管理職の役割とは?仕事内容や必要なスキル・育成・採用方法を解説
部や課などのチーム、あるいは組織全体をまとめ、率いる管理職。企業などの組織を支える重要な役職ですが、管理職の役割とは何でしょうか。本記事では、管理職の役割について知っておきたい基本を解説します。また、併せて管理職に必要なスキルや、管理職を育成・採用するポイントなども解説します。
部や課などのチーム、あるいは組織全体をまとめ、率いる管理職。企業などの組織を支える重要な役職ですが、管理職の役割とは何でしょうか。本記事では、管理職の役割について知っておきたい基本を解説します。また、併せて管理職に必要なスキルや、管理職を育成・採用するポイントなども解説します。
目次
管理職という言葉を聞くと、何となく部長や課長といったイメージを浮かべる人が多いでしょう。一方、管理職がどのような仕事をしているのか、管理職の果たすべき役割はなにかについて、正しく理解している人は多くないかもしれません。
まずは、管理職という役職について、一般社員との違いから説明します。
管理職は英語でManagerと言いますが、管理職は文字通り部下をマネージする役職です。
労働者は通常、企業と労働契約を締結し、それに従って業務を行います。企業は労働者に対して指揮命令を行う権利を有しており、労働者は常識の範囲内でそれに従う義務を負っています。
管理職は部や課といった組織単位ごとにおいて、企業の指揮命令を労働者に伝えていく立場です。会社は組織形態的に軍隊との類似性が多く見られますが、管理職の場合は部隊単位の指揮官に相当します。一方で、一般社員は組織内において管理職の指揮命令に従う立場であり、部隊単位に属する兵隊に相当します。
管理職の役割は、ひと言で言うと「結果を出すこと」に尽きるでしょう。
一般的に「チームをまとめること」「チームメンバーを指導すること」「メンバーのモラルやモチベーションを上げること」などと言われますが、それらはいずれも結果を出すための手段に過ぎません。いくら上手にチームをまとめたとしても、結果が出せない管理職は失格です。
結果を出すために管理職は戦略と戦術を立て、チームメンバーを指導・指揮し、ゴールへ導くのです。
それでは、管理職の具体的な仕事内容は何でしょうか。著名経営学者のピーター・ドラッカーは、管理職の仕事として以下の五つを挙げています。
管理職の第一の仕事は目標の設定です。会社がチームに与えたミッションを理解し、それを実現するための目標を設定する。そして、目標を達成するための戦略や戦術を設定する。目標を設定することなしにチームをマネージすることは極めて困難です。
管理職の第二の仕事はチームの編成です。設定された目標を達成するために人材を確保し、戦略と戦術を理解させ、強力なチームを編成する。野球チームの監督と同様、優秀な人材を適材適所で活用するのがポイントです。
編成されたチームのメンバーひとり一人のモチベーションを高め、そのためのコミュニケーションを取るのも管理職の仕事です。モチベーションを高めるためのインセンティブやプロモーションを設定するといった仕事も含まれます。ドラッカーは、こうした一連の仕事を「管理職による調和的仕事」であるとしています。
チームのパフォーマンスなどの現状を把握することも管理職の仕事です。戦争と同様、チームの現在の立ち位置を正確に把握することなく健全にチームを運営することは困難です。売上高や利益額といった数値などをもとに、現状を客観的に把握する必要があります。
チームのメンバーを啓蒙し、必要な教育やトレーニングを施すなどして能力開発を促すことも管理職の仕事です。特に、多くの業界においてデジタルトランスフォーメーションが進む今日、ITやインダストリー4.0といった新しい知識やスキルを身に付けさせることも重要になってきています。
上述した管理職の仕事を遂行するためには、特定のスキルが必要です。以下、具体的に挙げます。
管理職の仕事に必要なスキルの筆頭はリーダーシップです。リーダーシップとは、自分のチームをまとめ、目標実現に向けて率いる一連の行動であり能力です。リーダーシップなしにチームを統率することはできません。優れたリーダーはメンバーに目標を明確に示し、実現のために鼓舞し、能力を最大限に発揮させます。
コミュニケーション力も管理職の仕事に必要なスキルです。管理職のコミュニケーション力なしにチームメンバーにチームの目標や方向性を理解させることは不可能で、ついては目標の実現そのものが不可能になるでしょう。優れた管理職は率先してチームメンバーとコミュニケーションを図り、意思疎通と相互理解を促します。
自らを鼓舞し、奮い立たせる。いわゆるセルフモチベーションも管理職に必要なスキルです。多くの優れた管理職が、日頃新たな知識や情報を取り入れ、自己研鑽を重ねて自らを高めています。
モチベーションの高い管理職率いるチームと、モチベーションの低い管理職率いるチームが対戦した場合、どちらが勝利する可能性が高いかは明らかでしょう。管理職は、常に自らのモチベーションを高く保つ必要があります。
私が以前かかわった介護系の企業は、介護福祉士複数名を含む20人のチームで構成されていました。リーダーの施設長は30代半ばで、人柄が素晴らしいだけでなく、あらゆることについて貪欲に知識を取得し、常に自己研鑽をしていました。読んだ本で学んだことなどを機会あるごとにチームに伝え、チーム全体のモラルとモチベーションが高い状態でキープしていました。
リーダーが自ら学び、その姿勢を維持すれば、チーム全体も同じような状態になることを直接知ることができた、今でも忘れられない体験です。
状況や環境、競争状態などの諸ファクターを客観的に捉え、最適な判断を下す意思決定能力も管理職に求められるスキルです。管理職の仕事は意思決定の連続です。日常の細かいことから組織の命運を左右する重大なことまで、意思決定が求められる事案が次々に浮上してきます。そうした事案について、可能な限り正しく意思決定を行うスキルが求められます。
組織においては、往々にしてメンバー間の対立が生じがちです。また、社内の他のチームや取引先との間で問題やトラブルが生じることもあります。その際、調整能力の高い管理者が介在することで解決できる可能性が高まります。また、そうした管理者が率いるチームは、往々にしてモラルやモチベーションが高いケースが多いです。
管理職が「結果を出す」という役割を果たすためには、一般社員とは異なる能力を管理職自身が身につけている必要があります。経営者においては、そのスキルを身につけさせたり、あるいはすでにそれを有している人材を採用したりするためのノウハウを把握しておくことが重要です。
最後に、それぞれのポイントをご紹介します。
まずは管理職を社内で育成するポイントです。
第一のポイントは管理職教育プログラムを用意することです。
管理職につく社員に対しては、管理職の業務内容、責任範囲、ミッション、タスクなどのジョブディスクリプションを可能な限り明示し、しっかりと理解させる必要があります。また、管理職の持続的な成長を図る上でも、管理職教育プログラムは定期的に継続して実施されるのが望ましいでしょう。
第二のポイントは、社内で広く公募し、可能な限り管理職になりたいと望む人材を選考対象にすることです。
自ら管理職になりたいと望まない人材を管理職に登用しても、当人のモラルやモチベーションが低くなりがちで、さらにチーム全体の運営にも好ましからぬ影響を与えかねません。チームのリーダーには、リーダーになりたいという人を優先して登用を検討すべきです。
続いて、管理職を外部から採用する際のポイントを挙げます。
第一のポイントは、採用検討者のこれまでの実績を確認することです。
これまでにかかわってきた仕事の内容、ポジション、率いてきたチームの内容といった情報とともに、それらを率いてきた結果、成し遂げた実績をしっかりと確認する必要があります。
第二のポイントは、外部から採用した管理職と、その上司とのコミュニケーションを密にすることです。
外部から採用した管理職にとっては、職場は新天地であり、初めて勤務する場所です。同僚や仲間が存在せず、往々にして孤立しがちです。そうした状況の中、上司が管理職とコミュニケーションを密にすることで管理職の孤立化を防ぎ、彼・彼女の能力を前向きに引き出すことが可能になります。
野球チームの場合でも、いくら優れた選手を集めたとしても、リーダーたる監督の能力が乏しければ、チームが勝つことは難しいでしょう。同様に会社組織においても、いくら優秀な社員を集めたとしても、リーダーたる管理職の能力が乏しければ、期待される結果を出すことは難しいでしょう。
期待される結果を出すには、優れた管理職が必要であり、その能力を持続的に向上させてゆく必要があります。「優れた管理職なくして企業の繁栄なし」、企業経営者の方には、この言葉を胸に刻んでいただきたいと思います。
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