フジイ金型社長が意識する「とにかく行動」 失敗を怒らない風土づくり
フジイ金型の藤井寛達社長は自分自身も変えていくために「とにかく行動する」ことを心がけています。会社もトライできる雰囲気をつくろうと失敗を怒らないように心がけているといいます。グロービス経営大学院とツギノジダイが藤井社長を招いて開催した事業承継に関するオンラインセミナーの後編では、当日の質疑応答や、藤井社長からのメッセージを紹介します。
フジイ金型の藤井寛達社長は自分自身も変えていくために「とにかく行動する」ことを心がけています。会社もトライできる雰囲気をつくろうと失敗を怒らないように心がけているといいます。グロービス経営大学院とツギノジダイが藤井社長を招いて開催した事業承継に関するオンラインセミナーの後編では、当日の質疑応答や、藤井社長からのメッセージを紹介します。
――社長になることへのプレッシャーをどう乗り越えましたか。
入社までは楽観的だったものの、入ったらいきなり取締役で経営全般を任されましたが何もできず、プレッシャーを感じました。グロービスに入学して、自分と同じような立場の人と話すことで、そのプレッシャーを正面から受け止めやすくなりました。
――38歳で社長に就任されています。世代交代した理由は何かありますか。
完全に父の決定でした。2012年の8月に決算が終わり「来期からはお前に変えるぞ」と急に言われました。元気なうちに並走して、いろいろ教えていこうと思ったのではないでしょうか。不安はありましたが、チャンスでもあったと思っています。
――これまで最も落ち込んだことは?
採用を任されていたが、採用しても1週間くらいでバンバンやめていく。「なんて魅力のない会社なんだ」と思ってしまいました。
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ただ、結局中小企業の雰囲気は社長の雰囲気。自分がそういうふうに見せないと人は寄ってこないのでまず自分が変わるようにしました。
――先代との対立や価値観の相違はありましたか。
たくさんありました。グロービスに通って経営知識を得て、頭でっかちになってその知識を使いたくなってしまったのですが、中小企業ではなかなかうまくいかないことも多かったのです。父に反対されることもよくありました。
ただ、結果がすべてで、結果を出せばすべてが正義になると思います。利益をちゃんと出して、キャッシュリッチになって、社員にちゃんと給与を出せて、賞与が増える。そういうことをしないと社員はついてこないと思います。
――利益がV字回復するまでの時間軸はどの程度許容しますか?
コロナで1年どんと下がるのは仕方がない。でも少しでもいいから、去年よりも良くしようと意識しています。グロービスに通って事例も見ると、オーナー企業の社長は長い時間軸で物事を考えられるメリットもあります。しかし数字的な目標は1年単位、長くとも2年先までを明示し、それ以上先の長期では数字的な目標は示しません。
――コロナ対策はどのように決められましたか。
ナンバー2の専務とも相談しながら、できるだけ自分が主体的に案を出しました。オーナー企業の社長で株もほとんど持っているので経営上は無敵です(笑)。しかし反対している人に対しては、さらに追従する人もいて、進めにくい面はありました。
――反対者がいることに対するリスクは。
退職されてしまうというリスクはありますね。もしその人が辞めてしまってもよいように、リーダーは育てるようにしています。実際に10年間で辞めていった人もいますが、次の世代に任せれば地位が人を育てます。
――藤井さんの中で絶対に守りたい根幹はありますか?
まずは会社の永続です。そのためには会社の成長が必須条件です。あとは「こういう方向のほうが、もっといい会社になる」という思いです。みんなが幸せになれば自分も幸せになるので、それが自分のよりどころです。
――「いい会社」とはどんな会社でしょうか。
利益を出し続けるのはまずその1つですね。永続性はもちろんですが、過度に「選択と集中」をしてそぎ落としすぎるのもよくないので今はまだ抽象的に、ふんわりとしています。「いい会社」という意味をあえて社員にも考えてもらえるようにしていきたいです。
――社員のリーダーシップを開発するために意識していることはありますか。
自ら目標設定をして、半年後に5段階設定で自己評価をしてもらう人事システムを運用しています。そのために部下を半年間どのように育成するかについても考えてもらいます。外部のコンサルタントに頼んでいるほか、私が8ヵ年計画を作り、そのうち今年はこれをやります、といったことを宣言します。なので、まず私自身の自己開発が必要でしたね。
――リーマンショック前の目標に数字が戻ったあと、目標設定で定性目標も設けたことには理由がありますか?
定量目標だけならば分かりやすくて楽ですが、数字が目的化してしまう会社は面白くないですよね。そうでなければ、生き残れない面もあるのは事実です。
ただ、どうも社員が楽しくなさそうで、疲弊しているように思えたので、前向きに働いてほしいと感じました。製造業は毎日コツコツと同じことをするので、長く働いてもらうためには物心両面で豊かになってほしい、と考え定性目標も設けました。
――スライドにあった「自分自身が変わる」というのは?
コロナ禍になって3年ほど経ちますが、業績は横ばいか緩やかに低下の状態です。これは私自身がコロナ前の成功体験に縛られていることも要因だと思います。自分への自戒も込めて「自分自身が変わる」ですね。そのためにもたくさんいろいろな人に会って、刺激を受けて、行動していきたいですね。
――自分を変える時に何を意識していますか?
とにかく行動することと、自分で自分を変えるのは難しいですが、人に変えてもらえることは時には容易なときがあります。あえて違う環境に入っていくことは大切です。他社さんや違う業界の方にいろいろお話を聞いてもらうと、ヒントを見つけられることがあります。
変わろうとすると新しいことをするので、失敗が増えるかもしれません。それを恐れるからトライしなくなる。会社としては、失敗を怒らないようにしました。私が入社した時のフジイ金型は、親父(当時の社長)がどんどん怒るので、中間管理職もそれを真似する。そして若い社員たちが委縮してしまう。
創業期はそれでもよいのですが、その時期は過ぎています。私はあえて感情的に怒らないようにしていますし、私が採用した世代も真似するようになってきています。
――経営者として技術部門とどのようにコミュニケーションをとっていますか。
私が目指したい会社の姿と整合が取れているかということかと思います。社長がすべてを把握できるということはなかなかありえない。ただ、やっていることの理解はしています。
――事業承継成功の秘訣を教えてください。
事業承継は時間をかけてじっくり行うことです。それから、継がせる側の立場で考えることが大切です。いきなり、相続が、節税が、というところから頭でっかちに話を始めないほうがよいでしょうね。
私はMBAを良いものだと思っています。これに沿ってやると大負けすることが少ないので、息の長い経営ができると思っています。思っていてもやらなければ意味がないので、どんどん行動してみてください。
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