目次

  1. 1961年創業の工房、師匠は褒章受章者
  2. イギリスとペルーで考えた「豊かさとは」
  3. 後継者募集の知らせ「行くしかない」
  4. 生活スタイルが変化、職人数は大幅減
  5. 師匠との修行を経て工房を買い取り
  6. 独立後、製法や売り方を抜本的に見直し
  7. 「唯一無二の一枚を」アート和紙に挑戦
  8. 人と和紙と自然が融合「ワラビーランド構想」
  9. 下がった売上が回復、利益率は大幅改善

 外務省ホームページによると、美濃和紙は岐阜県の特産品で、柔らかみのある風合いと高い耐久性、均一な薄さが特徴です。奈良の正倉院には、現存する日本最古の紙として702年の美濃国の戸籍用紙が所蔵されているそうです。高知市ホームページでは、美濃和紙のほか、福井県の「越前和紙」、高知県の「土佐和紙」を三大和紙と呼んでいます。2021年の東京五輪・パラリンピックでは、表彰状に美濃和紙が使われ、話題になりました。

 千田さんによると、美濃和紙の用途には照明、ちょうちん、障子、和傘、書道の用紙、文化財の修復などが挙げられます。高価なため、通常の文房具には使えません。例えばノートなら1冊3000円以上になるといいます。

 紙は寿命を迎えると、破れたり崩れたりします。ただ、「洋紙は100年、和紙は1000年」言われ、和紙は長持ちします。長い繊維を絡み合わせて漉(す)く製法や、紙を酸化させる薬品を使わない点などが、長持ちの理由だそうです。

千田さんが市原さんから受け継いだ工房(千田さん提供)

 千田さんが引き継いだ「大光工房」は、師匠である市原達雄さん(89)が1961年、美濃市蕨生(わらび)で創業しました。和紙に水をかけて模様をつけた落水紙(らくすいし)や植物入りの和紙など、独自の美濃手漉き和紙の世界を確立します。

 長年の功績が認められ、2013年には瑞宝単光章を受章しました。千田さんは「師匠が受章した時には、すごい方に弟子入りしたんだと改めて感じました」と話します。

 千田さんは公務員の父と銀行員の母の間に生まれ、岐阜県各務原市で育ちました。いつも走り回っているサッカー好きの少年で、今のようなものづくりの仕事に就くとは想像もしなかったそうです。

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