15年前の2007年9月3日、大手百貨店の大丸と松坂屋ホールディングスが経営統合し、共同持ち株会社「J.フロント リテイリング株式会社」が発足しました。

J.フロント リテイリングは一躍最大手の百貨店グループとなり、百貨店業界の再編を促すきっかけになりました。

J.フロント リテイリングの発足を発表した記者会見後、握手するJ.フロント リテイリング奥田務社長(左)と岡田邦彦会長=2007年9月3日、東京都千代田区、朝日新聞社

当時の百貨店業界は、競争が激化する小売業界の中で劣勢に立っていました。

景気が拡大し、国内の小売業全体の売上高は回復傾向にありましたが、専門店や郊外のショッピングセンターに押されて苦戦していました。

これまで業績不振の百貨店を救済する形での再編はありましたが、徐々に業界での生き残りをかけた積極的な他社との統合を模索する動きが出てきました。

大丸と松坂屋ホールディングスの経営統合の発表会見について報じた当時の2007年3月15日付朝日新聞朝刊(東京本社版)によると、大丸の奥田務会長(当時)は「攻めの統合が最善の選択と判断した」と述べました。

両社の経営統合直後には、全国の大丸と松坂屋でそれぞれ記念セールを開催。東京の松坂屋銀座店では開店前から行列ができ、初売り並みの活況だったといいます。

東京・銀座の松坂屋銀座店では、大丸との経営統合記念セールを待ちわびた200人ほどが開店前から列を作った。同店宣伝課は「初売り以外でこれほど並ぶのは珍しい」=2007年9月4日、東京・銀座、朝日新聞社

その後、J.フロント リテイリングは両社の経営資源やサービスの統合を推し進め、2010年代に入ると多角化や業態を超えた再編にも乗り出しました。

2011年には松坂屋銀座店の閉店にともなう大型複合商業施設(GINZA SIX)の開業計画を発表。百貨店にこだわらず、うまく収益を上げられる業態に転換させました。

2012年にはファッションビル大手のパルコを傘下に。パルコは百貨店とは客層が異なる若者をターゲットとしており、J.フロント リテイリングは都市商圏のさらなる陣容拡大を狙いました。

J.フロント リテイリングが掲げた「脱百貨店」戦略の成果はどうだったのでしょうか。

経営統合当時、百貨店業界全体で8兆円以上あった売上規模が2010年代後半には6兆円台に縮小するなか、J.フロント リテイリングはリーマンショック直後を除き、2020年2月期まで比較的安定した水準を維持。

GINZA SIXの外観=2017年4月14日、朝日新聞社

発足10周年となった2018年2月期の決算では、GINZA SIXの開業効果により営業利益が過去最高水準を記録。さらに2019年秋には新装された大丸心斎橋店の本館が開業し、さらなる業績の上積みが期待されました。

しかし、2020年から新型コロナの感染拡大の影響で業績は悪化。経営統合後、初めての赤字に転落しました。コロナ禍が長引く中、百貨店業界全体がV字回復に向けてしのぎを削っています。

 

(朝日新聞社の経済メディア「bizble」で2021年9月3日に公開した記事を転載しました)