宇宙事業進出・教育旅行に特化・・・ 課題解決への戦略をプレゼン
ツギノジダイのパートナー団体「家業イノベーション・ラボ」が2022年7月2日、「いばらき家業イノベーションサミット」というイベントを開き、茨城県の中小企業の後継ぎ3人が、自社の課題解決につなげる新規事業などについて熱いプレゼンテーションを披露しました。
ツギノジダイのパートナー団体「家業イノベーション・ラボ」が2022年7月2日、「いばらき家業イノベーションサミット」というイベントを開き、茨城県の中小企業の後継ぎ3人が、自社の課題解決につなげる新規事業などについて熱いプレゼンテーションを披露しました。
「家業イノベーション・ラボ」は2017年の発足以来、後継ぎ経営者が企業見学ツアーやセミナーなどで交流の機会を深め、経営改善策などについて情報交換する機会を提供しています。
今回、東京都内で開かれた「いばらき家業イノベーションサミット」には、2021年度の「家業イノベーションアイデアソン」に参加した茨城県内の企業経営者が登壇。その成果や新しく取り組んでいることなどを、会場に集まった約30人の前で話しました。
茨城県那珂市で金属の精密加工などを手がける菊池精機からは、3代目で常務の菊池正宏さんが登壇しました。1961年に創業した同社は工作機械を使って、金属を千分の1ミリ単位で精密に削る技術をコアにしており、変電所や飛行機のジェットエンジンなどの仕事を請け負っています。
しかし、菊池さんには「付加価値が生まれにくいという部品加工業の課題を打破したい」という問題意識がありました。
アイデアソンに参加して、様々な検討を重ねる中で、着目したのが航空宇宙分野への参入でした。自社の不動産の売却益を原資に、超小型人工衛星用の構体メーカーを目指して動き始めました。
「2026年に茨城県の中小企業初の超小型人工衛星を打ち上げるための旗振り役を務めています。様々な人と協力しながら部品を製作し、人工衛星の事業化を実現することでグローバルに広がる宇宙事業の関係者を呼び込み、地元をにぎわう街にしたい」と意欲を燃やしています。
同じく那珂市で内装工事などを手がけるオスクは1991年に創業し、27歳で入社した大野剛さんが2018年に2代目社長になりました。プリント壁紙の内装も請け負い、航空宇宙開発機構(JAXA)などの工事も手がけた実績があります。
しかし、大野さんは「内装業は職業としての認知度が低いという課題があったにもかかわらず、自分たちを卑下しながらその環境に甘んじていました」と言います。
大野さんはアイデアソンなどの機会を生かしながら「不人気職種」(大野さん)にどうやって入ってもらうかに知恵を絞りました。
その一つが、サッカーJ2水戸ホーリーホックとの取り組みです。クラブのスポンサーになり、選手用ロッカーに付けるタペストリーを製造して、そのレプリカをグッズとして製造販売しました。内装業に縁が薄いサッカーファンにも自社の技術を広く知ってもらう狙いがあります。
そのほかにも、アーティストとコラボした壁紙の製造や自社の紹介動画の制作、地元中学生に職業体験の機会を提供するなどして、業界の認知度を高めようとしています。取り組みは道半ばですが、職人希望の3人が就職して定着し、うち2人が女性とのことです。
大野さんは「コロナ禍で売り上げは大幅にダウンしましたが、2022年6月期決算では黒字化を達成できた」と言います。これからも人材獲得や育成を進めて「地方でインテリアに関する相談を受けるための拠点を広げたい」と話しています。
旅行会社のアーストラベル水戸(水戸市)はコロナ禍が直撃し、年間3億円あった売り上げが吹き飛んだといいます。21年に社長に就任した尾崎精彦さんは「選択と集中をせざるを得なかった」と言います。
茨城県の人を県外や海外に出す「アウトバウンド」では、同社の強みは発揮できません。「我々は沖縄やハワイといった行き先のプロではありません。首都圏から人を呼ぶ茨城専門の会社になろうとしました」
特に目を付けたのは、学校行事などにフォーカスした教育旅行でした。いかだ体験や特産のしじみを味わうなど、茨城県の魅力を盛り込んだ旅行プランを企画。首都圏の学校からの受注を得ることができました。
県内を回る旅行プランで3億円の売り上げを獲得したという尾崎さんは「全部の売り上げを合わせて10億円くらいの会社にしたい」と話します。
教育旅行に特化することで「自分たちで価格を決めて利益率の高い自社商品を送り出したい。茨城県の社会インフラを支えるような企業になりたいです」と意気込んでいます。
イベントでは、中小企業経営者らが自社の取り組みについて意見交換し合ったり、協業の相談をしたりする光景が見られました。
家業イノベーション・ラボでは2022年夏から約1年間にわたり、茨城県内で家業を継承した人や、引き継ぐ予定の人を対象にした「家業イノベーション・アイデアソン2022」を開催します。アイデアソンの詳細や申し込みは、こちらのページにアクセスして下さい。応募締め切りは7月31日です。
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