視座を高める方法3選 意味やメリットをもとにおすすめの方法を紹介
特に大きな問題はなく仕事はしているが何か物足りなさを感じ、もう一段ステップアップしてほしい従業員には、どのような人材育成方法が有効でしょうか。この記事では、ビジネスの現場で重視されている、従業員の成長を促す人材育成手法の一つとして視座を高めるメリットとその実践方法を解説します。
特に大きな問題はなく仕事はしているが何か物足りなさを感じ、もう一段ステップアップしてほしい従業員には、どのような人材育成方法が有効でしょうか。この記事では、ビジネスの現場で重視されている、従業員の成長を促す人材育成手法の一つとして視座を高めるメリットとその実践方法を解説します。
目次
通常、自分が実行する仕事はいろいろな形で他の人が行う仕事と関係し合って成り立っています。そのため仕事を効率よくこなしたり、質を高めたりするには、自分の仕事を取り巻くさまざまな関係性に目を配りながら、自分の立場で物事を捉えて選択肢を検討し、自分にとって最適と考える方法や手段を取ることが求められます。
そこで注目されているのが、「視座を高める」ことです。いま、ビジネスの現場では、従業員の一人ひとりが視座を高めることが人材育成の一環として重要視されています。まずは、視座を高めるとは具体的にどういうことなのか、「視座」の意味からご説明します。
視座とは、「物事を見る姿勢や立場」などと定義され、物事を見ている自分の立ち位置のことを言います(参照:視座丨コトバンク)。例えばある人が一般社員の立場から業務の取り組み方を考えたり、進め方を判断したりしていたら、その人は「一般社員の視座に立っている」と表現されます。
似たような言葉に「視点」があり、視点は「視線のそそがれるところ。物を見たり考えたりする立場。観点」などと定義され、物事をどの観点で見るか、を示す言葉です(参照:視点丨コトバンク)。例えば、自社の製品・サービスについて、「品質」という観点で見た場合は「品質の視点に立つ」、「顧客満足」という観点で見た場合は「顧客満足の視点に立つ」と表現されます。
その意味で言えば、「視点」は視野とは異なります。視野は、「物事を考えたり判断したりする範囲」などと定義され、物事をどの範囲で見るのかを示す言葉です(参照:視野丨コトバンク)。例えば、自社の事業計画について、「時間的な範囲」で考える場合は「時間的な視野を持つ」、国や地域などの「地理的な範囲」で考える場合は「地理的な視野を持つ」と表現されます。
視座・視点・視座の言葉の違いから、視座とは特定のものの見方を表現するときに用いる視点のうち、人間関係に直接かかわる観点(例えば立場)から物事を判断するときに使われる言葉、となるでしょう。
したがって、それを高めることは、今の自分の立場よりも高い立場から物事を見るようにする行為、と言うことができます。
近年、ビジネスの現場で視座を高めるということに注目が集まっている理由の一つには、従来の終身雇用制度の元で上の指示に従って一定の範囲で業務遂行をくり返しているだけでは、新型コロナやウクライナ状況などの予測不可能かつ急激なビジネス環境の変化に対応しきれず、会社として事業の継続がますます厳しくなってきているという背景があります。
このような状況下では、一部の経営陣のみが事業の方向性や生き残りの戦略を考えるのでは限界があります。これからは従業員の多様な知恵とアイデアを幅広く積極的に採用し、厳しい時代の荒波の中で活路を見出していくことが求められます。
そこで、重要視されているのが、従業員一人ひとりが上の立場、特に経営者の視点を持つことです。ビジネスにおける視座を高めるとは、まさにこの力を養うことにほかなりません。
この能力を身につけさせることができれば、それまで上司や組織からの指示で行っていた担当業務の範囲にとどまらず、組織全体における新たな重要課題とその解決方法に気づき、提案できる従業員になる可能性が生まれます。
ここでは、従業員の視座を高めることで相互に影響し合う、主なメリットを3つご紹介します。
視座が低い状態で業務にあたる場合、当然ながら自分の担当業務の範囲の成果や生産性を上げることが本人にとっての優先事項になります。そのため、周囲とのかかわり方も自己中心的な発想に陥りがちです。
しかし、視座を高めることにより、所属部署内全体や他部署を含めた大きな枠組みの中での自分の役割や期待されている成果について、より明確に認識できるようになります。そのように捉え方が変わることで、上司や組織全体としての優先事項を納得感を持って理解できるようになるというメリットが期待できます。
前述した組織の優先事項に対する理解の深まりによって、それまで自分の業務範囲での経験や知識に基づいたアイデアや意見しか発想できなかった人も、組織全体に対する最適なアイデアや意見を自ずと出すようになります。
視座を高めると、自分自身の業務範囲に対するリスクだけでなく、所属部署全体および会社全体に対して発生しうるリスクにも敏感になります。それによって、リスクの予知とその対処方法に対する管理能力が自ずと磨かれるのも大きなメリットの一つです。
では、実際に視座を高めるにはどのような方法があるでしょうか。視座を高めることはある程度継続的な取り組みが必要なため、短期集中型ですぐに身につくというものではありません。そのため、どのような方法が効果的かは人によって差があるのも事実であり、いろいろなアプローチが考えられますが、わかりやすい例を3つご紹介します。
社内に視座の高い人がすでに身近にいる場合は、その人をロールモデルとしてその言動をよく観察するという方法があります。
ただし、ただ行動を黙って観察するだけでは、その人と同じ視座にはなかなか到達できないかもしれません。その場合は、ロールモデルとなる人の行動の背後にある姿勢や思考法について、本人がどのような考えでその言動を取っているのか、ある程度共有してもらう必要もあるでしょう。
現在の自分の立場よりも2つ上の立場にいる人になったつもりで思考する習慣をつける方法です。ロールモデルの行動を観察する方法に似ていますが、この場合はお手本とする人の行動や思考ではなく、あくまでも自分がその立場だったらどう考えて何をするか、という点に焦点をあてます。
2つ上の立場の人の視座に立つということは、自ずと広い視野で組織を見渡すことになります。1つ上の上司との関係性が改善することもあるでしょう。
場合によっては観察したくても接する機会がそもそも少ないかもしれません。そのときは対象とする人の行動を社内のさまざまな情報を元に推察し、自分なりに繰り返し仮説を立てて確認することで、高い視座で思考することを習慣化するトレーニングになります。
自社とは異業種の分野で視座の高い人と、社外で定期的に交流する機会を持つのも有効なやり方です。
この方法は、やり方次第で単なる異業種交流会に参加するだけで終わってしまう可能性があるため、実際に行う場合は計画的に実践する必要があります。また、「この人のような高い視座を持つ人と交流したい」と思うような、具体的な対象者がイメージできない場合、そもそも実施が難しいこともあります。
ただ、うまくいけば大きな発想の転換や新しいアイデアが生まれるインスピレーションが得られるきっかけになるでしょう。
従業員の視座を高めるためには、前章で紹介した方法をもとに、会社側から従業員に、研修という形でアプローチするのが有効です。
対象者の現時点での視座の持ち方や、社内のキャリアパスや育成プログラムの状況によって細かく内容を変える必要があるので、ここでは基本のポイントを概説します。
この研修を実施する場合は、どのような人または誰をロールモデルとして選ぶか、そして誰を研修受講の対象者とするかについて検討する必要があります。
具体的には、視座を高めることによって、受講者にロールモデルからどのような視座のポイントを学び、身につけてほしいのかをあらかじめ定義しなければいけません。
そのうえで、研修の成果として受講者がどのような状態になってもらいたいのか、研修に入る前に決めておくことが重要となります。その定義があいまいなまま研修を実施すると、ロールモデルとなる人の言動を観察するだけに終わり、実践につながる具体的な学びが伴わない恐れがあります。
この研修を行う場合にもう一つ注意したい点は、ロールモデルとなる人が研修を受けさせたい人とは別の部署や場所にいるときです。そのときは、研修を実施する目的や期間を絞るなどの検討も含めて、一定の期間限定的にロールモデルとなる人の近くで言動を観察したりアドバイスをもらったりできるよう、部署間で両者の通常業務の調整を図る必要があるでしょう。
この研修を実施する場合は、対象の従業員の2つ上の職位の人と同じ役割を、期間限定で体験させる形が考えられます。
研修と言う形を取ることで、期間が限られていても、自分よりも2つ上の職位の人がどのような視座で日々の業務を行っているのか、どのような範囲の視野を持つ必要があるのかなどを実体験させることができます。受講対象者にとっては、百聞は一見にしかずという言葉の意味がよくわかるような機会になるでしょう。
この研修を実施する際の注意点としては、ロールモデルの場合と同様に、誰が研修を受けるのかについて、会社としての明確な意図を持った人選が重要になります。
例えば、一般社員の2つ上の職位であれば、一般的には部長クラスです。短期間とはいえ、一般社員が部長クラスの業務を体験することは、大きな意識変化をもたらす可能性があります。通常の職位の立場では見えなかった世界が見えることにより、自分の担当業務の重要性や役割がより明確になり、仕事へのモチベーションに大きな影響がもたらされる可能性もあります。
一方で、機密情報の扱いなども含めて、組織の構造上2つ上の職位を一般社員に体験させることのリスクもあります。そのリスクを負ってまで研修をやる意味があるのか、慎重な判断が求められます。
この研修は、受講者に身につけさせたい視座の持ち方を体現している人を探すことから始める必要があります。
経営陣や人事部が中心になって該当者を探す方法もありますし、受講者自身が目標としたい「高い視座を持つ業界人」を挙げてもらう方法もあります。
どちらの場合も、受講者にその体現者から何を学ばせたいのか、それによって受講者にどうなってもらいたいのか、具体的にどのような手段と方法で研修を実施するのか、結果をどのような指標で評価するのかについて、あらかじめ入念に考えることが重要になります。
一見実施が難しいと感じるかもしれませんが、マンネリ化傾向にある社内の事業推進状況に打開策を見出して、新しい発想で組織の活性化に貢献できる将来を託せる人材を育てたいという経営者にはおすすめの方法です。
実施する際に注意すべき点としては、社外の人との交流による研修となるため、組織を代表して交流するという点をわきまえて、コミュニケーションマナーと守秘義務に配慮できる良識ある人材を対象者にする必要があることです。
視座を高める方法にはご紹介したもの以外にもさまざまなやり方があり、絶対的な正解はありません。ただし、どのようなアプローチで視座を高める場合にも欠かすことができない基本的なスキルはあります。
視座を高める上で基本となる、以下のようなスキルです。
上記のようなスキルを持ち合わせていなければ、高い視座に立てたとしても必要な行動を導き出し、効果的な行動に結びつけることはできません。
したがって、高い視座を身につけさせたい従業員がまだそうして基本スキルを身につけていない場合には、まず上記のような基本スキルを身につけた上で、視座を高める研修に臨んでもらうという流れで進めることをおすすめします。
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