目次

  1. 支払調書とは なぜ必要?
    1. 支払調書の種類 国税庁が示す不動産関連など4種類
    2. 税務署への提出期限と作成方法 法定調書合計表にも注意
  2. 支払調書が必要となる提出範囲
    1. ①報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書の提出範囲
    2. ②不動産の使用料等の支払調書
    3. ③不動産等の譲受けの対価の支払調書
    4. ④不動産等の売買又は貸付のあっせん手数料の支払調書
  3. 支払調書の各項目の記入方法
    1. 支払いを受ける者
    2. 区分及び細目
    3. 支払金額
    4. 源泉徴収税額
    5. 摘要
    6. 支払者
    7. 整理欄
  4. 支払調書の注意点
    1. 支払先が法人でも支払調書の提出対象
    2. 作成にあたっては各支払先の年間支払額の集計が必要
    3. 税務署に提出義務はあるが、支払先に交付義務はない
  5. 支払調書の作成は法定の義務 正しく作成しよう

 支払調書とは、報酬等を支払った者が支払った金額や内容を記載した書類のことです。支払った側がその所轄税務署へ提出します。同時期に、税務署へ給与と退職金についての源泉徴収票を提出しますが、これらの源泉徴収票と支払調書をあわせて法定調書と呼びます。

 「法定」とあるように、所得税法や租税特別措置法などの法律で定められているもので、報酬等を支払った者は、所轄税務署長へ提出する義務があります。

主な支払調書の種類と注意点
主な支払調書の種類と注意点(デザイン:吉田咲雪)

 支払調書には多くの種類がありますが、一般に共通し、国税庁が「給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」で示している支払調書は次の4種類です。

 ①報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
 ②不動産の使用料等の支払調書
 ③不動産等の譲受けの対価の支払調書
 ④不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書

 本記事で「支払調書」という場合は、この4つの支払調書を指すものとします。

 ①は、典型的には税理士といった士業に報酬を支払っている、また②は、不動産を借りていれば作成するため、多くの会社で作成しているでしょう。

 ③は、譲受けの対価とありますが、これは不動産を購入した場合です。会社としては購入した不動産会社などに支払いを行っているため、支払調書を作成します。そして、④は、あっせん手数料(つまり仲介手数料)を支払った場合に作成します。

 支払いを受けた者が個人であれば、①は事業所得(または雑所得)、②は不動産所得、③は譲渡所得、④は事業所得(または雑所得)としてそれぞれ確定申告しているはずです。そして、税務署は、支払った側に支払調書を提出させることで所得の捕捉をし、適正・公平な課税を実現しようとしています。

 支払調書は、その年分を翌年1月31日までに提出します。令和4年分であれば、令和5年1月31日が提出期限です。

 また、支払調書を提出する際には、「給与所得の源泉徴収等の法定調書合計表」をあわせて提出します。これは、上記4つの支払調書の他に、給与所得及び退職所得の源泉徴収票を合計した表です。

 支払調書の作成方法としては、書面(紙)の他、e-Tax、光ディスク等、クラウド等(以下、これら3種類をe-Tax等と呼びます)があります。書面で提出する場合の書式は、国税庁のHPにPDF形式で用意されており、それを印刷して手書きする、またはPDFへ入力できるようになっています。

 なお、支払調書の種類ごとに、前々年の提出すべきであった当該支払調書の枚数が100枚以上である支払調書については、e-Tax等による提出が義務付けられています。多店舗展開をしていて、100人以上の地主へ地代を支払っているといった場合には、支払調書(この場合、不動産の使用料などの支払調書)を書面で提出することはできず、e-Tax等で提出することとなります。

 報酬等を支払った場合、すべて支払調書として提出する必要はなく、一定額を超えるものが支払調書の提出範囲となっています。

 例えば、たまたま役員改選の時期となったため、その登記の報酬としてスポット的に司法書士に報酬を支払ったという場合でも、その司法書士への報酬が5万円を超えていなければ、支払調書の提出の必要はありません。

 以下で、支払調書が必要となる範囲について詳しく解説します。

区分 提出範囲
(1) 外交員、集金人、電力量計の検針人及びプロボクサーの報酬、料金 同一人に対する支払金額の合計が50万円を超えるもの
(2) バー、キャバレーなどのホステス、バンケットホステス、コンパニオンなどの報酬、料金
(3) 広告宣伝のための賞金
(4) 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬 同一人に対する支払金額の合計が50万円を超えるもの
(5) 馬主が受ける競馬の賞金 1回の支払賞金額が75万円を超える支払を受けた方に係るその年間のすべての支払金額
(6) プロ野球の選手などが受ける報酬及び契約金 同一人に対する支払金額の合計が5万円を超えるもの
(7) (1)から(6)以外の報酬、料金等

 (1)~(7)まであげていますが、一般の会社で対象となるのは(7)の報酬、料金等になるはずです。

 同一の人物に対する支払金額の合計が、15万円を超えるものが対象です。

 例えば、月1万円の地代を支払っているという場合は、年間で12万円であり、15万円を超えていないため、支払調書を提出する必要はありません。

 同一の人物に対する支払金額の合計が、100万円を超えるものが対象です。

 同一の人物に対する支払金額の合計が、15万円を超えるものが対象です。

 なお、上記の金額の判定にあたっては、原則的に消費税等を含めた税込額で判定しますが、消費税等の金額が明確に区分されている場合には、その金額を含めないで判定しても差し支えありません。

 ここでは、上記の①報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書を例に記入方法を示します。

支払調書サンプル画像

 出典:[手書用] 令和 年分 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書(PDF/196KB)

 会社からすると、報酬を支払った先です。報酬の支払先が税理士であれば、その税理士です。支払先が個人であれば住所及び氏名と個人番号(マイナンバー)、法人であれば所在地及び名称と法人番号を記載します。法人番号は一般に公表されていますが、個人番号(マイナンバー)についても記載することとなっているため、個人番号を入手する必要があります。

 区分には報酬、料金等の名称を記載します。「司法書士報酬」「講演料」といったものです。細目には以下のように具体的な内容を記載します。

区分:司法書士報酬 細目:不動産登記報酬 
区分:講演料    細目:〇月〇日

 その年(令和4年であれば令和4年)中に支払いが確定したものを記載します。実際の支払いが翌年であっても、支払いが確定した金額を記載します。

 このとき、その年に未払いであった額については、上段に内書きします。確定した金額が10万円であり、そのうち2万円が未払いであれば、支払金額「100,000円」、内書きで「20,000円」を記載します。

 司法書士の報酬の場合、報酬の金額から1回の支払いにつき1万円を控除した額を基に源泉徴収することとなりますが、ここでの支払金額は1万円を控除する前の金額です。

 また、原則として、消費税等の金額を含めて記載します。消費税等の金額が明確に区分されている場合には、その金額を含めないで記載しても差し支えありませんが、その場合には、「(摘要)」欄にその消費税等の金額を記載することとなります。

 その年に源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の合計額を記載します。この場合、支払調書の作成日現在で未払いのものがあるため、源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税を徴収していないときは、その未徴収税額を内書きします。

 先述した、支払金額として税抜金額を記載した場合に消費税等の金額を記載することのほか、特記事項がある場合に記載します。

 報酬、料金等を支払った方の住所(居所)又は所在地、氏名又は名称、電話番号及びマイナンバー又は法人番号を記載します。つまり会社の場合は、所在地、名称、法人番号です。

 特に記載は不要です。

 最後に、支払調書を作成する際の注意点を紹介します。

 支払調書は、法人に対して支払った報酬についてもその対象とされています。税理士法人や弁護士法人といった士業の法人に対して支払った報酬は、法人相手なので源泉徴収の対象とはなりませんが、支払調書の提出対象となります。源泉徴収対象外だからと支払調書を作成しなくてよいかと判断してしまいがちですが、そうではないので気をつけてください。

 支払調書は、1年分の支払額が対象です。したがって、支払調書を作成するために、各支払先の年間支払額を集計する必要があります。税理士の顧問報酬といった継続的に発生しているものはもちろん、不動産の譲受けといった単発的に発生したものについても、支払調書を提出しなければなりません。そのため、取引があった都度集計しておくことをおすすめします。

 多くの会社で、上記の支払調書を支払先(とりわけ不動産の貸主・地主)に交付しているでしょう。特に法令でそのようにすることが定められているわけではなく、あくまで慣習的に行われているものです。法律上、支払調書を交付しなければならない義務はありません。したがって、支払調書を支払先に交付するのは法的には全く任意です。

 そして、支払先側で、確定申告にて支払調書を添付する必要はありません。

 それでも支払先に交付する場合は、個人番号は記載してはならないこととされています。税務署に提出するものには個人番号は記載することとされているため、単にそれをコピーして交付するということはできません。

 支払調書を作成し、所轄税務署に提出するのは、法律で定められた義務となっています。一方で、本記事では紹介しきれない細かい要件が多く設けられています。自社で作成する場合は、国税庁が作成している「給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」をよく確認して、正しく作成するようにしてください。