「厨房にナメクジ」告発のフランチャイズ店 大阪王将が契約解除
杉本崇
(最終更新:)
大阪王将は2022年7月27日、フランチャイズ店舗の仙台中田店の厨房でナメクジが発生しているとSNS上に投稿があったことについて保健所から食品衛生指導票を受け取った結果を公表しました。湿気の多い季節には外からナメクジの侵入があったこと、店舗の屋外でネコを飼育していたことなどが確認されました。小規模な飲食店でもHACCPに沿った衛生管理が義務づけられており、保健所からHACCPも含めて13項目の指摘があったといいます。大阪王将は8月25日、指摘箇所の改善完了を公表したうえで、その翌日に契約違反によるフランチャイズ契約解除を明らかにしました。
大阪王将とは 餃子の王将との違い
「大阪王将」は大阪府枚方市に本社があり、中華・ラーメン業態の直営店・FC本部運営、食材の卸・販売を事業とし、イートアンドホールディングスのグループ会社の一つです。餃子専門店「大阪王将」のほか、らーめん専門店「よってこや」、太陽の恵み味「太陽のトマト麺」も手がけています。
一方の「餃子の王将」は、王将フードサービス(本社・京都市山科区)が運営する中華料理レストランチェーンで、衛生管理の問題が起きている大阪王将とは別会社で「餃子の王将 仙台中田店」(仙台市太白区中田町後河原)も今回の問題とは無関係です。
知的財産高等裁判所の2007年判決文(PDF方式)などによると、「餃子の王将」の創業者は1967年12月、「王将」の名称で中華料理店第1号店を開店し、翌年にチェーン店化構想を打ち出し、その後続々とチェーン店を開店しました。2022年3月31日時点で直営店が536店舗、フランチャイズ店が198店舗あります。
一方、大阪王将の創業者は1969年2月、後に「餃子の王将」となる店舗で従業員として働き、その後、独立しました。独立後に「王将」「大阪王将」「大阪王将チェーン」という表示で営業したため、誤認や混同が起こり、その後「餃子の王将」と「大阪王将」という表記を分けることで和解が成立していました。
大阪王将のFC店の「ナメクジ」問題発覚の経緯
今回、衛生管理の問題が発覚したのは、大阪王将のフランチャイズで、仙台中田店(仙台市太白区中田町杉ノ下)です。従業員を名乗るTwitterアカウントが7月24日、厨房でナメクジが大量発生していることや猫を飼育していることなどを画像付きで公表しました。
翌25日には、大阪王将の公式サイトや、店舗をフランチャイズ経営するファイブエム商事が「事実関係につきまして、保健所とも連携の上、検査および調査中」などとする文書を公表。さらに27日には、大阪王将が保健所から食品衛生指導票を受け取った結果を明らかにしました。
保健所、大阪王将のFC店に13項目の指摘
大阪王将が公表した保健所の調査結果によると、ナメクジ、そ族(ネズミ)、昆虫などは調査時に見つからなかったといいますが、湿気の多い季節には外部からの侵入があったことが店舗から報告されたといいます。
また、2019年10月12日~2022年6月15日まで、店舗の屋外でネコを飼育していたことが明らかになりました。衛生検査の日には猫をほかの場所に移していたため、発覚しなかったといいます。
そのほかにも様々な安全衛生上の問題が見つかったため、保健所は次の項目の指摘をしたといいます。
- 厨房内(床、グレーチング、グリストラップ、機材器具等)や廃棄物保管場所付近の清掃を徹
底すること。食品衛生上の危害の発生を防止するため、清潔な状態を維持すること
- 食品、食材、調理器具、食器類は格納棚に清潔な状態で保管すること
- HACCP に沿った衛生管理を行い、記録を作成、保管すること
- 食品衛生責任者について、早急に変更届を提出すること
- 客席と調理場の区画がないため、早急に改善すること
- 盛り付けは調理行為に該当するため客席ではなく厨房で行うこと
- 害虫の侵入を防ぐため出入口の扉に網戸を設置(2ヵ所)
- 動物の飼育は行わないこと
- 定期的に従業員の衛生教育を実施し、記録を残すこと
- そ族昆虫の対策の更なる徹底を行うこと
- 床に剥がれ等、劣化がみられるので修繕を行うこと
- 定期的に改善がされているか確認、記録すること
- 指摘事項について改善し、改善後、改善報告書を提出すること
全351店舗の衛生監査の結果を公表 「不可」が3店舗
このほか、大阪王将は8月2日、休業中・改装中の店舗を除く351店舗について、「HACCP の考え方を取り入れた衛生管理」に準拠した店舗衛生の向上を目的とした衛生監査の結果を公表しました。
4段階評価で、最低の「不可」が3店舗見つかりました。この3店舗については、衛生講習会を開催し、一部外部清掃業者による清掃作業を実施の上、再度、衛生監査を実施し、最上位ランクの「優」まで改善しましたと説明しています。
小規模食品事業者も義務 HACCPに沿った衛生管理
食品を扱う事業者にとって、防虫対策を含む衛生管理は常に注意をしなければならない項目です。2021年6月からは、小規模な飲食店も含めて原則、すべての食品等事業者にHACCP( Hazard Analysis and Critical Control Point)に沿った衛生管理が義務付けられています。
小規模な飲食店は、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け)(PDFファイル2741KB)を参照してください。次のようなことが求められています。
- 「一般的な衛生管理」及び「HACCPに沿った衛生管理」に関する基準に基づき衛生管理計画を作成し、従業員に周知徹底を図る
- 必要に応じて、清掃・洗浄・消毒や食品の取扱い等について具体的な方法を定めた手順書を作成する
- 衛生管理の実施状況を記録し、保存する
- 衛生管理計画及び手順書の効果を定期的に(及び工程に変更が生じた際等に)検証し(振り返り)、必要に応じて内容を見直す
HACCP(ハサップ)とは
HACCPとは、食品等事業者が食中毒菌汚染や異物混入などの危害要因を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至るすべての工程で、危害要因を除去や低減させるため重要な工程を管理し、製品の安全性を確保する衛生管理の手法のことです。
これまでの抜取検査と比べると、問題のある製品の出荷を未然に防げて、原因の追及も容易になると言われています。
大阪王将、改善完了を公表 翌日に契約解除
大阪王将は8月25日、保健所の指摘事項について、店舗をフランチャイズ経営する「ファイブエム商事」が、継続的に点検や確認が必要な項目を除いて、改善策を完了したと公表しました。
しかし、その翌26日には、「調査の結果、契約違反が認められた」として、ファイブエム商事が運営する大阪王将2店舗(仙台中田店、仙台西多賀ベガロポリス店)のフランチャイズ契約の解除を明らかにしました。
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この記事を書いた人
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杉本崇
ツギノジダイ編集長
1980年、大阪府東大阪市生まれ。2004年朝日新聞社に記者として入社。医療や災害、科学技術・AI、環境分野、エネルギーを中心に取材。町工場の工場長を父に持ち、ライフワークとして数々の中小企業も取材を続けてきた。
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