目次

  1. 借入金の仕訳方法
    1. 銀行から借入をしたときの仕訳方法
    2. 借入金を返済したときの仕訳方法
    3. 長期借入金の返済期限が1年を切ったときの仕訳方法
    4. 借入金を資本金へ振り替えるときの仕訳方法
  2. そもそも借入金とは?知っておきたい6つのこと
    1. 借入金の種類
    2. 借入金のメリット・デメリット
    3. 借入金と負債の違い
    4. 借入金利について
    5. 借入金額の目安となる指標
    6. 借入金の返済シミュレーション
  3. 借入金を適切に活用しましょう

 借入金が登場する仕訳はあまり多くなく、基本的には「銀行から借入をしたとき」「借入金を返済したとき」「長期借入金の返済期限が1年を切ったとき」「借入金を資本金へ振り替えるとき」の4つです。

 以下で、それぞれの仕訳方法を具体例を交えながらご紹介します。

借入金の主な使用パターンと具体的な仕訳例
借入金の主な使用パターンと具体的な仕訳例(デザイン:吉田咲雪)

 銀行と借入の契約を結び、実際に入金があった時点で仕訳をします。

 例:毎月1,000,000円の返済で、36,000,000円の借入を行い、入金がされた。

借方 貸方
現預金 36,000,000円 短期借入金 12,000,000円
長期借入金 24,000,000円

 なお、会計には、営業に関する債務(買掛金等)以外は、1年基準というルールがあります。これは1年以内に支払いがあるものは、流動負債として計上し、1年を超える場合は固定負債として計上するというものです。

 仕訳例では、流動負債に短期借入金という科目を使用していますが、「1年以内返済長期借入金」という流動負債の科目を使用することも多いです。自社の科目パターンに合わせてください。

 借入金を返済したときは、期日の到来に実施するのではなく、実際に返済をした際に仕訳を起票します。

 例:借入金1,000,000円を預金から返済した。その際、一緒に利息10,000円も支払った。

借方 貸方
短期借入金 1,000,000円 現預金 1,010,000円
支払利息 10,000円

 決算日に、決算日から1年以内に返済期限が到来する長期借入金を、短期借入金や1年以内返済長期借入金という勘定科目を用いて固定負債から流動負債に振り替えます。

 例:翌1年間に返済期限が到来する金額は12,000,000円である。

借方 貸方
長期借入金 12,000,000円 短期借入金 12,000,000円

 当初は借入金として計上をしていても、その後の状況の変化によって、資本金に振り返ることもできます。これはデットエクイティスワップ(以下、DESといいます)と呼ばれます。

 例:長期借入金10,000,000円を資本金に振り替えた。

借方 貸方
長期借入金 10,000,000円 資本金 10,000,000円

 なお、DESは、主に返済が厳しくなった際に実施されることが多いです。

 会計上の仕訳では、上記の通りですが、税務上の考えでは、債務の免除を受けた上で資本金に振り替えたと認定されることがあります。その場合、税務上は利益として認定され、法人税等が発生する可能性があります。

 DESを実施する際は、必ず税理士に相談し、慎重に検討してください。

 そもそも借入金とは、どういったものでしょうか。ここでは、借入金の種類をはじめ、借入をする際に、知っておいた方が良い基礎知識をご紹介します。

 借入をする際には、いくつかの方法があります。

借入の方法①証書貸付

 証書貸付とは、金銭消費貸借契約書を締結することで、借入をする方法です。返済期間が1年を超えるような長期の借入の際にしばしば使用されます。事業をやる上では、最も一般的な方法といえるでしょう。

借入の方法②手形借入

 手形借入とは、借入用手形を銀行に差し入れることで借入をする方法です。返済期間が1年以内の短期の借入で使用されることが多いです。手形が満期になると返済になり、口座から引き落としになります。

借入の方法③手形割引

 手形割引とは、得意先から入手した手形を満期前に銀行に買い取ってもらうことで、借入をする方法です。買い取りの際、手形で入金される金額よりも割引いた価格となり、その差額が利息分となります。なお、得意先が手形の支払をできなくなると、自社が支払をしないといけない点に注意が必要です。

借入の方法④当座貸越

 当座貸越とは、融資の極度額を設定し、極度額の範囲内で自由に借入をしたり返済したりする方法です。例えば、銀行と1,000万の極度額を設定したら、借入残高が1,000万になるまでは申込書で借入をすることができます。

借入の方法⑤保険会社の契約者借入

 契約者借入とは、契約している生命保険の解約返戻金を担保にする方法です。解約返戻金とは、積立型の生命保険を解約した際に返ってくる金額をいいます。借入時点での解約返戻金の7〜9割くらいまでで借入をすることが可能です。

借入の方法⑥役員からの借入

 中小企業では、銀行や生命保険会社からだけではなく、役員から借入をする場合も多くあります。この場合、役員に支払っている利息が理由もなく高いと、税務調査があった際に問題になります。

借入の方法⑦ノンバンクからの借入

 銀行や信用金庫といった金融機関以外で借入ができるところがあります。これらはノンバンクと呼ばれており、金融機関よりも借入しやすいですが、その分、利率が高くなります。また、銀行の信用力調査でマイナスになることが多いです。

 借入金は、世間的なイメージとしては、マイナスイメージで語られることが多いですが、事業を行う上で大きなメリットももたらします。ここでは、代表的なメリット・デメリットを紹介します。

メリット

 借入を行うことのメリットは以下があります。

  • 事業を早く拡大することができる
  • 銀行と良好な関係を構築しやすくなる
  • 資金調達コストは安い

 借入を行うと、設備や人への投資が早い段階ででき、利益を蓄積してから拡大するよりも早く事業拡大をすることができます。

 また、銀行から借入を行うことで、銀行との付き合いが始まります。返済が約定通りにできていれば、信用度も高まることから、急な資金ニーズにも応えてくれるようにもなります。

 さらに、借入金は利息が発生しますが、株式を発行して配当金を払うことに比べれば利率は低いため、資金調達コストをおさえられます。

デメリット

 対して、次のようなデメリットがあるので注意をしましょう。

  • 倒産のリスクがある
  • M&Aの際にネックになることがある

 借入金は、返済ができないと倒産する可能性が高まります。

 また、M&Aで売却しようとする際に、借入金がネックになって売却できないというケースもないわけではありません。ただし、借入金の返済をしても資金に余裕がある場合は問題にならないことが多いです。

 経営者からの相談を受けていると、借入金と負債の違いをよく聞かれます。

 負債は、別の言葉に言い換えると「企業が負っている義務」です。例えば、何らかの商品の販売やサービスの提供をする前に前受金をもらったら、それはこれから商品の販売やサービスを提供する義務を負っているのと同じ意味になります。

 一方、借入金は、貸主にお金を返済する義務を企業が負っていることになります。そのため、両者は別のものというよりも、負債の一部という関係です。

 借入金利とは、借入に際して、貸主に支払う利息です。貸主は、借入先の財務状況等を加味した信用力に応じて、利率を決定していきます。安定的に返済してくれそうな企業は、貸倒リスク(返済されないリスク)が低いため、金利も低く設定してくれることがあります。

 日本政策金融公庫や銀行、信用金庫等の金融機関で借入を行うと、通常1%〜4%程度の利率になります。生命保険会社からの借入も同様です。

 一方、金融機関以外(いわゆるノンバンク)からの借入では、利率が10%を超えることも珍しくありません。

 なお、創業したての時期等で中小企業や個人事業主の場合、市区町村で利息分を一部負担してくれるということもあります。事業をしている市区町村のホームページに詳しく載っているため、確認することをおすすめします。

 借入は、返済できる範囲で借りる必要があります。そのため、以下のような指標を用いて、その範囲を正しく把握することが重要です。

指標①債務償還年数

 経常的に発生する利益に、現金支払いの生じない費用の減価償却を足し合わせると、営業活動で得られる現金がわかります。債務償還年数とは、その現金によって、借入金を何年以内に返済できるかの指標です。

債務償還年数=有利子負債÷(経常利益+減価償却)

 債務償還年数が、返済年数内であることが理想です。

指標②流動比率

 流動比率とは、流動資産と流動負債のバランスを確認するものです。

流動比率=流動資産÷流動負債

 流動比率は100%を超えていることが理想で、100%を超えていない場合、直近の資金繰りに苦労します。借入の際には、流動比率を確認し、1年以内の返済金額に足りる流動資産があるかを確認しましょう。

 借入金は当然ですが、返済をしないといけません。そのため、借りる際には、返済のシミュレーションを行いましょう。

 なお、返済方法には「元利均等返済」と「元金均等返済」の2つがあり、選択できる場合があります。

 元利均等返済は、毎月の支払い額が一定で、その金額の中で利息と元金(借入金のことです)の返済を行う方法です。

 元金均等返済では、元金の返済額が一定で、その上で利息を追加で支払います。そのため、毎月の返済額が変わります。返済開始直後は、利息が多額に発生するため、支払う額が多額になりますが、返済が進むにつれて返済額が減少していきます。

 両者を比較すると、利息の支払い総額は、元金均等返済の方が元金の減る速度が早いため少なくなります。ただし資金繰りに余裕がある場合は、支払い額が一定でやりくりがしやすい元利均等返済が良いでしょう。

 実際に毎月の返済額と利息の支払額のシミュレーションを行うには、日本政策金融公庫の「事業資金用 返済シミュレーション」を利用されるのをおすすめします。

 借入金が登場する仕訳自体は、ほとんど難しくありません。

 一方、借入金に関して、事業を行う上では適切な知識を持つ必要があります。借入金を適切に活用することができれば、事業拡大の速度を早めることができる等、メリットも多いです。一般的な印象としては、破産や倒産というワードが思い浮かびますが、無理なく返済できる範囲内での借入では、強力な武器になってくれます。

 借入金に関して適切な知識を得て、活用をしていきましょう。