仕事の教え方のポイントは?新人を即戦力にするための教育手順を解説
入社したばかりの新人に最短で活躍してもらうには、どのように仕事を教えるのが効果的なのでしょうか。新人と言っても、新卒、中途、パートやアルバイト、外国人労働者、シニア世代などさまざまです。本記事では、新人が入社後にいち早く活躍してもらうための仕事の教え方について解説します。
入社したばかりの新人に最短で活躍してもらうには、どのように仕事を教えるのが効果的なのでしょうか。新人と言っても、新卒、中途、パートやアルバイト、外国人労働者、シニア世代などさまざまです。本記事では、新人が入社後にいち早く活躍してもらうための仕事の教え方について解説します。
時間とコストをかけてようやく新しく入ってきた人材には、できるだけ早く実力を発揮して「会社の戦力」になってもらいたいというのが、経営者の正直な思いでしょう。
会社の戦力となってもらうには、既存の従業員が、その人材に与えられた業務をこなすために必要なことを教える必要があります。
ただ、ひと言に仕事を教えるといっても、闇雲に「これをしてほしい」「あれをしなければいけない」と伝えても、うまくいかないことがあります。入社時点で持っている能力・スキルも、その人自身の性格・考え方も人それぞれだからです。
そこで、まずはどのように仕事を教えればよいのか、身につけておきたい心構えをご紹介します。
新しい人材を雇ったはいいものの、「会社の戦力」を受け入れる現場では人手不足で忙しく、その人材が何を目的に採用された戦力なのかということよりも、自身の作業量を減らすことを優先してその新人に仕事を教えることに終始しているケースがめずらしくありません。
一日も早く「会社の戦力」になってもらうといっても、その定義はさまざまです。しかし、仕事を教えるときは、「会社の戦力」になるとはどういう状態を指すのかを明確にすることが重要です。目的がはっきりとしていたほうが、より効率的に教えた効果を得ることができます。
対象の人材に合った目的が明確になったとしても、それを達成するための教え方を間違えてしまえば、新人は期待したような活躍をすることはできません。対象の人材に適した手段で教える、という視点も重要です。
人によって、絵で見たほうが理解が早い人、耳で聞いたほうが理解が早い人などがいます。教える対象者に適した方法やツールも併用しながら教え方をいろいろ試してみると、意外と想像よりも効果が高い場合があります。
相手に合わせて教える方法を変えてみることは、長い目で見れば結果的に目的に早く近づく道です。
部署内で複数の人がその仕事の経験がある場合は、戦略的に教育係を決めましょう。教え方は技術であり、組織の中でできるだけ多くの人材が適切な教え方の技術を身につけることは、会社全体のパフォーマンスの底上げに寄与し、結果的に業績向上に貢献します。
仕事の結果のフィードバックを定期的に行うことは、新人が適切な仕事の仕方を早く習得するのに役立ちます。
また、教わった内容を正しく理解し実施できたかを確認できる何らかの指標をあらかじめ提示すれば、新人が抱えがちな不安(教えてもらったことを自分がきちんとできているのか、など)が解消され、モチベーションの保持にもつながります。
「教える技術」を使っているのにうまく行かないときは、多くの場合、教える側と教えられる側の目的意識がずれているか、またはお互いに良く理解できていないことが考えられます。
例えば、教える側は新人に仕事の仕方を最初から最後まできっちり把握してもらい、教えたあとは自分の代わりに担当者になってもらうつもりで教えていた。しかし、教わる側はそのような認識はしておらず、上司や先輩が忙しいから一時的にその作業を手伝ってもらいたいだけだと解釈していて、身につけてほしいはずの「仕事の全体像や優先順位」をまったく理解していなかった、といったケースはよく起こりがちです。
このように、きちんと「教えたはず」なのに、期待されていた結果に届いていなかった場合は、目的意識の共有が不十分でなかったか振り返ってみることが解決の第一歩です。
では、実際にどのように教えていけば良いのでしょうか。現場によって教える側と教えられる側の状況によって調整すべき細かい点はありますが、基本は次の5ステップです。
最初に、教育係と新人が、対象の仕事を教える目的と望ましい結果について同じ認識を持てるように時間を取ります。
ここで大切なのは、新人のモチベーションを考慮し、その仕事ができるようになることで、多忙な同僚や上司を手伝うという補助的な役割だけではなく、「自分の成長につながる」「より責任のある仕事ややりがいのある業務を担当できるようになる」など未来志向で説明することです。
目的の共有は適切になされていたのに結果が伴わなかった、という場合は、実際の「教える技術」の実践ステップでつまずいている可能性を探っていくことになります。
教える目的とイメージが共有できたら、具体的な仕事の内容説明に入ります。その仕事に関与している社内の部署や取引先の担当者など、実際に仕事を進めていく上で必要な情報と、仕事の流れを説明します。
詳細を説明する際に注意すべき点は、教える対象の新人の社会経験や能力に合わせて、具体的な手順を伝えることです。
実務経験豊富な中途入社の新人は、ある程度自分なりの作業の進め方のイメージがあるのが自然です。その進め方で結果が出て、かつ関係者に支障がなければ、従来の手順をそのまま踏襲させる必要はありません。むしろ、その仕事を担当する者が変わるタイミングで作業工程を見直し、例えば、DX導入を検討するなど、より効率的な方法を探る機会ととらえることもできます。
逆に、新入社員の新人に教える場合は、自分なりの仕事の仕方が確立していない可能性が高いため、これまでの担当者が行ってきた仕事の仕方をそのまま実践できるように、最初はやって見せて教えた方が目的を達成しやすいでしょう。
また、仕事を教えたあとに新人が予定通りの結果を出せているかを確認し、必要に応じて改善を促すフィードバックが必要も必要です。仕事の進捗を確認する方法や手段については、あらかじめ共有しておきましょう。また、突然予想外のチェックで、新人が自信を無くしたり信頼されていないと不安になったりしないように配慮することも、新人との信頼関係を保つ上で重要です。
実際に作業を始めたら、教育係はできるだけ細かい介入をせずに見守ります。これは、新人や後輩に初めて仕事を教える立場になった人にとっては、ストレスの原因になるかもしれません。
しかし、ここで最初に共有した仕事のイメージを元に、新人が自分で考えて仕事を進めていく力をつけていけるか(自発的な学びと成長につながるか)どうかの分かれ道になることも多いものです。
その意味で、このステップは、教育係が新人の能力とポテンシャルを信じることができるか、という教える側の力量が試されているともいえます。
本人に仕事をさせて経過を見守り、多少の回り道や対応漏れがあっても致命的でないかぎり我慢して見守る、そんな姿勢が教える側には求められます。
しかし、実際の現場では、どんなに新人の力量とポテンシャルを信じて仕事をさせても、見守っているだけで期待どおり仕事を覚えてくれるとは限りません。その場合は、もちろん何らかの介入と支援が必要になります。
では、介入や支援が必要かどうかは何を基準に判断すればよいでしょうか。タイミングが早すぎても遅すぎても、新人の成長や仕事の習得の妨げになります。
ここで、ステップ2で進捗確認の方法と手段を決めておくことの重要性が意味を持ちます。それによって、教育係が介入や支援をすべきタイミングを逃し、状況をさらに悪化させてしまう危険性に早く気づくことができるからです。
また、実際に介入や支援をするときは、最初からなんでもかんでもやって見せて教えることは避けるべきです。
自発的に効率的なやり方やより効果的な方法を見つけようという意欲がそがれてしまう恐れがあるため、その点に配慮しながら行うことが重要です。
途中で介入が必要でだったかどうかに関係なく、教えた仕事を新人が最後まで実施できた時点で、次につながるように結果に対する評価とフィードバックを行います。
教えた側と教わった側が共に振り返る機会を持ち、上手くいった点はなにか、上手くいかなかった原因は何か、事前の準備でその原因を回避することはできたか、などをお互いの考えを率直に共有します。
フィードバックのポイントは、新人の仕事に対する努力と前向きな姿勢を受け止めるという立場から、具体的に良かった点と、次回以降に改善するとさらに良くなると思われる点をポジティブな言葉で伝えることです。決して、相手の人格や行動を否定するような表現を使ってはいけません。
自分が教えた仕事ができるようになってくれた新人にポジティブな言葉をかけることができるのは、自分自身が褒められているのと同じように嬉しいものです。
組織にとって、上記のようなステップを踏むことができる新人教育の担当者をどうやって育てるかは、新人を育てるのと同じくらい重要な課題です。
優秀な教育係を育てるためには、新人に仕事を教えることを優先するあまり、教育担当者自身がメンタルをやられてしまうようなことにならないよう、まずは教育係が上司に安心して相談できるような組織の体制を整えておくことをお勧めします。
あわせて、教育係が新人教育をすることで本人の成長と評価につながる仕組みにすることが重要です。これらを通して、教育係が「自分たちにも支援があり、適切な評価がなされるんだ」と感じるようになってはじめて、良い新人教育につながります。
その上で、これまで新人教育に携わってきた上司や先輩社員が、自らの経験を交えながら教育の仕方や注意点をレクチャーします。外部講師を招き、教育に必要な考え方やコツを覚えてもらうのも良いでしょう。
近年は法律の改正もあり、新人教育を担当する教育係は、仕事を教えているつもりがパワハラやモラハラと受け取られないように、新人に向ける言葉と態度には十分注意する必要があります。
経営者としてはその点にも注意を払いながら、新人に仕事を教えるのにふさわしい人材に育てていかなくてはいけません。
新人教育に必要な心得を身につけ、技術を学んだとしても、新人が期待通りに仕事を覚えてくれないことが続くと、教育係のメンタル面に影響が出始める可能性があります。そのため、教育係が教育を実際にするようになったあとも、教育係のメンタルヘルスに注意を払うことが重要です。
教育係へのフォローは、新人の教育プロセスの進み具合とは直接関係なく、計画的に実施するように、あらかじめスケジュールを決めておくのが良いでしょう。
フォローの内容そのものは、新人の教育係を担当することが決まった段階で、本人の上司などと相談して決めます。上司との面談という形式でフォローするのが一般的ですが、状況によっては、教育係の上司ではなく別の部署の教育係としての先輩にヒアリングをしてもらうなどの方法もあります。
最後に、筆者が携わってきた企業の中から、参考となる企業の取り組み事例を2つご紹介します。
これまで新人の教育を年齢差のある上司が行っていましたが、ハラスメントととられかねない状況が常態化し、問題となっていた企業の事例です。
この企業では、1~2年先輩の社員に教育係として正式にアサインし、年の近い同世代の先輩が1年程度先に経験している仕事をマニュアル化して教えるようにしました。
世代格差のない先輩社員に教育係を正式にアサインした結果、この企業では無事にハラスメント発生の懸念を和らげる(減らす)ことができました。また、仕事の仕方をマニュアル化することにより「教える」プロセスの短縮化も実現でき、入社2年目、3年目の若い社員に実績と自信を持たせられるようになったとのことです。
ある企業では、中堅社員が中途採用で入社した場合、従来は所属部署の上司や同僚が仕事を教えることが多く、配属部署のメンバー構成によっては、中途社員よりも若い社員が教育係として指導するケースも珍しくなかったそうです。
中途社員が、仕事に絡んだ職場全体の相談を気軽にできる相手が同じ部署にいないケースもあり、悩みを相談できずに抱え込む中途の新人社員もいました。
そこで、所属部署に関係なく、年齢的にメンターとして相談しやすい相手をバディとして作れるようにしたところ、悩みを抱える人数が減っていきました。仕事を教えるときにありがちな中途の新人社員が持つ悩みを、組織の横のつながりを強化することで解消した事例です。
人に仕事を教える技術は、誰でも学べるし習得できます。その技術を磨く過程においては、教える相手が部下であろうと目上の先輩であろうと、互いにリスペクトの気持ちを持って教え学び合うことによって、人が育つ文化が醸成されていきます。
これからの時代、教える対象は新卒社員ばかりではありません。中途入社の働き盛り世代から高齢者、パートやアルバイトの女性、外国人労働者なども多様な人材が対象となります。教え方が多様化していくのは自然な流れです。
それぞれの個性と能力や経験値に合った教え方の引き出しを増やすことは、教え方の技術を磨くことにほかなりません。そのような技術の価値を共有する社員を増やし、教える技術に長けた優秀な人材がさらに優秀な人材を育てる組織にする取り組みを、今日から始めてみてはいかがでしょうか。
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