ファシリテーションとは?目的や必要なスキル、会議の進め方を解説
ファシリテーションとは、組織を活性化する技法のことです。会議やミーティングの進行だけでなく、アイデアの創出、教育支援など活用する場面は多岐にわたります。本記事では、ファシリテーションの基本情報やファシリテーターに必要なスキル、ファシリテーションを用いた会議のポイントを解説します。
ファシリテーションとは、組織を活性化する技法のことです。会議やミーティングの進行だけでなく、アイデアの創出、教育支援など活用する場面は多岐にわたります。本記事では、ファシリテーションの基本情報やファシリテーターに必要なスキル、ファシリテーションを用いた会議のポイントを解説します。
目次
ファシリテーション(Facilitation)とは、集団の活動を円滑に進められるように働きかけることです。グループ体験によって学習を促したり、コミュニティの問題を話しあったりする技法として、1960年代にアメリカで開発されました。語源は「機会を作る」から来ており、そこから「促進する」という意味へ転じたと言われています。
その後、ファシリテーションはビジネスの分野へと広がりました。今日では専門技法として認知され、多くの参加者が集まる会議を効率的に進めたり、業務改善のプロセスを考えたりといった、支援型リーダーに必要なスキルとされています。また、ファシリテーションを用いる人をファシリテーターと呼びます。
ファシリテーションの目的は、さまざまな価値観を持つ人を本来の方向へ導くことです。
たとえば、価値観が異なる人が集まる会議では、幅広いテーマの問題が議題に挙がります。ファシリテーターは、意思決定や合意形成などのコミュニケーションや、アイデア創出といったクリエイティビティを促進し、会議を本来の方向へ進めていきます。
また、合理的な判断をしていると思っていても、無意識のバイアスによる非合理な意思決定は少なくありません。ファシリテーションによる進行や問いかけが、思考のバイアスに気づくきっかけにもなることがメリットです。
なお、ファシリテーションは会議だけでなく、幅広い分野で応用され、活用シーンによって定義や働きかけの意図が異なります。人が集まり、集団行動を促進させたいあらゆる場面にファシリテーションは有効です。
続いては、ファシリテーターの役割について解説します。ファシリテーターは、集団活動全体のプロセスと、集団の中にいる個人の心理プロセスに関わっていきます。
集団活動全体のプロセスでは、活動目的を明確にし、目的達成のために必要な段取りや進行を担当します。
そして、集団の中にいる個人の心理的プロセスでは、個人の満足感や納得感が重要になるため、1人ひとりが何をどのように考えているか、思考の傾向や感情の動きにも関わります。
中長期経営計画を立てる会議を例に考えてみます。会議の参加者は、それぞれに注目しているテーマが異なります。それゆえ、会議に関係のない発言をする人や、何も発言しない人もいるかもしれません。ファシリテーターは第三者の立場に立つことで、会議の話題が目的から離れないように進行します。場合によっては、個人に声をかけ、考えを引き出す役割も担います。
ファシリテーターは、会議以外でも以下のような場面で活動できます。
組織活動や、意思決定をともなう合意形成の場面、教育活動での雰囲気作りやアイデア・意見出し、結論づけにいたるまで、さまざまな場面でファシリテーションによる場の進行が求められています。
ファシリテーションは複合技術です。そのため、ファシリテーターにはさまざまなスキルが求められます。ここでは、基本となる4つのスキルをご紹介します。
ファシリテーションは人が何の目的で集い、どのように活動を進めていくかを設計するところから始まります。まずは、「何を目指す活動なのか」を明らかにしましょう。そして、目標を共有し、実行していくための段取りやルールの策定、メンバーの役割を任命し、協働する意欲を活性化していきます。
ファシリテーターが1人で決めるのではなく、参加者でコンセンサスをとりながら形にしていくと、当事者意識も芽生えていきます。チームビルディングが集団活動に与える影響はとても大きいものです。
人は固有の考え方や価値観を持っていますが、「話さずともお互いにわかっている」というバイアスが生まれてしまいがちです。ファシリテーターは、人は意見が違うという前提を持ったうえで、集団の考えや意思決定を1つの方向へ進めていく必要があります。そのため、傾聴力、要約力、質問力などの対人コミュニケーションのスキルが求められます。声の大小や身振り手振りなど、感情をともなう非言語コミュニケーションへの気配りも忘れてはいけません。
ファシリテーターは、参加者の考えや意見が発せられる場を作る役割を担います。参加者以上に、場のテーマを理解し、把握する必要があります。そのため、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングの思考が欠かせません。1人ひとりが充分に納得感を持って参加できているか、話されるべきことにヌケやモレがないか、論点はズレていないかなど、さまざまな観点を意識し、場をコントロールしていきます。
全員の理解を深めるために、フレームワークや図解を使う場面もあります。論点を明確にし、議論をわかりやすく整理してコンセンサスを図りながら、対話の交通整理を行いましょう。
意思決定のプロセスでは、さまざまな対立が起こり、意見がまとまらないシーンがあります。そうであっても、ファシリテーターが目指す合意形成は、強引に1つの着地点に導くことではありません。参加者が当事者意識を持って場に加わり、納得感のある状態に着地することが求められます。
合意形成を図るプロセスには、必ず問題解決のプロセスも含まれています。人は、それぞれ異なる問題をつねに抱えています。問題とは、「理想の状態」と「現状」のギャップです。ファシリテーターは、このギャップを洗い出し参加者をまとめていきます。
ファシリテーションを用いた会議の進行管理やポイントを、対面とオンラインによる状況別で、それぞれ紹介いたします。
対面による会議を円滑に進めるためには、以下①〜④の流れを設計することが大切です。
オンタイムでスタートし、会議のオープニングとして、目的、流れ、ゴールの共有をしましょう。時間は、3〜5分程度が目安です。あらためて何をする会議なのかが明確になることで、参加者の意識を集中させることができます。
話しやすい場を作り、参加者の緊張をほぐす手段として、アイスブレイクを活用します。肯定的な気持ちを引き出したり、親近感を高めたりすることを意図して行います。話しやすいテーマを提示して、参加者が一言ずつ発言できるように促しましょう。
アイスブレイクのテーマ例 | |
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日常的に顔を合わせるメンバーの場合 | 「最近のよかったこと」「好きなもの」「ニュース」などのシェア |
初めて顔を合わせるメンバーの場合 | 「他己紹介(ペアで自己紹介しあい、相手のことをグループにシェアする)」「共通点さがし」 |
本題は、会議の目的に応じて変化します。場に何を問いかけるのか、誰に発話を促すのか、ファシリテーターのスキルが求められる場面です。
なかなか意見が出にくい会議の場合は、意見がないのではなく、発言を控えていることが原因です。全員が発言できるように、順番に意見を促すことを数回行う、答えやすい雰囲気や問いを心がける、意見に対してポジティブなリアクションを取るなどを意識していきましょう。
また、発言している内容の要点をホワイトボードに書き出す、フレームワークでわかりやすく示すなどの工夫も必要です。発言が他者の意見に影響を受けていると感じる場面があったときは、付箋を活用し、個別に書き出したものをシェアするのも効果的です。
会議の終了時間を考慮したうえで、本日の決定事項、話された内容のまとめ、今後のアクションを簡潔にまとめて確認します。ここでは、ファシリテーターの要約力が生かされます。会議の振り返りとして、参加者に感想の共有を促すのも効果的です。
会議の流れで大切なことは、タイムスケジュールです。ファシリテーターは時間配分を考えて、発話やまとめをコントロールしてください。意見がまとまらなかったときも、時間の延長はおすすめしません。参加者の貴重な時間を尊重するためにも、話しきれなかった内容は次回に設定し直します。
コロナ禍をきっかけに、オンライン会議が広まりました。オンライン会議では、1ミーティング・1テーマで、実施時間は対面による会議より短めが理想です。その他にも、オンラインの会議には従来の会議と異なる準備や注意すべきポイントがあります。
オンライン会議をスムーズに進めるには、通信環境のチェックは欠かせません。有線LANないし、Wi-Fi環境を用意し、安定した回線速度を維持するために、不要なブラウザを閉じておくなどの事前準備をしておきましょう。なお、スマートフォンよりもパソコンからのアクセスが好ましいです。
声が聞こえにくい、雑音が入る、音が途切れるなどは、不快感を感じさせて会議に集中できなくなります。イヤホンマイクや、周辺の雑音を取りのぞくノイズリダクション機能を使って、クリアな音声環境を心がけましょう。映像に不具合がでても、音声がクリアであれば最低限のやり取りは可能になります。
顔がディスプレイの正面に映っているか、アングルチェックをしましょう。雑然とした部屋が映り込んでしまう場合は、バーチャル背景を活用してください。
やり取りの記録には、チャット機能を活用しましょう。画面共有や、ホワイトボード機能などを用いると、認識のズレを防げます。オンラインミーティングで活用できるツールは増えています。普段から使いやすいツールを探しておくことも大切です。
オンラインでのコミュニケーションは、キャッチボールをイメージしてください。同時に複数人がボールを投げると、受け取る側は混乱してしまいます。
手を挙げて話し始めるなどのボディランゲージを取り入れたり、話の途中で思いついた質問はチャットに残したりするなどの工夫も必要です。お互いが気持ちよくやり取りできるルールを参加者とともに作っていきましょう。
印象を伝える要素は、言語7%、声のトーン38%、身体言語55%と言われています(メラビアンの法則)。それによりオンライン会議では、対面よりも得られる情報量が少なくなります。言葉と表情のギャップで誤解させてしまうこともあるでしょう。いつもよりも身振り手振りを取り入れ、表情も笑顔を心がけてください。
ファシリテーターとして対面やオンラインによる会議に関わっていると、どのように介入していくか悩む場面が出てきます。参加者の反応や会議の雰囲気から以下のような反応を感じたときは、適切な関わりができているか見直してみましょう。
目的設定、事前準備、進行管理が万全でも、いざ会議となるとうまくいかないこともあります。100点満点を目指さずに、ファシリテーターとして適切な介入を試しながら会議を進めてみてください。
それぞれの考えや意見を建設的に引き出すファシリテーションの技法は、今まで以上に求められています。とはいえ、すぐに習得できるものでもありません。研修やトレーニングで専門的知識を学び、日常の活動を通して技術を磨いてください。
ファシリテーションを実践する場は、毎日の打ち合わせや会議など、身近に存在します。本記事を参考に意図や目的を持って場に関わり、参加者への貢献を意識することから始めていきましょう。
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