社名の勘違いから屋敷林伐採サービス 技術を見える化すると依頼殺到
富山県西部にある氷見市で建物の解体工事会社には、社名ゆえ「屋敷林を伐採してほしい」という相談が寄せられていました。そこで、本業の技術を生かし「屋敷林伐採サービス」として打ち出したところ依頼が殺到。本格的に事業として取り組むか検討することになりました。そんな「技術の見える化」を支援した氷見市ビジネスサポートセンター Himi-Biz(ヒミビズ)から紹介します。
富山県西部にある氷見市で建物の解体工事会社には、社名ゆえ「屋敷林を伐採してほしい」という相談が寄せられていました。そこで、本業の技術を生かし「屋敷林伐採サービス」として打ち出したところ依頼が殺到。本格的に事業として取り組むか検討することになりました。そんな「技術の見える化」を支援した氷見市ビジネスサポートセンター Himi-Biz(ヒミビズ)から紹介します。
目次
売木林業は、長野県売木村の製材を使用した高級住宅を建築する会社として、2004年に創業し、その後、建物の解体工事業を請け負うようになりました。現在では、この解体工事業を中心に事業を展開しています。
この売木林業の坂下祐生さんがHimi-Bizに相談に訪れたのは、2020年9月のことでした。地域貢献にもつながり、本業の売上向上にもつながる新規事業を検討したいという内容でした。
売木林業のセールスポイントを確認するために、坂下さんとこれまで会社に寄せられている問い合わせ内容について意見交換しました。
その中で坂下さんから、「弊社の名前に林業という言葉が入っているので、林業の会社だと勘違いをしたお客様から、屋敷林の伐採に関する相談があるんです」という話がありました。
屋敷林とは、強風が発生する地域で風よけをすることを目的に住居周りに植えられた木々のことで、富山県ではフェーン現象による強風対策や、住居の修繕を目的に、屋敷林を育てている住居が多いのが特徴です。
一方で、屋敷林は枝打ちなど手入れが必要です。核家族化や少子高齢化の影響により放置されるケースが増えており、屋敷林の伐採は地域課題にもなっています。坂下さんの会社にも、十分に管理ができずに困っているという人から屋敷林の伐採に関する相談が入っているということでした。そこで、坂下さんにどう対応しているのか尋ねました。
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すると、難易度の高い伐採依頼は受けられないものの、難易度の低い伐採については、本業である建物の解体技術を活かして対応しているということでした。
坂下さんとの意見交換の中で、屋敷林を取り巻く状況を整理しました。
その上で、改めて屋敷林の伐採を行う新サービスを用意し、屋敷林管理の悩みを解消するサービスを提案してみてはどうか、また、難易度の高い屋敷林の伐採は、地域の林業事業者と連携し、柔軟なサービス提供ができるようにしてみてはどうか提案しました。
坂下さんとの意見交換の中で、伐採した屋敷林は製材やウッドチップとして加工できることがわかりました。伐採した屋敷林を再利用していくことができれば、SDGsを実現していくためのサービスとしても展開をすることができるほか、場合によっては、空き家の解体の相談にもつなげていくことができるのではないかと提案しました。
坂下さんは新たに「屋敷林伐採サービス」の開発に取り組むことを決めました。Himi-Bizでは市内林業関係者とのビジネスマッチングのほか、サービス紹介に向けたチラシやホームページ作成のサポートを行いました。
富山県ならではの社会課題解決に向けた新サービスは、地元新聞社や地元テレビ局から注目される取り組みとなり、サービス開始直後から、屋敷林の管理問題に悩む方から問い合わせが発生しました。時には、県境を越えた石川県からも、屋敷林の問題に悩む相談が寄せられています。
屋敷林伐採サービスは、地域貢献を主目的として開始したサービスではあったものの、予想を超える反響から、屋敷林の伐採サービスは専属担当者を設置して、より本格的に事業として取り組むことを検討しています。
新商品や新サービスを考える際、実はこれまで当たり前に取り組んできた仕事の中に、新たなビジネスの種が見つかることもあります。一方で、サービスの提供者自身は、自社の技術やノウハウを活かし、当たり前にやっている仕事だと捉えていることも少なくありません。
今回の売木林業の坂下さんの場合も、屋敷林の伐採自体は既に取り組んできた仕事でした。今回、新サービスとして「技術の見える化」を行うことにより、新規顧客の開拓につながりました。また、空き家に隣接する屋敷林の伐採の依頼も多数寄せられており、将来的に本業である解体工事にもつながる見込みが生まれています。
Himi-Bizでは、相談者が考えていること、取り組んできたことをしっかりと聞いた上で、当事者にとっては当たり前に行っている仕事の中からも、独自のセールスポイントや、新たなビジネスの種を一緒に見つけていくための伴走支援に取り組んでいます。
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