事業承継後の先代経営者の勤務どうする? 69%の企業が会長・顧問・相談役
事業承継後の先代経営者の勤務形態として「自社で、会長・顧問・相談役等として勤務」と回答した企業の割合が69.1%に上ることが、2023年版「中小企業白書」のまとめでわかりました。事業承継後も先代は「経営の助言者・相談相手」といった役割を果たしていますが、先代の影響力が残りすぎると、従業員が後継者を経営者として受け入れにくい状況になる可能性も考えられるとしています。
事業承継後の先代経営者の勤務形態として「自社で、会長・顧問・相談役等として勤務」と回答した企業の割合が69.1%に上ることが、2023年版「中小企業白書」のまとめでわかりました。事業承継後も先代は「経営の助言者・相談相手」といった役割を果たしていますが、先代の影響力が残りすぎると、従業員が後継者を経営者として受け入れにくい状況になる可能性も考えられるとしています。
中小企業庁の公式サイトに公開されている「2023年版中小企業白書」によると、帝国データバンクが2022年11~12月に、従業員5人以上で事業承継後5~9年目の中小企業1万5000社を対象にアンケート調査を実施しました。3551件の回答が得られ、回収率は23.7%でした。
質問内容の一つが、先代経営者の引退後の勤務形態でした(回答数2979件)。それによると、「自社で、会長・顧問・相談役等として勤務」と回答した企業の割合が最も多く、69.1%に上りました。
調査では、「主に後継者が意思決定を行っている」か「主に先代経営者が意思決定を行っている」かで、経営への役割について様々比較しています。
調査結果(複数回答)によると、「主に後継者が意思決定を行っている」企業の場合、先代経営者は事業承継後も、主に「経営の助言者・相談相手」などの役割を担っているという回答が39.6%に上りました。
一方で、「主に先代経営者が意思決定を行っている企業」も42.1%が「経営の助言者・相談相手」などの役割を担っている」と回答していました。それだけでなく「取引金融機関との関係維持」(43.5%)や「既存取引先との関係維持」(27.3%)など、社外関係者との関係を保つ役割を先代経営者が担っていました。
また、「現経営者の経営に対する規律付け」(25.8%)といった、ガバナンスの役割も果たしていました。
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さらに調査では、誰が意思決定しているかで、後継者に対する従業員からの信認状況がどう変わるかについても調べました。
調査結果によると、「主に後継者が意思決定を行っている」企業は、後継者が「従業員から信認を得ている」と回答した割合は86.2%だったのに対し、「主に先代経営者が意思決定を行っている」企業は69.2%にとどまりました。
中小企業白書は「事業承継後も先代経営者が経営の意思決定に関与し過ぎると、先代経営者の影響力が残り、従業員が後継者を経営者として受け入れにくい状況になる可能性も考えられる。後継者が経営者として従業員に認められるために、先代経営者は後継者に対して経営を任せる意識を持つことが重要ではないか」とコメントしています。
調査によると、「主に後継者が意思決定を行っている」企業は「主に先代経営者が意思決定を行っている」企業と比べ、「自社の経営資源・財務状況の理解に努めた」、「従業員と自社の課題等について話し合う機会を設けた」、「自社の経営に携わり、経営に関する哲学や手法を学んだ」といった回答割合が高くなっていました。
一方で、「現場で働き、自社の技術やノウハウ、商習慣等を学んだ」、「既存取引先との顔合わせを行った」などの割合は低くなっていました。
そこで、中小企業白書は「先代経営者から経営を任せられるために、後継者は現場での学習や既存取引先との顔合わせだけでなく、事業承継前から自社の経営資源・財務状況の理解や従業員との対話、自社の経営に携わることを通じて、経営者としての意欲や能力を示す必要があるのではないか」と示唆しています。
こうしたことから、中小企業白書は、後継者が先代経営者から経営を任せられるよう、事業承継前から自社の経営資源・財務状況の理解や従業員との対話、自社の経営に携わることを通じて、経営者としての意欲や能力を示すことを求めています。
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