目次

  1. ガソリン代に使える主な勘定科目
    1. 車両費(販売費及び一般管理費)
    2. 旅費交通費(販売費及び一般管理費)
    3. 燃料費(販売費及び一般管理費)
    4. 消耗品費(販売費及び一般管理費)
    5. 仕入(売上原価)
  2. ガソリン代の勘定科目の決め方
    1. 自社におけるガソリン代の位置付けを確認する
    2. 採用している勘定科目体系にあわせる
  3. ガソリン代を仕訳するときの注意点
    1. 一度決めた勘定科目は変えない
    2. 場合によっては数量把握をする必要がある
    3. 社員の車を借りる場合は移動の報告を受ける
    4. 軽油の場合、消費税に注意
  4. ガソリン代の計上で大事なのはルール作り

 ガソリン代を仕訳するとき、「この勘定科目を使わなければならない」というルールはありません。ただし、基本的には、次の勘定科目のいずれかが用いられます。

勘定科目 その勘定科目を用いるシーンの例
車両費 ・車検代等、車両に関する経費を車両費で仕訳しているとき
・車両にかかる経費を経年で比較したいとき
旅費交通費 ・ガソリン代の推移を的確に分析したいとき
・車両を保有せず、レンタカーを利用しているとき
燃料費 ・ガソリンを自社で利用している機械等に充填し、使用しているとき
消耗品費 ・ガソリン代の発生頻度が少なく、事業にとって重要性が乏しいとき
仕入 ・ガソリンスタンドのようにガソリンを販売しているとき
・タクシー業や運送業のようにガソリンが売上高に直結しているとき

 以下、順に詳しくご説明します。

 車両を保有していて、車両に関する経費(車検代やメンテナンス費用など)を車両費で計上している場合は、ガソリン代も車両費として計上しても良いでしょう。車両費として計上すれば、車両にかかっている経費を経年比較できるようになります。ただし、車両の台数が多いような場合は管理が煩雑になることが考えられます。

 車両費は、ガソリン以外にも様々な費用が計上されるため、ガソリン代を抽出しづらくなることがあります。ガソリン代の推移を分析したい場合は、旅費交通費として計上すると良いでしょう。

 また、車両を保有しておらず、例えばレンタカーを借りてガソリンを満タンにして返却する場合に支払うガソリン代は、勘定科目体系として車両費を採用していないことが多いという点から旅費交通費が最適といえます。

 工場で使用する器具にガソリンを使うような場合は、燃料費にすることが一般的です。投入する先が車両でなければ、区別して計上した方がわかりやすくなります。また、農業で使用する器具のために支払ったガソリン代は、「動力光熱費」という勘定科目で仕訳することもあります。

 ガソリン代をほとんど使用しない場合には、消耗品費として計上することも考えられます。しかし、消耗品費は、少額で大量の仕訳が計上されることが多く、ガソリン代がその中に埋もれがちです。ガソリン代だけを抽出して、どのくらい使っているのか分析をすることが難しくなりやすいので注意が必要です。

 ガソリンスタンドのようにガソリンを販売している事業を経営していれば、ガソリンは販売品のため、仕入を用います。タクシーや運送業を営んでいる場合も、ガソリン無しでは売上を計上できないため、仕入となります。仕入として計上すると、最終的には売上原価として計上されることになります。

 次に、ガソリン代の勘定科目の決め方について解説します。

 ガソリン代の勘定科目を選ぶときは、事業を行う上で、ガソリン代がどのような立ち位置になるかを考えます。売上に直接関連しない場合、例えば営業に必要な移動コストという位置づけであれば、販売費及び一般管理費にて計上することになります。一方、ガソリンスタンドであれば、販売品であるため売上原価になります。

 また、ガソリン代の発生頻度や年間の金額から、自社にとって重要かどうかも考慮します。もし、分析をしたいというニーズがあるのであれば、抽出しやすい勘定科目を採用すると良いでしょう。

 次に考慮すべきは、採用している勘定科目体系にあわせることです。会計システムや自社の経理規程にもとづいて、すでに勘定科目の定義づけがなされている場合は、それに沿った形で計上しましょう。

 もし、ガソリン代に該当する勘定科目がない場合は、上記で説明した勘定科目の特質と以下で解説する注意点も考慮に入れて、新規に設定を行います。

 勘定科目が決まって、実際に計上するという段階になっても、注意すべき点は多くあります。それぞれ解説いたします。

 会計には「継続性の原則」というものがあります。これは、会計においては、一度定めた処理の原則や手続きは毎期継続して適用し、簡単に変更してはならないという原則です。

 毎年毎年、計上する勘定科目を変えてしまうと、分析をすることが困難になります。また、外部の人が決算書を見た際にも混乱してしまいます。そのため、一度、ガソリン代を計上する勘定科目を決めたら、正当な理由なく変えてはいけません。

 会計や税金計算においては、ガソリン代は消費した分が費用になります。消費していない分に関しては、棚卸資産として、費用計上ではなく、翌期に繰越を行うことが原則です( ただし、これは必ず行わないといけないわけではなく、「ガソリン代の額が重要になるほど多額ではない場合」や「期末時に大量に残っていることが想定されない場合」は、購入時に費用処理をしてしまっても問題はありません)。

 例えば、ガソリンを1,000,000円分購入し、200,000円分しか使用しなかったとします。その際、残りの800,000円分は、貯蔵品とします。なお、ガソリン購入時には燃料費を採用していたとします。

 仕訳は次のようになります。

借方 貸方
貯蔵品 800,000 燃料費 800,000

 この繰越を行うためには、購入したガソリンの未使用分の数量把握をする必要があります。継続記録法を用いて受け入れ時と使用時の数量を記録するのが原則ですが、貯蔵タンクを購入して残量を把握できるようにしたり、期末時に計測棒を使用して数量を把握したりする方法も良いでしょう。

 社用車が足りなかったり、そもそもなかったりして、社員個人が保有する車を使って移動してもらい、ガソリン代分を別途支払う必要が出てきた場合、勘定科目自体は、自社のルールに従って選べばOKです。

 ただ、その際に、社員がどこをどう移動したのかについても、本人から聞くようにしましょう。多額のガソリン代請求がされていないか確認するためです。もし、距離と金額が整合しない場合、整合しない分を社員への給与に反映させる必要があります。

 このような手続きをスムーズに行うためにも、まず社内の規程にて、ガソリン代はどこまで支給するのかなどについて取り決めをしておくと良いでしょう。その際に、報告書のフォーマットを作成することもおすすめします。

 車両に給油するのは、ガソリンだけではなく軽油もあります。

 ガソリンの場合、ガソリン税に石油税が上乗せされた価格になっています。消費税も通常通り発生していて、その消費税は支払った価格に対して課されています。しかしながら、ガソリンの場合は、この消費税は通常通り、課税仕入として計上して問題がありません。

・ガソリン代の仕訳例
(例)税込11,000円分のガソリン代を現金で支払った。(勘定科目は燃料費とした場合)

借方 貸方
燃料費(課税) 10,000 現金 11,000
仮払消費税 1,000

 一方、軽油の場合は、軽油取引税と石油税がかかります。軽油取引税は、納税義務者が購入者となることから、消費税が発生しません。そのため、不課税の費用として仕訳を計上する必要があります。

 通常は、ガソリンスタンドから発行される領収書を確認すれば、軽油取引税がいくらであるか明記されているので、それを参考に仕訳を起票します。

・軽油代の仕訳例
(例)6,000円分の軽油代を現金で支払った。そのうち、軽油取引税は500円であった。(勘定科目は燃料費とした場合)

借方 貸方
燃料費(課税) 5,000 現金 6,000
仮払消費税 500
燃料費(不課税) 500

 ※一般的な会計システムには消費税の課税コードがあり、不課税を選択できるようになっている

 軽油取引税を不課税とせずに、経理処理を行って消費税を計算すると、納付する消費税が少なくなります。税務調査等で発覚すれば追徴課税となることがありますので、ご注意ください。

 ガソリン代は、事業によって立ち位置が変わり、計上する勘定科目が変わります。また、上述の通り、一度決めたルールは、状況が変わらない限り、変更することは極力避けなければいけません。そのため、大事なのは、最初のルール作りです

 ただ、ルールを作って運用したものの、実態と離れることもしばしばあります。その時は、見直して期首から変更を適用しましょう。

 ルール作りに困った場合は、この記事を参照していただけると幸いです。