目次

  1. 伝統の印染 海外からの注文やコラボ打診も
  2. 「お前は後継ぎ」に反発 大学入試は白紙で提出
  3. 「なんて素敵な仕事だろう」心変わりの理由
  4. 大漁旗や五月のぼりは不振 利益をどう残すか
  5. 高付加価値の「自分の土俵」を求めて
  6. 伝統をつなぐため「常にパイオニアであれ」

 印染とは、文字や家紋、絵柄などを染め抜く伝統技法と、その技法で作られた染織物(そめおりもの)を指す言葉です。白く残したい部分に糊(のり)を置き、それ以外の部分に刷毛(はけ)で色をつけていきます。乾燥させた後、糊を落とすため水洗いして仕上げます。

武者絵柄の五月のぼりに染色をする亀崎昌大さん。表を染めた後、宙に浮かせて張った反物を裏返して再度染色することで、裏の毛羽立ちが消え、どの方向から見てもはっきりした発色の五月のぼりができあがる

 「印染の最大の特徴は、色をのせない白い部分と染色部分がくっきりはっきり染め分けられていること。白い部分をいかにきれいに残すかが、職人の腕の見せどころです」

 こう語るのは亀崎染工の5代目、代表取締役社長の亀崎昌大さんです。

 亀崎染工は1869(明治2)年に熊本県葦北郡田浦町(現・芦北町)で創業した印染店です。2代目が現在のいちき串木野市に店を移転し、今に至ります。

昭和初期の亀崎染工の干場。右端に昌大さんの祖父で3代目の琢磨さん、1人置いて曽祖父で2代目の政喜さんが写っている(亀崎染工提供)

 昌大さんは4代目の父・洋一郎会長(79)から印染の技を受け継ぎ、大漁旗や五月のぼりを始め、印染製品全般を作っています。従業員は4名。パソコンでデザインし、プリンターでポリエステル繊維を染める「デジタル染色」も手がけます。ただ、亀崎染工の主力商品は今も、オーダーメイドの印染製品です。

 昌大さんが後を継いでからは印染の技法を活用した新商品開発に着手し、SNSでの情報発信にも取り組みます。バッグやクッションなどの小物、室内に飾れる額入りの鯉のぼりや祝い旗を生み出し、全国各地のイベントや催事で販売しています。

(続きは会員登録で読めます)

ツギノジダイに会員登録をすると、記事全文をお読みいただけます。
おすすめ記事をまとめたメールマガジンも受信できます。