16年前の2006年9月14日、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の先駆けの1つ「mixi」を運営するミクシィが東京証券取引所マザーズに上場しました。

ミクシィが東証マザーズに上場したことを伝える2006年9月14日付朝日新聞夕刊(東京本社版)

公式サイトによると、mixiは求人情報サイトを運営する有限会社イー・マーキュリー(2006年2月に株式会社ミクシィへ社名変更)が2004年2月に運営を始めました。

 

SNSが今ほど一般的でなかった時代です。

2006年6月29日付朝日新聞朝刊(東京本社版)は、SNSを「ネット上で交友関係を広げるソーシャル・ネットワーキング・サービス」と説明。

mixiの日本でのネット利用者の総利用時間が5月、ポータルサイトの「Yahoo!ジャパン」、ネット商店街「楽天市場」に次ぐ3位になったとして「SNSの集客力が、ポータル、物販サイト並みに伸びている」と報じています。

 

急速に人気を集めた理由は何だったのでしょうか。

上場翌日の2006年9月15日付朝日新聞朝刊(東京本社版)によると、mixiは既存会員による紹介制。

利用者は身元を明かした上で、日記を書いたり、他の利用者とメッセージを交換したりします。

「お互い身元がわかり、安心して仲間入りできる点が受け会員数は570万人に達し」たといいます。

同じ記事は、上場当日のミクシィ株に買い注文が殺到し、「初日は値がつかない人気ぶり」だったと報じています。

上場初日に記者会見する笠原健治社長。「調達資金の大半は今後のサービス拡充の資金に充てる」と話した=2006年09月14日、東京証券取引所、朝日新聞社

ただ、2011年ごろから事業が伸び悩みます。

2013年5月には、創業者の笠原健治社長が退任し、代表権のない会長に就く人事を発表。

2014年3月期には2億円の純損失を計上し、上場以来初の赤字に転落しました。

2014年7月4日付朝日新聞朝刊(東京本社版)によると、フェイスブックやツイッター、LINEといった競合サービスに利用者を奪われました。

パソコンやガラケーの広告収入が多く、スマホへの対応も遅れたといいます。

 

一方、この停滞期に事業の軸足をスマホ向けゲームに置き始めます。

2013年10月、後に大ヒットする「モンスターストライク」の提供を開始。

2015年8月14日付朝日新聞(東京本社版)によると、モンストは売上高の約9割を占めるまでに成長し、2015年4~6月期のミクシィの売上高は過去最高の500億円に達します。

ダウンロード数で国内首位だったパズル&ドラゴンズ(パズドラ)の運営会社ガンホー・オンライン・エンターテイメントの売上高を逆転しました。

ミクシィの売上高がガンホーを上回ったことを報じる2015年8月14日付朝日新聞朝刊(東京本社版)

事業の多角化の中で、負の歴史も生まれました。

2015年に買収して子会社化した「フンザ」が運営する「チケットキャンプ」で、高額転売が問題化。

2018年1月12日付朝日新聞朝刊(大阪本社版)によると、転売目的でコンサートチケットを違法に購入した疑いで、当時の社長らが書類送検されました。

ミクシィは2018年5月、チケットキャンプを閉鎖しました。

 

創業者の笠原健治さんは、今もミクシィの会長職にあります。

AERA(2021年3月29日号)によると、笠原さんの中ではずっと「起業家」の火が燃え続けているといいます。

自身が中心となって2015年にリリースした家族向け写真共有サービス「みてね」は、2021年3月に利用者が1000万人を突破しました。

 

笠原さんはAERAの記事の中で、学生時代に求人サイトを作って起業した自身の経験を踏まえ、学生にこうエールを送っています。

「若い消費者たちを一番わかっているのは同じように若い人たち」「時代を彩るサービスが学生から生まれてほしいですね」。

 

ミクシィは2019年にプロバスケットボールチーム「千葉ジェッツ」の運営会社を子会社化するなど、スポーツ事業にも力を入れています。

ミクシィはこれからも、時代に合わせて会社の形を変えていきそうです。

 

(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年9月14日に公開した記事を転載しました)