出資金はどういう勘定科目?使用ケースとそれぞれの仕訳例を紹介
出資金とは、協同組合や金融機関の会員や、合同会社や合資会社の社員になるためなどのときに行われる、資金提供の仕訳時に用いる勘定科目です。この記事では、出資金という勘定科目の特徴を整理し、具体的にどんなシーンで使われているのか、用いるときの注意点は何かなどを解説します。
出資金とは、協同組合や金融機関の会員や、合同会社や合資会社の社員になるためなどのときに行われる、資金提供の仕訳時に用いる勘定科目です。この記事では、出資金という勘定科目の特徴を整理し、具体的にどんなシーンで使われているのか、用いるときの注意点は何かなどを解説します。
目次
出資金とは、自身が出資をした際に利用する勘定科目です。例えば、農業協同組合の会員になるために出資をしたときや事業を共同で行う場合の任意組合などに出資したときに用いられます。
提供した資金は基本的に会員を脱退するときに返還をしてもらえるため、出資金で仕訳したときは、出金しますが資産に計上されます。
反対に、合同会社などで出資金を受け取るときは資本金という勘定科目を用います。これは純資産に計上されます。
なお、出資すると出資証券をもらうことが一般的ですが、株式ではないため、勘定科目においても株式という名称は使用しません。
では、出資金は、具体的にどのようなシーンに用いられるのでしょうか。ここでは主なシーンについて、仕訳例とあわせてご紹介します。
生活協同組合や農業協同組合などの協同組合の中には、サービスを利用する際に出資をして組合員になる必要があるものがあります。出資をしなくても利用することはできますが、出資をする方が組合員価格で購入できるなど有利になることが多いです。また、必要な資金も1,000円から10,000円程度と比較的低額であることが特徴と言えるでしょう。
出資金は、この協同組合に資金を提供したときに用います。なお、組合員を脱退するときには返還され、消費税の課税取引には該当しないため、仮払消費税という勘定科目は用いません。
【例】農業協同組合の組合員になるため出資金を10,000円支払った
借方 | 貸方 | ||
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出資金 | 10,000円 | 現金 | 10,000円 |
信用金庫や信用組合などの金融機関を利用する場合、特に多額の借入をするには、会員になる必要がある場合があります。
信用金庫・信用組合で支払った出資金は、会員をやめるときに返還されます。そのため、信用金庫などに出資をした際も消費税の課税取引に該当しません。
【例】信用金庫と取引を始めるにあたり出資金100,000円を支払った
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
出資金 | 100,000円 | 現金 | 100,000円 |
会社は株式会社以外にも、合同会社や合資会社を設立することができます。現在は会社法の改正により、新規の設立はできませんが、有限会社というものもあります。これらは、株式発行による資金調達ではなく、社員と呼ばれる出資者の出資により設立、運営されていく法人です。
出資金は、この社員になるために支払ったお金を仕訳するときにも用います。なお、この出資金も社員から脱退する際に返還されるため、消費税の課税取引には該当しません。
【例】合同会社の社員になるため、出資金1,000,000円を支払った
借方 | 貸方 | ||
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出資金 | 1,000,000円 | 現金 | 1,000,000円 |
事業をしていると、共同で事業を営むために任意組合、匿名組合、パートナーシップといった形で出資をすることがあります。
任意組合とは、参加した当事者が出資金や労力を提供し、共同の事業を営むことを約束して組まれた組合です。映画制作で委員会を組むことがありますが(テロップを見ると最後に出てきます)、それも任意組合の形式を取っていることがほとんどです。
匿名組合とは、当事者の一方が相手方の営業のために出資し、その営業から生じた利益を分配することを前提に組まれた組合です。一般的にファンドなどで他社に出資していることを知られたくない場合に用いられます。
パートナーシップとは、複数の参加者が出資金あるいは労力を提供して営業を行い、その営業より生ずる利益または損失を分けあうことを約束した共同体のことです。パートナーシップには、ゼネラル・パートナーシップとリミテッド・パートナーシップの2つの形態があります。
このように共同で事業を営む場合に出資をしたときも、出資金を用います。なお、この出資金も消費税の課税取引には該当しません。
【例】任意組合に1,000,000円を出資した
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
出資金 | 1,000,000円 | 現金 | 1,000,000円 |
任意組合は、営業により生じた損益は、当事者間で特段の契約をしていない限りは、各組合員の出資額に比例して分配することと民法で定められています。パートナーシップも営業の結果、得た財産はパートナーシップを締結した当事者間で共有することになっています。匿名組合の場合、財産は営業者に帰属しますが、出資者は営業の成果で得られた利益を分配することを契約することが一般的です。
このように、任意組合などは、出資後に得た利益や財産は出資者のものとなる点が特徴です。そのため、出資後に得た利益や財産に対して、出資者側でも会計処理を行う必要があります。
会計処理の方法は3つありますが、一番オーソドックスな仕訳例は以下のとおりです。実際に会計処理を行う際には、出資契約などによって異なるので、弁護士、会計士・税理士など、法律と会計の専門家に相談することをおすすめします。なお、こちらも課税取引にはなりません。
【例】出資している任意組合から決算報告をもらった。1,000,000円の利益があり、当社の出資比率は30%であったため、300,000円の利益を計上した
借方 | 貸方 | ||
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出資金 | 300,000円 | 投資収益 | 300,000円 |
ゴルフ会員権とは、ゴルフ場の会員となる権利金のことです。会員になると、会員の方でないビジターの方よりも優先的にゴルフ場を利用できたり、会員価格で利用できたりといったメリットがあります。企業によっては、接待用にゴルフ会員権を保有していることがあります。
ゴルフ会員権は、預託金方式、株主方式、社団法人方式、任意団体とゴルフ場によってさまざまな形態を取っています。多くは預託金方式、株主方式を採用しています。
預託金方式、株主方式を採用しているゴルフ会員権を購入したときは、多くはゴルフ会員権という科目を使って会計処理をします。それ以外の方式のゴルフ会員権を取得した場合や、ゴルフ会員権という勘定科目を採用していない場合は、出資金が用いられるのが一般的です。
なお、ゴルフ会員権の消費税関係は複雑です。ゴルフ場の運営元に直接払い込み返還されるものに関しては、課税取引には該当しません。しかし、返還されない入会金などは消費税の課税取引になります。
また、ゴルフ会員権は仲介業者を通じて売買されることもあります。この場合も、課税取引になるので注意が必要です。また、付随する名義書換料なども課税取引になります。
【例】ゴルフ会員権仲介業者からゴルフ会員権を購入して消費税込みで1,100,000円支払った。なお、当社は勘定科目は出資金を採用している。
借方 | 貸方 | ||
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出資金 | 1,000,000円 | 現金 | 1,100,000円 |
仮払消費税 | 100,000円 |
出資金を提供する取引の場合、規約や出資契約に基づいて出資します。多くの場合は、脱退した際に出資金を返還してもらうことができるのは、これまで紹介した通りです。
その返還されたお金も、出資金という勘定科目を使って仕訳しますこちらも課税取引には該当しません。
【例】出資金10,000円を返還してもらった
借方 | 貸方 | ||
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現金 | 10,000円 | 出資金 | 10,000円 |
出資金は、基本的に返還されます。しかし、出資した先が破綻した場合には返還されないことも想定されます。
特にゴルフ場は運営元の業績が悪化することも多く、会員からの返還要望に応じる資産状況にないことがあります。その場合は、返還されないとわかった段階で貸倒引当金を計上することが一般的です。
【例】ゴルフ場の運営元の経営状況が悪化し、預託金部分のうち50,000円が返還されない見込みとなった
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
貸倒引当金繰入額 | 50,000円 | 貸倒引当金 | 50,000円 |
その後、50,000円が返還されないことが確定となったら、次のように仕訳します。
借方 | 貸方 | ||
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貸倒引当金 | 50,000円 | 出資金 | 50,000円 |
次に、出資金という勘定科目を用いるときのポイントを3つご紹介します。
出資金はこれまで紹介したようにさまざまな取引の仕訳で使用されます。
そのため、例えばあとで返還されるのかなど、確認すべき項目をリスト化しておくとよいでしょう。特に匿名組合などのように出資後も会計処理をする必要があるものに関しては、出資当初の判断も記録として残しておくことをおすすめします。
出資金と近い勘定科目としては、投資有価証券や関係会社株式などがあります。これらの勘定科目を採用するのは株式に対してであり、出資金ではありません。そのため、出資先の会社形態を確認する必要があります。
なお、合同会社を子会社とする場合は、関係会社株式ではなく、関係会社出資金という勘定科目を採用するのが通例です。
出資金を拠出したときは、消費税法上、消費税の対象取引ではありません。消費税の取引になるには4つの要件があります。
このうち、あとで返還される出資金は対価を得て行われるものとみなされないため、不課税取引となるのがほとんどです。
なお、ゴルフ会員権の売買は対価を得て行われるものであることから、消費税の課税取引の対象となります。ゴルフ会員権に関する取引に出資金を採用するときは、消費税の処理を誤る可能性があるため注意が必要です。
また、会計ソフトによっては、出資金で仕訳すると課税取引に切り替えられないものもあります。その場合は、ゴルフ会員権という科目を採用するとよいでしょう。
ビジネスをする上で、外部に資金提供をするシーンというのは意外とあります。ただ取引によっては、出資金を実は使わないほうがよかったり、課税取引に該当したりすることがあります。
そのため、取引が発生したら、規約や契約書などを読み込んでしっかりと事実確認をしましょう。それとあわせて、税務リスクをおさえるために専門家にも相談をしながら会計処理を決めていくことが望まれます。今回の記事を参考にしていただければ幸いです。
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