ボトルネックとは ビジネス上の意味・原因・解消手順をわかりやすく解説
ビジネスの場面で「ボトルネックになっている」「ここがネックだ」という言葉を耳にすることはありませんか?ボトルネックがわかると、現状の打開策を見出すことができ、仕事がスムーズに運ぶようになります。ボトルネックの意味やボトルネックが生じる原因、解消する手順についてわかりやすく解説します。
ビジネスの場面で「ボトルネックになっている」「ここがネックだ」という言葉を耳にすることはありませんか?ボトルネックがわかると、現状の打開策を見出すことができ、仕事がスムーズに運ぶようになります。ボトルネックの意味やボトルネックが生じる原因、解消する手順についてわかりやすく解説します。
目次
ボトルネックとは、ビジネスなどの業務の全工程において、業務の停滞や生産性の低下といった悪影響を与えている工程・箇所のことを指します。
ボトルネックの由来は、瓶(ボトル)の最も細い首の部分(ネック)である“bottleneck”です。
広いところから狭いところにいくときにスムーズさが欠けてしまうように、うまくいかない原因が発生したときに「ここがボトルネックだね」や「ここがネックになっていると思う」といった言い方で使われます。
国立国語研究所の公式サイトによると、言い換えとして「支障」「妨げ」などを挙げています。
ボトルネックの意味は前述のとおりですが、何をボトルネックと呼ぶのかという点については、業界や仕事の場面によって変わります。
一例として、製造業、IT業界、プロジェクト進行の場で使われる“ボトルネック”の意味について紹介します。
製造業では、生産プロセスに複数の工程を持つことが一般的です。この複数ある工程のうち、スピードが遅いことによって全体の生産効率を低くしてしまっている(悪影響をもたらしている)工程のことを“ボトルネック”と呼んでいます。
IT業界では何か問題や障害が発生した場合、システム処理や通信速度を確認します。この際に、システム処理が低下したり通信速度が低下したりした場合の原因・要因になるものを“ボトルネック”と呼びます。
プロジェクトを進める場合には、担当者が稟議書を作成して、上司をはじめ関係部署に紙で回覧し、承認・決裁を得ます。承認者や決裁者の不在が続くと、紙の稟議書の承認・決裁に時間かかり、プロジェクトは前に進まなくなってしまうでしょう。
このような場合、紙の稟議書で承認・決裁を得るというプロセスが“ボトルネック”と呼ばれます。
ボトルネックという言葉と一緒に、“TOC”という言葉が使われることがあります。
TOCとは「Theory of Constraints」の略で、ボトルネック(制約条件)を継続的に解決していくことで、物事を効率良く進めることができるというという考え方です。
イスラエルの物理学者であるエリヤフ・ゴールドラット(Eliyahu Moshe Goldratt)氏が提唱した理論で、“TOC理論”や“制約理論”といった呼び方もあります。
TOCを用いてボトルネックを解消する流れとしては、次の5つのステップを踏むことが提唱されています。
①ボトルネックを見つける
②ボトルネックを徹底的に活用する
③他の工程をボトルネックに合わせる
④ボトルネックとなった工程を強化する
⑤新たなボトルネックに対応する(①に戻る)
ボトルネックがあると、仕事の場では次のような課題が生じます。
製造業を例にして、具体的に説明します。
製造工程のどこかで、生産スピードを低下させる部分があると、いくら他の工程で生産スピードが早くても、生産スピードの低いところに合わせるしかなくなります。そして、結果として、生産性も効率性も低下してしまうのです。
製造工程が社内だけではなく、社外にある場合(外注している場合)もあるでしょう。社内の製造工程は問題がなくても、外注部分の製造工程に問題が生じると、最終製品として完成させる段階で余計な時間が必要になったり、余計な運送費用が必要になったりします。
ボトルネックによって生じた生産性や効率性の低下、時間や経費の浪費によって、客先との追加交渉が必要になります。事情を話して理解を示してもらえるとよいのですが、客先にも事情がありますので、すんなりと解決することが難しいケースもあるでしょう。
「困ったな」「どうしたら解決できるかな」といった気持ちが増えて解消できないと、関係者の精神的負担は増加します。
ボトルネックにより生じる課題が解決できないと、業績の低下など、深刻な経営問題に発展しかねません。
ボトルネックを解消するためにも、ボトルネックになり得る原因を想定できることは重要なことです。
ボトルネックが生じる原因としては次の3点があげられます。
以下で詳しく説明します。
本来であれば十分な人員を投入して業務をすべきところに人員を割り当てることができず、業務の処理能力が低下することがあります。
また、人員は十分だったとしても、専門性のある人員を配置できないことにより、業務の処理能力が低下することもあります。
いずれも、いわゆる人手不足の状況であり、ボトルネックの原因です。
属人化した業務は、「その担当者に聞かないとわからない」状況です。担当者の不在により業務が停滞することもあります。また、その担当者が編み出した作業手順・方法で業務が進んでいるため、しっかり検証をすると実は効率性が低かったということもあるでしょう。
アナログ業務の一例として、文書の印刷、手渡しでの回覧、押印による承認・決裁があげられます。これらは関係者がオフィスにいることでスムーズに業務が進みます。
しかし、関係者がオフィスに不在の場合は、印刷をするためにオフィスに行かなければなりません。回覧者・承認者・決裁者がオフィスにいなければ、回覧も承認・決裁も滞ります。
昨今では在宅勤務などのテレワークによる働き方が増えてきていますが、アナログ業務が残っていては、在宅勤務のみで業務を完結させることは難しいでしょう。
ボトルネックを解消するための手順については、TOC理論を活用した以下の5つのステップを踏んでいくことをおすすめします。
筆者もボトルネック解消を支援する場合に、このステップを実際に活用しています。最もスタンダードに最短距離で、ボトルネック解消につながる良質なステップだと感じています。
各ステップを以下で詳しく説明します。
まずは、全体の工程の中でボトルネックとなっている工程を特定します。そのためには、工程の一連の流れを細かく分解・整理するところから始めます。
例えば、箱の中に1つの商品を入れるという作業の場合、以下のように工程を細かく分けて考えます。
・蓋が空いている状態の箱をA地点に横向きに置く
・コンベアに横向きに置く
・流す
・箱が流れてきてB地点まで来たらC商品を右手で掴む
・その5秒後にC商品に左手を添えて箱の右側D地点に置く
こうして細かくなった各工程を分析することで、停滞している工程を特定しやすくなります。
次に、ボトルネック部分が本来の能力を十分に発揮できているのか、何か不具合や障害が発生していて本来の能力を十分に発揮できていないのかを判断し、生産性が向上する方法を考えます。
判断をするときには、工程の一連の流れを細かく分解・整理した内容に対して、本来の能力が発揮できる場合のKPIを定めるとわかりやすいです。
例えば、蓋の空いている状態の箱をA地点に横向きに置くには、手に取ってから置くまで5秒が最適だということがわかっていると、この工程でボトルネックが発生する場合、手に取ってから置くまでの時間が3秒と短かくても8秒と長くても、次の工程の準備に狂いが生じる可能性があるため、ボトルネックになると言ってよいでしょう。
このステップで考えたい生産性向上策は、新設備導入・人員の増加・資金投入といったものではありません。あくまでも、今の設備・対応する人の数・人の能力を最大限に引き出す方法を考えるのです。
ボトルネックを活用できる目途がたったら、ボトルネック以外の工程を調整します。
たとえ、ボトルネック以外の工程で稼働率が上げられるとしても、このタイミングではあえてボトルネックに合わせて他の工程の稼働率を1割減にするといったような、稼働率を落としてでもボトルネックとなっている工程に他の工程を合わせて、すべての工程でバランスを取ることが重要です。
他の工程をボトルネックに合わせる際のさじ加減もあり、この工程は5つのステップの中で最も難しい部分です。
他の工程をボトルネックに合わせるところまでのステップを経て、ようやくボトルネックとなった工程を強化できます。
ボトルネックとなっている工程に他の工程を合わせたので、稼働工数や人数のところで余裕が生まれているため、この工数・人員をボトルネックとなった工程に投入して処理能力を高めるという策を講じるのもよいでしょう。また、新設備を導入して自動化をはじめとした業務効率化を図るということも検討できます。
あらかじめ設定していた処理数、作業時間などのKPIを定期的にチェックして、評価基準を満たすなど、1つのボトルネックを解消したら終わりということではありません。引き続き、全工程の中には解消すべきボトルネックが複数あるはずです。また、ボトルネックとなる工程は移動したり変化したりすることもあります。
1つのボトルネックが解消されたら最初に立ち戻り、他のボトルネックはないかチェックし、解消へのステップを踏むというサイクルを繰り返すことが重要です。
ここでは、筆者が実際に支援して、ボトルネックを解消した事例を2つ紹介します。
A会社では、商品デザインのすべてを社内で対応していました。しかし、2名ほどの人員に業務が集中してしまい、新商品のリリースや商品リニューアルが進まないという現状がありました。
業務内容を細分化したところ、新商品デザインとリニューアル商品デザインとでは、かかる工数と求められるレベルに差があり、ボトルネックになっていることが判明しました。そこで、まずは新商品デザインのみを社内対応とし、リニューアル商品デザインについては外部の複数会社とのコンペ形式にすることにしました。
ボトルネックを解消したことで、工数と人員の気持ちに余裕ができ、デザイン力向上につながったのです。
B会社では社内連絡にメールを使っていました。しかし、送信したメールを相手が読んでいるか判断がつかず、メールを送って、さらにメールの送信先に直接聞きにいくという二度手間が発生して、ボトルネックとなっていました。これでは、社内で何度か議論されていた在宅勤務の導入も難しい状況です。
そこで、社内連絡にメールではなくSlackというツールを使うようにアドバイスしました。そして、その投稿を見たら何かしら絵文字で反応するというルールをセットにしたのです。
そうすることで、誰が投稿を見ていて見ていないのかもわかりやすくなり、絵文字やコメントで反応がない場合のみ、直接聞きにいったり電話をしたりという対応をすればよくなりました。
仕事をしていくうえで、うまくいかないポイントを発見し、原因追及と改善策を講じていくことは、仕事が進みやすくなるというメリットがあります。そして、その先には企業の利益最大化につながります。
今回紹介した、ボトルネックを解消する手順とポイントは、課題の見える化の1つでもあります。一緒に働くメンバーと課題や改善方法を共有するためにもわかりやすいはずです。
少しでも仕事がしやすく利益が生まれやすくするためにも、まずは、ボトルネックがどこにあるのか探すところから始めてみてください。
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