エクサウィザーズの石山洸社長、2030年のキーワードは「環境と人」
5年後や10年後の世界、みなさんは想像つきますか? SDGsに代表されるような持続可能性のある社会は果たして生まれているのでしょうか。超高齢社会で生まれる「介護」や「医療」などが抱える社会課題を、AI(人工知能)で解決することをめざすサービスを展開する株式会社エクサウィザーズ。その代表取締役社長・石山洸さん(39)は、現在の社会トレンドとこれからの未来について、どのように考えているのでしょうか。
5年後や10年後の世界、みなさんは想像つきますか? SDGsに代表されるような持続可能性のある社会は果たして生まれているのでしょうか。超高齢社会で生まれる「介護」や「医療」などが抱える社会課題を、AI(人工知能)で解決することをめざすサービスを展開する株式会社エクサウィザーズ。その代表取締役社長・石山洸さん(39)は、現在の社会トレンドとこれからの未来について、どのように考えているのでしょうか。
目次
――エクサウィザーズの成り立ちについて教えてください。
「私の前職はリクルートのAI研究所の所長でしたが、AIに関する新しい技術の出現にともない、AIで広く社会課題を解決したいと思い、転職しました。その後まもなく、志が同じだったベンチャー企業同士で合併をして、2017年のエクサウィザーズの設立とともに、社長に就任する流れになりました」
「エクサウィザーズはAIで介護や創薬、HR(人的資源)など幅広い分野においての社会課題を解決しています。また、国内の大企業をはじめ、累計500社以上にAIソリューションを提供しています。ベンチャー企業で、かつ、AI分野のど真ん中で、『社会課題解決』を言い続けてきた会社はないと思います。この3年で、300以上のAIプロジェクトをやってきました。日本でもSDGsのようなマクロな社会課題の解決指標が浸透するようになっていますし、結果としていろんな人にインパクトを与えられたと思っています」
――会社として今後めざす方向性はどういったものでしょうか?
「社会課題解決を楽しめる会社にしたいです。ここから3年ぐらいは、そのための仕組みづくり、あるいはゲーム化が大切だと思っています。たとえば、弊社独自のプラットフォーム『エクサベース』はそういった新しい試みの一つです。エクサベースはさまざまな開発プロジェクトで社内に蓄積したAI技術を統合したシステム。AI技術をレゴのように組み合わせて、社会課題を楽しく解く、おもちゃみたいな位置づけです」
――2017年の設立から約4年。日本、世界の変化をどのように感じていますか?
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「段階的にですが、社会全体としてはいい方向に来ていると個人的に思っています。エクサウィザーズ設立にあたって、『AIを用いた社会課題解決を通じて幸せな社会を実現する』というミッションを定めました。当時、SDGsの概念もそれほど普及しておらず、ESG投資の考え方も同様でした。そのため、多くの人に『社会課題解決ってなんだろう?』と思われていたようです」
石山さんは最近のSDGsの認知拡大と、別のトレンドの合流を指摘します。
「社会全体、マクロな視点としては、SDGsをはじめとした社会課題のマクロな解決指標を定量的に設定して、『みんなで実現しよう』というプラクティス(活動)やカルチャー(文化)が生まれています。一方で、個別の視点、ミクロな観点では、ITベンチャーなどはKPI(重要業績評価指標)、KGI(重要目標達成指標)といったメトリクス(評価指標)を設けて、実績を管理しています」
「こうした取り組みによって、データをもとにして、物事がいろいろ把握できる構造になってきました。そのため、社会課題を解決しようとする指標の設定と評価が可能になり、私達のミッションが比較的実現しやすくなってきていると思います」
石山さんはエクサウィザーズで取り組んできたやり方が、社会に普及していくと見ています。
「次の5年では、SDGsのような社会課題の解決指標と、ベンチャー企業のSaaS(Software as a Service)メトリクス(評価指標)が融合する流れが必ず来ると思います。その発端の1つがESG(環境・社会・ガバナンスを考慮する概念)のような考え方です」
「企業活動でどのぐらい社会課題を解決しているか、定量評価できるようになり、それを前提として商品開発が行われる時代になる。これが次の5年間のトレンドになるのは間違いないです。これに追随した形で企業経営をするベンチャーも増えると思います。そのうえで、私たちも、事業を成功させることで、社会課題を解決する活動を良しとする流れに貢献していきたいと思っています」
――さらに5年後の2030年代のトレンドはどうなっていくと考えますか。
「現在の「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)」や「ウェルビーイング(精神面・社会面も含めた健康)」が意味するトレンドのポイントは、環境や人にどれだけ優しく、大切にできるかです」
「最近、AIの活用が文明レベルから文化レベルになるとよく言っています。今のAI産業の戦いは第3ラウンドに入っています。過去でいうと、第1ラウンドはサイエンスの世界、AIの論文数の競い合い。第2ラウンドはビジネスの規模。GAFAのように、AIを活用したビッグビジネス化。ここまでが文明のAIです。第3ラウンドは社会的な価値、ソーシャル。先ほどの『人を大切にする』という視点がとても重要で、文化的なAIに変化すると思います」
「マクロとミクロのトレンドが統合される世界だと、文明のAIにはゴールがなくて、文化的なAIにならなくてはなりません。これをどう設計するのか、今後問われていくと思います。コンピュータサイエンスの専門家だけがトライしても、たどり着かないので、どうやってユーザー市民を巻き込み、統合した仕組み作りができるのかといった点です」
現在、エクサウィザーズの代表として活躍する石山さんも、20代の頃は仕事で悩んだ時期もあったそうです。
「社会人になって、最初の5年ほどはデジタルマーケティング部門に軸足を置いて、テクノロジーでCPA(Cost Per Acquisition=顧客獲得単価)を改善するのが仕事でした。当時は先輩もいなくて、その先のキャリアも見通せませんでした。それから時代が流れ、データドリブン経営とか、テクノロジーの活用範囲が広がってくるにつれて、CPAの改善作業が日本の社会保障費を持続可能にする仕事に生かせていると思います」
「どんな仕事にも楽しさと、しんどさの両面があり、なるべく楽しむという姿勢がとても大切です。楽しめた先にやり切ることができるし、どうせならやり切って、尻上がりの転職をしてほしいと思います。そのために『楽しむ』で始まらないと、何も始まらないと思います」
――楽しむための考え方、方向性のヒントはありますか。
「『楽しい』という感情は、周りの人との関わりでも起きると思います。自主的に面白そうなことをやってみて、なかなか楽しくならないなら、逆に、周りの楽しくなさそうな、困ってる人を楽しませることを考えてみてはどうでしょうか。実際にやると、どうやれば楽しくなるか、発見するチャンスになると思います」
――悩みをどうとらえるか。とらえ方次第ということでしょうか。
「悩んだ先には必ずイノベーションがあるんじゃないかな、と思っています。行き詰まったときは、必殺技が創発するチャンス、土壌ができ上がっているタイミングなんじゃないかなと思います。若い世代でぶち当たる仕事の悩みには、イノベーションのヒントがあるかもしれませんよね。そのとき一瞬で答えが出なくても、10年後くらいにはいいことがあると思ってほしいです」
石山洸(いしやま・こう)。2006年4月、株式会社リクルートホールディングスに入社。2017年3月、デジタルセンセーション株式会社取締役COOに就任。2017年10月の合併を機に、株式会社エクサウィザーズ代表取締役社長に就任。東京大学未来ビジョン研究センター客員准教授。
(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年11月2日に公開した記事を転載しました)
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