた話題を不定期で紹介します。
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4年前の2018年10月6日、「築地市場」(東京都中央区)が最後の営業を終えました。
オープンは1935年。
日本を代表する魚河岸、野菜の市場としての83年の歴史の幕引きでした。
もともと東京都内には日本橋に江戸時代から続く魚河岸がありました。
いまの皇居、当時の江戸城にも近く、江戸有数の繁華街の一角にありましたが、1923年の関東大震災で全焼しました。
運営する東京市(現・東京都)は日本橋には再建せず、いまの港区芝浦に一時、移設しました。
その後、当時の海軍から施設を譲り受け、築地に市場を開いたことが築地市場の始まりでした。
開場以来、築地は日本の魚河岸を象徴する存在になりました。
水産物では、最近の取引量は1日1700トン。
国内だけでなく海外からも運ばれ、国内で流通する魚介類の4分の1が「築地経由」でした。
特に、青森県の大間漁港で水揚げされた天然のクロマグロなど、良質のマグロが集まってくることでも有名に。
全国の魚屋や寿司店、居酒屋に「築地直送」「築地もの」といった看板やPOP広告が張り出され、「築地」は安心安全でおいしい魚介類として全国で親しまれるブランドになりました。
築地市場の名物の1つは、マグロであれば午前5時過ぎから始まる「競(せ)り」でした。
競りは、英訳すると「オークション(auction)」。
入荷した魚を誰にいくらで売るのかを決めるという、市場では最も大切なイベントでした。
全国の漁師や漁協から魚の販売を託された卸売業者を前に、魚を買い取って各地に流通させる仲卸業者が指のサインで買い付け価格を示しあうのが「競り」です。
最も高い価格をつけた仲卸業者が買うことができるのがルールです。
仲卸業者が指と声を張り上げることで価格をアピールし、わずか数秒で落札者が次々と決まる競りは緊張感に包まれたものでした。
その独特のやりとりは脇で見学もできるため、築地の「auction」は海外で多くのガイドブックにも紹介されました。
このため、早朝開催にもかかわらず、年間2万人を超える外国人旅行客が見学に訪れました。
朝早くから始まる取引を前に、築地市場には連日、未明から東北や北陸、近畿など全国のナンバープレートをつけたトラックが次々と乗り入れました。
長蛇の列をなすトラックから競りの会場に魚を運んだり、飼い主が決まった魚を買い付け業者のトラックに運んだりする独特の運搬車「ターレ」が所狭しと走り回る様子も、築地名物のひとつでした。
市場のすぐ脇の「場外市場」では、取引されたばかりの魚介類を販売する店や寿司店が軒を連ね、東京を代表する観光名所の1つになりました。
築地市場の施設が老朽化してきたことや手狭になってきたことを理由に、2001年に当時の石原慎太郎・東京都知事が江東区豊洲への市場移転を決めました。
移転候補先の東京ガス施設の跡地に土壌汚染問題が浮上したため、移転の是非や時期について長く検討が続けられましたが、いまの小池百合子知事が2017年、豊洲移転を最終決定し、新市場の開場を2018年10月11日と決めました。
築地市場については移転準備などもあり、新市場の開場に先立つ10月6日に閉場することが決まりました。
築地市場は東京五輪・パラリンピックが当初、開かれる予定だった2020年夏までに解体を終える計画が立てられました。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で五輪やパラリンピックは1年延期になりましたが、解体工事は予定通り進み、2020年7月に終了しました。
安心安全な取引と迅速な流通という築地市場が果たしてきた役割はいま、2.3キロ離れた豊洲市場に引き継がれています。
市場の拠点は移っても、築地や「TSUKIJI」のブランド名は、いつまでも親しみを込めて残ることになりそうです。
(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年10月6日に公開した記事を転載しました)
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