目次

  1. 出展した海外展示会の特徴
  2. 日本とタイの展示会の違い
  3. タイの展示会で来場者にアプローチできたのか
  4. タイの展示会で得た経験
    1. 自社製品・サービスをきちんと説明できるように
    2. 出来る限り多くの社員を巻き込むこと
    3. 反省会を行いきちんと記録を残す

 野村さんが出展したのは、2022年5月にタイ・バンコクで開催された「Subcon Thailand」。公式サイトによると、産業部品の調達やビジネスマッチングのイベントといいます。

 出展した野村さんは「工作機械の大型展示会と共催で、展示会名称のSubcon(サブコン)というのは下請けの意味であり、製造業という大きな括りの中で様々な業者が出展します。来場者は工作機械に興味があり、大型展示会へ来たついでにSubconも見て行くというイメージです。タイでは製造業がブースを出展する展示会は限られており、中でも自動車や家電業界の日系企業が出展する大きな展示会は年に2~3回しかありません」と解説します。

 「K.U. Nomura Thai Ltd.」は、冷蔵庫のドアガスケットやワイヤーハーネス用チューブ、ディップ成形品などを製造販売している会社です。今回、新規案件の獲得と認知度向上を目的に出展しました。どんな学びがあったのか、さらに詳しく聞いていきます。

-日本とタイの展示会の違いは?

 日本の展示会は来場者としての参加しかなく出展経験はないのですが、個性の出し方や目立ちたいという出展社の意識を感じます。

 たまの日本一時帰国時に展示会に行くと面積の大小や知名度を問わず各社が個性を出そうと工夫を凝らしていることに感心します。

 タイでは会社規模の大小によってブースのサイズや装飾に当然差は出てきますが、個性を競うという観点はあまりない気がします。

 配布物は会社パンフレットや製品カタログ、それを入れる袋が主流です。日本でよく見られるオリジナルノベルティの配布をやっているブースはまだ多くなく、今回の展示会でオリジナルの飲食物(飴)を配ったのは当社だけだったかもしれません。ちょっとした工夫で低予算・小規模ブースでも目立てる隙間が多く残されていると言えます。

-来場者にはアプローチできましたか?またはどうアプローチしましたか?

 コロナ禍前に会社として初めて展示会に出展したところ、そこでの出会いがきっかけで大きな案件が始まったこともあり、今回も一社くらいは契約に結び付けばと考えていました。

 今回も非常に運良く展示会終了から4営業日で、とあるタイローカル企業から発注書が頂けるということもありました。ただし、具体的に潜在顧客に働きかける施策はなく、基本は運頼みでの出展でした。

 ただ、ブース出展は企業広報の側面もあるため周りより少し変わったことをしようと考えており、無料配布のノベルティはかなり検討しました。今回は押出成形にちなんだ会社ロゴ入りの金太郎飴を配布し、多くの来場者が持ち帰りました。

バンコクで開催された「Subcon Thailand」のノベルティとして配布したアメ

 まったくビジネスにつながる可能性の無い来場者への配布は無駄という考えもあるかもしれませんが、Twitterでの告知も含め、企業イメージの向上に少しはつながったと思います。

 また個人で作った会社名のカタカナ表記の帽子を飾っていたところ「これはもらえないのか」と何度も聞かれたため、次回は販売もしくは条件付きでの無償配布もしてみようかと画策しています。

-展示会で得た経験とは。

 すでに展示会への出展経験を多くもつ会社は当然かもしれませんが、展示会初心者として気をつけたいと思ったことは以下のようなことでした。

 基本のキかもしれませんが必ず自社製品のことを熟知して説明も十分できるスタッフを常に一人は置くことは重要です。

 たまたま興味のあるサービス分野のブースに立ち寄った際、製品のことを尋ねると台本通りといった立て板に水な説明の後で、詳しくはホームページを見てくださいと言われ、それだけで幻滅してしまったことがありました。

 自社ブースでも全員が製品について細かく理解していたわけではなかったため、展示会後の反省会でも次回への備えとして共有しました。

 ブースに張り付くメンバーは中小企業であれば経営幹部と営業というケースが多いと思いますが、事前に社内への告知をしっかりして時間のある社員に来場を促すのは社内PRの観点から得策と思いました。

 「展示会なんて自分には関係ない」と思われる社員も少なくないと思いますが、彼ら・彼女らにも自分事として考えてもらうにはやはり実際に足を運んでもらうことが一番です。

 これはタイの場合に限ってかもしれませんが、食事手当を出すなどのインセンティブを提示することも効果があった気がします。今回は製造や技術の主だったメンバーにも声を掛けており、彼らが会期中にブースへ何度も来てくれたり時には差し入れを持ってきてくれたりしました。次回はもっと広く社内に事前告知をするつもりです。

 展示会終了後にメンバーで反省会を開くのは本当に重要です。見込み顧客をきちんとデータベース化し営業活動につなげる、自社ブースの改善点を洗い出す、他社ブースで目についたものごとを共有するといったことで次回出展時の改善は大きく進むはずです。

 当社は一度目の出展後この部分を軽く見てきちんと反省会をしなかったため、今回の出展で「ああ、これは前回も思った」ということが多くありました。

 たとえば、ブース内にはコンセントがひとつしかなく、初日はスタッフ間でPCやスマホ用電源の取り合いになってしまったのですが、複数口の電源コードを持って来れば良かったというのは前回も思ったことでした。これは翌日から持ってくることで解決しましたが、準備に時間が掛かるものは会期中のリカバリーができないこともありますので、事前にチェックリストを作るのが良いと思います。

 次回はこの反省会の議事録を土台にキックオフミーティングを開きます。